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2013年12月 7日

映画「そして父になる」

 是枝監督の作品は結構好きで、タイミングが合えば見に行くのだけれど、この作品は是枝監督のテイストとテーマが上手く合致した、特にいい作品だったと思う。

 ストーリーは簡単に説明すると......
 福山雅治演じる父親(仕事ができ、一流企業でバリバリ働く"成功者"。高層マンションの上階に住み、レクサスに乗っているという典型的な男性)の6歳になる息子が、実は病院で取り違えられたまったくの"他人"であったと、ある日唐突に病院から知らされる。
 実の息子の方を育てていた家族と会うと、向こうは、リリー・フランキー演じる父親と母親、3人の子供という賑やかな一家だった。父親は小さな電気屋を営んでいて、仕事をしながらも子供とも遊び、5人でわいわい過ごしているような家庭。
 それぞれの父親・母親は、お互いの本当の子供を家に交換で泊めさせてみたり、一緒に遊ばせたりしたあと、血のつながった"本当の子供"をそれぞれ自分の子供として今後は育てていくという決意をする。でも......。
 という感じの内容。

 現実にも先日、60歳の男性が実は自分は病院で取り違えられていたと判り、裁判を起こしたというニュースがあったけれど、本当に難しい話......。
 映画を見ているときには、個人的には「血」よりも6年間という「時間」のほうがずっと重いはずだと思ったけれど、実際には、「血」の影響というのは、思う以上に強いのだろうか(実際裁判になった例では、訴えを起こした男性の血のつながった本当の弟3人(別のところで育てられた面識のない3人)が、一緒に育ってきた兄に対して違和感を抱き続け、DNA鑑定をして血のつながりがないことが発覚した、というから)。

 ただこの映画が良かったのは、取り違い事件が実は物語の中心ではないところだと思う。
 是枝さんが書きたかったのは、タイトル通り、福山雅治演じる父親が、その事件をきっかけに本当に「父になる」ところ。
 一見いい加減に見えるリリーさん演じる向こうの家の父親が、福山雅治演じる父親に、「結局は(一緒に過ごした)時間だよ」「父親業というのも、他の人には代れない重要な仕事だと思うけどね」など、さらりと伝える言葉が、良かった。
 ラストも心にぐっと来て、感動できる。
 そろそろ公開が終わる頃かもしれないけれど......、機会があればぜひ!

2009年6月 8日

「重力ピエロ」

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伊坂さんの「重力ピエロ」が映画になり公開されているので、見に行ってきた。
映画を見るのは久しぶり。

映画化されて良い小説というのは、長編ではなくて短編だ、というのが私の持論。
今までに見てよかったのは「幻の光」(原作:宮本輝)と「ジョセと虎と魚たち」(原作:田辺聖子)くらいなので......。
短編小説の場合は、それだけを映像化しても足りないから、あとは監督の想像力で「膨らませる」作業になる。でも、長編の場合は、ほとんど「削る」作業だから。

でも、この映画は見て損はしなかった。
確かに「長編小説」を映画化したため、そぎ落とされた部分もあるけれど、その取捨選択が非常にいい。
さらに、小説にはなかった映像だからこそ効いてくるシーンの挿入もしっかりされていたし、ちょっとした間のとりかた、映像の空気感で、伊坂さんの描き出したかったであろう世界が、きちんと表現されている気がした。

小説では謎解きのほうに重きが置かれていた気がするが、映画では、謎解きの部分は最低限に抑え、あくまで「兄と弟と、家族の話」に焦点を絞っていた。
だから、繊細な映像とテーマが、すっと心に入ってきた感じ。

「兄」と「弟」を演じる役者も良かった。

ただ「映像にするのが不可能だと言われていた作品を映画化」みたいなキャッチフレーズをどこかで見た気がするけれど、伊坂さんの作品はそんな「映像化」が難しいように、私には思えないな。特に「重力ピエロ」は、今までなんて映画になっていなかったの、ってくらいに思う。「オーデュボンの祈り」を映画化する人がいたら、驚くけどね。

それにしても、この映画でも効果的に使われていたが、「はるが二階から落ちてきた」という冒頭の文章は、十年後には、「トンネルをぬけるとそこは雪国だった」くらい有名になって、教科書に載らないだろうか、などと思ったりする。

監督もすごいけれど、やっぱり伊坂さんはすごい!

「ラッシュライフ」もそろそろ公開されるけれど、どんなふうになっているのかな。

2008年6月29日

「ザ・マジックアワー」


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 土曜日は、三谷幸喜さんの最新作「ザ・マジックアワー」を観てきました。
 期待を裏切らない傑作でした。
 映画館で何度も声を上げて笑いました。
 でも、ああいうおもしろい作品を作っているとき、三谷さんはいつもすご く深刻な表情だとか。
 それも分かる気がします。
 本当にいい作品って、精密機械のようなものだと思います。
 ちょっとでも何かが狂うと、ダメになってしまう。
 行き当たりばったりに見えるからこそ面白い笑いの世界の向こうに、緻密 な職人の世界を感じるとき、「いい作品を観たな」としみじみ思ったりします。

2007年2月 3日

「幸せのちから」

映画、見てきました。
去年、11月くらいからかな、試写会の吊り広告などを見ていて、気になっていたので、私にしては封切り後、早めに行きました!

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なかなか良かった。
ウィルスミスはもちろん、その本当の息子だという子役の子も上手い。
ウィルスミスは何歳なのか知らないけれど、結構たくさん走るシーンがあり、それがとても颯爽としていてかっこよかった。


ただ、典型的なアメリカンサクセスストーリーという気はした。
努力して、底辺からはい上がっていく姿は良かったけれど、結局ああいう一握りの人にしか「再チャレンジ」の可能性はないのかな、という気もしてしまった。
主人公は貧しさから抜け出し成功するけれど、主人公が貧しかった時代に周りにいた人たちは、その映画のラストでもきっとまだ貧しいはずだということに心が行ってしまうと、純粋に「良かったね! ハッピーエンドだ!」とは言えない気がする。
ま、そんなことを言ったら、どんな映画・ドラマ・本にも文句をつけたくなっちゃうだろうけれど。



ただ最近、なんか「成功」ということについて色々考える。
「成功者」と言っていいような人は多くても、そのうち、「こんな風になりたい!」とか「こんな風に生きたい!」と思わせてくれる人は、案外少ない。
それって、どうしてだろうな、と考えたりして。


私は基本的に野心のある人が嫌いではないけれど、でも、「勝ちたい」「成功したい」という想いが強くなりすぎると、人を蹴落としたり、利用したり、そういう方向に行ってしまうこともあるのかもしれない。
最近少し、今まで見えていなかった(見てこなかった?)、世の中の欲と利益の仕組みとか、なにか陰の部分みたいなものが意識される。
それで少し、自分は誰を信じていいのか、不安になったりする。
私はあくまで、「成功」でも「勝ち」でもなく、「幸せ」を追究したい。
奪い合う世界ではなく、分かち合う世界に生きたい。


「幸せの力」の原題は「The pursuit of the happiness(幸せの追求)」らしい。


幸せの形は誰に押しつけられるものでもない、自分の心のなかにあるもの。
それは、収入の量や、知名度では決してはかれない。
何によっても、外部から判断され得ないもの。

 

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