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2009年12月19日

湊かなえ「告白」


告白告白

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1年ほど前に話題になり、今もベストセラーであり続ける本「告白」を、遅ればせながら読んだ。

6つの短編から成っている本ですが、それぞれの短編はつながっていて、全部で一つの作品になっている。
ただ、1話目の「聖職者」が、「小説推理新人賞受賞作」ということなので、もともとは原稿用紙100枚弱の長さだった短編が完結した作品で、そこに、あと5話を付け加えていったということなのだろう。

1年ほど前から話題になっている本だから、ずっと気になってはいたのだけれど、読んでみたら、思っていたのとは大分違った。
ただ、非常にうまいし、新しいな、と思った。なるほど、こういう作品が、新人賞を獲るんだな、と納得できる感じ。でも、こういう作品が「売れる」というのは、ちょっと意外にも思えた。
なんというか、ちょっとマニアックで、コアなファンをつかみそうな感じの作品に思える。

1話目は、終了式の日、担任の先生が生徒に最後に話をする、というもの。「最後に話をするシーン」などではなく、「最後の話」そのものが作品になっている。
つまり、原稿用紙100枚近い長さが、すべて「独白」ということ。
私が不勉強なのかもしれないけれど、「独白」だけで完成する小説というのは初めて読み、すごいな、と思った。純文学ならまだ分かるけれど、「推理小説」の受賞作なのに、独白かぁ、と。
しかもアイディア以上に、それだけで読ませてしまう力量がすごい。
その「独白」のなかで、ある「事件」の話になり、その事件の犯人の話になり、その「犯人」がどうしてそういう行動に及んだかの経緯の話になり、そして、最後、衝撃の一言につながる。
「おぉ......そうくるか」という感じ。
ただ、決して後味はよくない。

2話以降は、多分1話が受賞したあと、付け足されていったものなのだろうけれど、読んでいくと、6話すべてでようやく完成する作品のようにも思える。
それも湊さんの「力」だろう。
1話ずつ、つながっているようで、前の話を潰していっているようでもある。
1話だけで世界が完結していると思うと、その作られた世界が、あとの話で崩されていく。
その感覚もまたおもしろい。

前にも書いたように、決して心地よい読後感ではないし、嫌な気分が残るのだけれど、またなにか思いついたときにこの人の本は手にとってしまうだろうな、と思う。

純粋に読者として読む場合は、好き嫌いが別れそうなので、「気になったら読んで」くらいだけれど、小説を書く人にはお勧めしたい本だ。

2009年3月22日

愛川 晶「化身」

若桜木先生に薦められて「化身」を読みました。

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愛川 晶

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鮎川哲也賞受賞作なんて、読むのはじめてかも。
こういうのが「本格推理」というジャンルなのだと、初めて体験しました。

むちゃくちゃ頭いいなぁ、この人、というのと、よくこんなに詳しく調べる気になるなぁ、というのが感想。

以前は、小説家を目指すのなら、どんなものでも書けなくてはみたいに思ったりしていたけれど、最近は、あまり思わなくなった。
綱渡りや宙返りができないように、「本格推理小説」など、書けない、と(笑)

でもやはり、人間、得意不得意があるのだろうな。
せっかくトリックなどは完璧なのに、人物造形が......悪い意味で漫画のようでした。
すべての人が、いわゆる「典型的なキャラクター」というか......。

ただもし将来、これくらいすごいトリック(というか設定も含め)を考えつけ、さらにトリックを考えることだけに楽しみを見出している人と出会えたら、共著で小説を書いてもいいかもしれない......などと、変にビジネスライクに思ってみました(笑)

ということで、小説に「共感」であるとか、「描写」の美みたいなものを求めている人にはあまり薦めないけれど、ミステリーを書きたいと思っている人や、大どんでん返しみたいなものが好きな人にはお薦めです!

2009年2月21日

赤井 三尋「翳りゆく夏」

「翳りゆく夏」という江戸川乱歩賞をとったミステリー小説を読みました。

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赤井 三尋

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文章も上手く、とても読みやすいし、江戸川乱歩賞の受賞作は「新人」とは思えない質のものになっていることが多いなぁ。

これは誘拐ものなのだけれど、誘拐とはこういうものだ、という既成概念を崩している。
それくらいのパワーがないと、やっぱり新人賞は獲れないのかもしれないな。
人間描写も、社会の描写も上手く、リアリティがある。

色々勉強になる作品でした。

2006年10月24日

劇団ひとり「陰日向に咲く 」


陰日向に咲く陰日向に咲く
劇団ひとり

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話題になってからだいぶ経ってしまいましたが読みました。
文章力があるとか、文学的だというのとは違うけれど、おもしろかったし、上手かった。上手いのは、キャラクターの作り方かな。ストーリーでも文章でもテーマでもなくただひたすらキャラクター。
有名人が本を出すと、ゴーストだとかよく言う人もいるけれど、これは劇団ひとりというお笑いの人が、そのお笑いの世界を追究しているうちに生まれた副産物という感じがして、誰にもゴーストだと言わせないぞという彼らしさが満ちていた。
この本を読むことで、普段からこの人は、すごい一生懸命、笑いとかおもしろさを追い求めているのだろうな、という「プロ意識」を感じた。そうやって日々積み重ねてきたものは、お笑いという形で舞台に乗ってもいいし、小説という形で出版されても同じことなのではないか、というように思った。
だからこれは処女作ではあるけれど、初めての「デビュー」ではないという感じがした。

多分この本は、たいていの人に「おもしろい」と受け入れられると思う。ただ、「文学」を読み慣れていて、そういうものを求めて手に取った人には、「ちょっと違う」と思わせるものではあるかもしれない。
各ストーリーには落ちがあるのだけれど、「わざわざそんな無理して落ちをつけなくても良かったんじゃない?」というのもあれば、「そういう落ちはよくあるよね」というのもある。そういうところで、「これは文学じゃなくて、きっとお笑いなんだよな」と、自分を納得させないといけない部分などもあった気がする。
(でも、2つくらいは落ちが良かった)
上手く言えないけれど、本をあまり読まない人には、「おもしろかったから読んで」と勧められるけれど、文学仲間には勧められないって感じかな。
ただ、私はありきたりの人間しかあまりかけない人なので、「キャラクターを作る」という意識はとても学べて良かった。
多分、二作目を出したら読むだろう、というくらい気に入ったし。
劇団ひとりは一人ネタをやっているときは近づきたくないほど変な人だけれど、「純情きらり」ではすごい魅力的な人になっていたし、なんか興味をそそられる人ではあるなぁ。今後も期待。

 

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