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2013年4月 7日

高橋 歩「ISLAND STORY」

ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)
高橋 歩(たかはし あゆむ)

A-Works 2008-11-01
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 先週、ウインドサーフィンの人たちと千葉のバーで飲んでいたのだけれど、店のホームページを見たら、そのバーは、「高橋歩ら4人が学生時代に立ち上げたもの」という説明があった。

 高橋歩ってどっかで聞いたことあるような......と気になり、調べていたら、すごく変わった経歴の人!
 大学時代にバーを作っただけではなく、そのあと自伝を出版したいがために、自ら出版社も立ち上げた、とか。
 本を出したいから出版社を作るって、新しい発想!

 それ以外にも、沖縄に自給自足の村を作って、そこで色々なアクティビティーのできる宿泊施設を建てたり、バーでも出版社でも、宿でも、ある程度事業が軌道に乗ると、知り合いに売って手放し、家族と世界一周の旅に出かける......とか、通常の日本人の発想ではありえない人生を送っている人のよう。

 ただ、そういう相当変わった、エネルギッシュな人というのは、カリスマになる一方で、批判もされるというのが、世の常で、ネットで調べると、マイナスの情報も色々出てくる。
 たとえば沖縄の自給自足の村は、最初は池間島というところに作ろうとしたけれど、島民の反対で、引かざるを得なかったとか、ネットワークビジネス的なお金の稼ぎ方をしているらしい......とか。

 この本は、高橋さんが一回目の世界一周旅行から戻り、沖縄に住み始めたあと、まず読谷村でバーを開き、そのあと池間島のプロジェクトに失敗し、でも今帰仁村にビレッジを建設し、軌道に乗せるまでの自伝、というか、エッセイ(5年くらい前の本)。
 写真が多く、文字は少ないので、フォトブック的な印象。
 沖縄のきれいな海や、仲間とのわいわいがやがやな感じが伝わってくる写真が多い。
 そして文章は、非常に軽い。でも写真や、内容と合っていて、不快ではない軽さ。軽いというより、テンポがいい、と言った方がいいかな。

 でも、文字が少ないし、重みがないので、さらりと読めるのだけれど、読むと素直に元気になるというか、「あぁ、そんなふうに考えて、生きるっていう選択肢もあるんだな」と思えて、楽しい本だった。

 本の中には、池間島のプロジェクトの失敗も素直に書かれているのだけれど、それもちゃんと受け止めつつ、でも深刻になりすぎず、次に進む力にしている。
 高橋さんに会ったことはないから、本当にはどんな人なのかは分からないけれど、本を読む限りでは、きっと、まわりには色々、高橋さんを利用してお金を稼ごうとする人がいたり、色々な利害関係があるんだろうけれど、高橋さん自身は、とてもピュアで、無邪気な人なのかもしれないな、という印象があった。
 単純に、発想力が豊かで、行動力のある人の周りには、色々な人が集まってくるよね、と。

「生きるって、マジ、素晴らしい!」
 そう言えない日だってあると思うけれど、それでも、毎日、生きることは素晴らしいんだと言い聞かせながら、まっすぐ生きている感じが伝わってくる。

 いい土地や物件があったとき、断られても、「まぁ、でも、最初に断られるのは、基本でしょ!」と考え、そこから何度も何度もオーナーを訪問して、8回とか9回出向いて、関係性を築いて、「君たちになら貸そう」と言わせる。
 8回、9回も訪ねて、親しくなったら、それは上手くいく可能性も高いだろう。
 そう頭では分かっていても、普通の人は、1回断られたら止めてしまう。根性のある人でも、3回行ってダメならやめてしまうだろう。
 でも、そうじゃないんだ。やりたいことをやっている人っていうのは、運がいい人なんじゃなくて、こういうところで、さらりと努力しちゃえる人なんだな。

 高橋歩信者になって、「好きなことでメシを食う」なんてセミナーに行く気はないけれど......、この間の海士町の「若者 よそ者 ばか者」を例に出すまでもなく、こういう「ばか者」(常識を逸した大胆な行動をとれる人の意味)を受け入れるキャパを作ることが、地域の活性化にも必要なのかもしれないな、なんてことも考えさせられ、色々刺激になった。

 サイトに載っていたインタビューを読むだけで、高橋歩という人のエッセンスがとても伝わってくるので、気が向いたら、読んでみると、ちょっと人生の視野が広がるかも!
 http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2005/04/post-ba40.html

2013年4月 3日

「僕たちは島で、未来を見ることにした」

僕たちは島で、未来を見ることにした僕たちは島で、未来を見ることにした
株式会社 巡の環 (阿部裕志・代表取締役/信岡良亮・取締役)

木楽舎 2012-12-15
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 日本の「島」が結構好きなのだけれど、行ったことのない島の中で最近、一番気になっているのが、島根県にある「海士町」。

 人口約約2400人のうち、300人ほどが「Iターン者」という、移住者、特に移住する若者が多い島ということで、最近、メディアにも取り上げられる機会が増えている。

 この本は、その海士町に移住し、新しく「巡の環」という会社を立ち上げた二人の書いたノンフィクションの本。
 町長をはじめ、"社外"の人のインタビューもところどころに散りばめられ、著者の二人がどんな思いで東京から海士町に移住を決意したのか、そしてどう島に溶け込んでいったのか、という"移住者側の視点"と、海士町側はどう移住者を受け入れ、見守ってきているのか、という"受け入れ側からの視点"の両方を理解できる本だった。

 海士町は、もともとは少子高齢化も進み、財政破たん目前だったけれど、町長が中心になって自主的な給与カットを行い、その余剰で産業を興こし、岩牡蠣で有名になったところから、島自体が注目されるようになったらしい。
 その後は、積極的に移住者を受け入れ、町全体で、新しいアイディアなどを受け入れるような土壌ができている、とのこと。地域活性に必要なのは、「よそ者・若者・ばか者」だという言葉が印象に残る。

 海士町はIターンやUターンの人を歓迎しているけれど、助成金などを出しているわけではないという。
「本気で向かってくる人には本気で応えようと思っているし、支援もしていきたい。でも、補助金がつくからやらないか、ということは絶対こっちからは言わない。絶対成功しないからだ。
 プロジェクトなりイベントなり、何かやりたいと本気で考えている人と言うのは、最終的には熱意だけで成功に導いていく。金ではない。そう信じているからこそ、何かやりたいという人には情報提供だけは惜しまず、本気の気持ちで応えようと思っている」
 町長の言葉は、深い。

 また、「巡の環」の信岡さんの言葉も心に残った。
 信岡さんいわく、島では「物々交換から始まる」らしい。余ったイカを誰かにあげる、するといつか余った野菜をもらうかもしれない、そんな社会。「うまく交換しにくいものにのみ、お金が使われているというのが、島の感覚なのだ」と信岡さんは書いている。
 でもそういう物々交換の社会では、たとえば「余ったイカを誰にあげよう」というとき、誰にあげるかというと、普段お世話になっている人など、「自分が好意を持っている人」になる。
 だから、そういう社会で生き延びるためには、「島にいてほしい人になる必要がある」と。
 そしてこれは、仕事についても同じだ、と続く。
「これらのお仕事(WEB制作の仕事)も、都会の仕事の始まり方とは全然違いました。
 僕は当初、お客さんにニーズがあって、その解決策を提供して対価をもらうのが仕事だと思っていたのです。しかしこの島では"あいつらは本気で頑張っているから、その特性を活かせる仕事はないか"と、お金が回るための落としどころを村の人が探してくれている。気づけば僕たちのことを、多くの人たちが見守っていてくれていたのです」

 もちろん、見守ってもらえるようになるために、「巡の環」の人たちは、色々な努力をしてきたのだと思うし、そういう人との密な関係は、得意な人と、不得意な人に別れると思うけれど、そういう社会の存在は、興味深く思えた。

 高齢化・過疎化の進む地域にどう若者の力を入れていくか。「ここには何もないから、大人になったら都会に行きなさい」と言うのではなく、「都会で何か身に着けて、ここに戻ってきなさい」と言える場所にどうしたらしていかれるか。
 海士町の試みが、多くの地方地域に刺激を与えるようになっていくといいなと思う。

 海士町は、「五感塾」というものを通して、大企業に教育研修の場も提供しているらしい。企業研修の視察ということで、行ってみたいな~。

2013年3月12日

笹原留似子「おもかげ復元師」

おもかげ復元師 (一般書)おもかげ復元師 (一般書)
笹原留似子

ポプラ社 2012-08-07
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 知り合いがfacebookで紹介していた本が気になり、読んでみました。

 以前「おくりびと」という映画が話題になり、あれも非常に良かったけれど、この本は「おくりびと」をしている本人の手記(エッセイ集)で、ひとつひとつの話が、非常に心に迫ってくる、すごい本でした。ティッシュが手放せないくらい、どこを読んでも泣けてきます......。

「おくりびと」は、やはり作られた「作品」だったから(納棺夫日記という本物のおくりびとの手記をヒントに作られたらしいが、映画を作ったのは第三者的存在の人だったという意味で)、「死」とか「納棺」というものから、適度な距離を保ちつつ、どこかしら淡々と美しく進んでいくところがあったけれど、この本は、思い切り「当事者」の視点で描かれている。遺族の感情が直に伝わってきてしまうような、そういう距離の近さがある。

 それと「おくりびと」には死者を拭き清めて、着物を着せて、軽く化粧をするくらいの場面しか出てこなかった気がするけれど、この筆者・笹原さんがしているのは、もっと職人技みたいだった。亡くなって硬直した人の顔をマッサージしてほぐし、表情筋のつきかたから、生前の笑顔を想像し、その顔に近づけていく。顔の一部が事故などで陥没していたら綿を詰めて直したり、たとえ蛆虫が湧いていても、それを退治して、まるで眠っているかのような姿まで戻していく、と。

 この技術だけでもすごいけれど、もっとすごいのは笹原さんの愛情の深さ。人というものに対する愛が半端じゃないから、できる仕事なんだろうな、と思う。でもその一方で、こういう"死"が日常になってしまうような仕事をしていたら、逆に人間愛がはぐくまれていくのかもしれない、とも思う。
 笹原さんも「経験豊富な納棺師や、この仕事に関わっている人たちは、みんな優しいと私は思います」と書いている。でも、優しいから続けられる、のかもしれない。

 なぜ亡くなった人の顔をできるだけ生前の顔に戻そうとするのか......。それはただ葬儀のため、などという理由ではないらしい。
 多くの人は、身内の遺体が苦悶の表情を浮かべたり、ひどい顔色をしていたり、匂いを発していたりすると、それを自分の身内だとは認められないけれど、それを元に戻してあげることで、死を受け入れることができる、と笹原さんは書いている。そして事実を受け止めて、泣きたければ泣いたり、悲しみをきちんと表現することが大切なのだ、と。

 この本は、4ページくらいの原稿が60ほど集まって構成されている「掌編集」みたいなものなのだけれど、その1つ1つの話に登場するのが、遺体と共に、"遺族"。
 その遺族が様々な反応を示し、色々な行動をするのだけれど、それがまた、故人への愛を感じさせて、ぐっとくる。悲しいけれど、同時に心が温かくなる話もまた、詰まっている。
 遺体の復元をする笹原さんは本当にすごい愛の人だけれど、そうではない、ただ普通に生きている"遺族"たちも実は愛にあふれた人たちなんじゃないかと、この本を読んでいると感じられるのも、また、良かった。

 笹原さんは、もともと東北を拠点に活動されていた人のようで、東北の震災のときにいち早く被災地に駆けつけ、お金をもらわず無償で遺体の修復をしていたらしい。
 この本の後半半分近くも、3.11後の復元の話になっている。
 震災から2年。東北を忘れないためにも、多くの人に読んでもらいたい本。

2013年3月 8日

下川 裕治「「生きづらい日本人」を捨てる」

「生きづらい日本人」を捨てる (光文社新書)「生きづらい日本人」を捨てる (光文社新書)
下川 裕治

光文社 2012-12-14
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 朝日新聞に広告が載っていたんだったか、タイトルが気になって手に取ってみた。
 別に私は日本を出たいとは思わないけど......。

 この本は、旅行作家の筆者が、沖縄・カンボジア・タイ・中国・ラオス・ベトナムで出会った9人について書いたエッセイ集(紀行文?)。
 沖縄は日本じゃない? という突っ込みは入れたくなるが、9つの文章を読み終えると、確かに他の国で生きている8人の人生と、沖縄に渡った人の人生は、ちょっと似ているようにも映る。

 ただタイトルからは、積極的に日本を出て、海外で暮らすことを選んだ人たちの力強い生活をイメージしたけれど、実際の中身は結構違っていた。自らその国で暮らすことを選び取った人もいるけれど、日本にいられなくなった、日本に仕事がなかった、一度留学するために日本を出たらもう居場所が日本になくなっていた、というような消極的な理由の方が目立った。
 それはちょっと残念でもあったかな。

 でもテレビなどでは、海外に渡って成功を収めた人の話などが特集されたりするけれど、実際には海外に出たからって急に物事がうまく進み始めるなんてことは稀なわけで、そういう意味では、非常に等身大のストーリーだったかもしれない。
 ここで紹介される9人は、日本に居場所がなくなったという消極的な理由から始まっても、それぞれ、その地で暮らしていく覚悟は日々固め、その国の人々、暮らしに徐々に馴染んでいっているようにも見える。

 沖縄以外に出てくる5つの国はどこも日本と比べれば後進国なのだけれど、生活の質の差、仕事に対する姿勢の差、金銭的な裕福度の差とお金に対する意識の差、などが非常に明快に書かれていて、それは興味深かった。
 ベトナムでは、「日本人は金持ち」というイメージが強く、現地の人と結婚することになったら、相手の親族がやたらと借金の申し出をしてくるとか、逆にラオスではまだ貨幣経済というものが根付いていないため、お金を稼ぐために働くという意識が希薄で、人を雇っても平気でやめて実家に帰ってしまったり、お金を払うと言っても車に乗せてくれる人がいないとか......。国民の意識とか、国の発展というのは、順を追って起こっていくものなんだな。

 1章に出てくる沖縄に移住した人は、もともと大阪で大きなスナックとラウンジを経営していたけれど、バブルがはじけたあとに倒産させてしまった、という経歴の人。大阪では一日に多いときでは100万円を稼いでいたような店を経営していたけれど、沖縄では一日1万円売り上げがあればどうにか生きていかれるから、それで充分、というスタンスで店を開いている。「金がないってことが、こんなにも楽だったっていうこと......沖縄で味わいました。すごく体が軽いんですよ」......その人が言うと、深い。
 日本を離れ、他のアジアの国に住む人たちも、「(この国は)なんか楽」とよく言っていた。将来のことに目をつむって、キリギリスのように生きるのもどうかと思うけれど、将来を心配しすぎて、そこに縛られすぎてしまうくらいなら、その日その日を一生懸命、でも軽やかに生きられれば、その方がいいのかもしれない。

 自分の人生とは交わりそうもない人たちの人生をこういうノンフィクションの作品で読むのは楽しい。複数の価値観の物差しを持っていたい。

2013年2月 1日

箭内博行「約束の島、約束の祭」

約束の島、約束の祭約束の島、約束の祭
箭内博行

情報センター出版局 2008-05-23
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 今、沖縄の島を舞台にした作品を書いているので、もともとはその参考文献として手に取った本。
 普段、そういう小説の参考に読んだ本は、敢えて人に教えたりしないのだけれど、この本は良かったので、ご紹介!

 作者はフリーのカメラマン。もともと写真は好きだったけれど、写真を仕事にすることは考えず就職するが、理不尽なリストラにあい、退職。
 そのあとたまたま訪れた沖縄の島(竹富島)で、「種子取祭」という素敵な祭りがあるから、その時期に是非また来るといいと「おばあ」に言われ、その約束を守って、祭りを撮りに行く。
 そこから沖縄の祭りにはまり、様々な祭りを9年に渡って追いかけ、紹介したのがこの本。

 本業はカメラマンなので、文章に変な作為がないのがいいのか、この作者・箭内さんの人柄が非常に素直に伝わってきて、会ったことはないのに、ファンになってしまったというか、応援したくなってしまった(そのため、はじめは図書館で借りて読んでいたのだけれど、途中で購入!)。
 沖縄の島の人たちの懐に、すっと入り込み、祭りに対する想いを聞いていく、その姿勢と、箭内さんを通して見えてくる、観光で行くだけでは決して見えない沖縄という島の文化と人の想い。
 私にとって沖縄というのは、ダイビングをしに行く海がきれいな場所でしかなかったけれど、沖縄にはこんなにピュアな「信仰心」が残っていて、それがこんなにさまざまな「祭り」という形になって表れているのだということを知ることができたのは、非常に良かった。
 私は、沖縄には8月末によく行っていたので、与那国島ではちょうど祭りの日にあたったことがある。その日は民宿の人もばたばたしていて、「夕食は千円渡すから、適当に食べてきて」というような扱いを受けたけれど(汗)、民宿のなかに祭りの人たちが入ってきて歌ったり踊ったりしているのを、まるでその家の住人かのように見せてもらったのは、いい体験だった。ただ、8月末から9月頭が「旧盆」で、沖縄の人にとってのお盆だったのだということは、この本を読んで初めて知った。
 色々な本を読むと、自分の知っている世界の狭さを痛感する。世界はもっとずっと広い。そしてもっとずっと深い。

 本の中では10種類の沖縄の離島(八重山諸島)の祭りが紹介されているので、「こんな祭りがあるんだ」と興味深く読むこともできるし、一人の青年の旅エッセイとしても楽しく読める。
 沖縄好きな人、祭り好きな人、エッセイやノンフィクション好きの人、人とのあったかい交流に触れたい気分の人......などにお勧めです☆

 でも、いいノンフィクションの作品に出会うと、「フィクション」の作り手としては、身が引き締まる思いがする。どうやったら、フィクションは、ノンフィクションに敵うのだろう、と。
 これは、ひとりごと(笑)

2005年9月19日

「無限の荒野で君と出会う日」橋口亮輔


無限の荒野で君と出会う日無限の荒野で君と出会う日

情報センター出版局 2004-09-16
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おすすめ平均

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「二十歳の微熱」「渚のシンドバッド」「ハッシュ!」などの映画監督橋口亮輔さんのエッセイ集。
 私は「二十歳の微熱」から結構橋口さんの映画は好きで、そうHPに書いていたら、以前「トップランナー」という番組に橋口さんが出演するとき、観覧に来ませんかとテレビ局の方からメールをもらったことがある。
 だから生で観たことのある映画監督の一人。
 橋口さんはゲイであることを公表し、作品を作っているのだけれど、正直結構格好いい人で、「あぁ~、もったいない」(なにが?(笑))と思いながら、舞台上の橋口さんを観ていた記憶がある。

 ただこの本を読んでみて、今まで抱いていた印象ががらがらがらっと壊れた。なるほど、こういう人なのか......と。「トップランナー」で見たときは穏やかで紳士的だったけれど、文章を読んでみると、なかなか毒がある。両親の話なども、結構激しい。
 そういうのを読みながら、「やはり成功する人は、違うのねぇ」と思った部分もあるけれど、紳士的な姿しか知らなかったときより、表現者の「熱さ」みたいなものを感じ、より好感を抱くようになったというのもある。
 色々なところに発表したものをまとめたものみたいで、同じような話が重複していたり、時々、やはり文章のプロではないのだよなと感じてしまう構成のところもあったけれど、でも読んで損はない本だと思う。特に橋口さんの作品を見たことがある人には、おすすめ!

 生い立ちや学生時代、パワフルな母親の話なども面白いのだけれど、でも圧巻はやはりアメリカでエイズと闘うゲイの人と交流したときのエピソード。
 橋口さんの友人の日本人は、新しい恋人と暮らしながらも、エイズになり、弱っていく以前の恋人を看病し続けている。それを新しい恋人の方もあたたかく見守っている......という話。苦境に立ったとき、マイノリティーになってしまったとき、人は強く団結できると橋口さんは書いていたけれど、それだけなのかな。人の愛って、本当はもっとすごく深くて強いものなのかもしれない、今の私たちの生活ではなかなかそれを発揮できないだけで......そんなことを思ってみた。

 小説もいいけれど、エッセイもいいな。この本を読んでいると、橋口さんがカパちゃんのような恋多き男に見えてくるけれど......是非、橋口さんも幸せになれるといい。
 やっぱり人間、人と寄り添って生きていかないと、一人で生きられるほどタフじゃないんじゃないかと感じる今日この頃なのです。

 

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