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2010年2月13日

東野圭吾「殺人の門」


殺人の門 (角川文庫)殺人の門 (角川文庫)

角川書店 2006-06
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決して前向きな明るい話ではなく、どちらかというと、暗い気持ちになってしまうような話なのだけれど、それでも、ぐいぐい先へ先へひっぱっていく物語の力に導かれ、非常に楽しく読めた本だった。

テーマは、「人はどんなとき、人を殺すのか」。
主人公は子供の頃からそんな「人を殺す心理」に興味を持つ。
彼が、唯一継続して殺意を感じるのは、小学校時代からの「友達」だった。
この小説のストーリーの核は、結局主人公はその「友達」を殺すのか。

でもこの「友達」、相当な曲者。
非常に小賢しい。
ただ、非常にむかつく奴で、主人公の人生はそいつの存在のせいで、何度も狂わせられるので、読者もその「友達」に殺意に近いものを感じたりするのだけれど、それでもどこか憎みきれない、少し複雑なキャラクターが、非常に巧みに描かれている。

細かい部分まで気を遣って、精密に組み立てられている作品だった。

私は、基本的には、もっと人の善意を信じられるような作品のほうが好きだけれど、こういう作品は、はらはらしながら楽しんで読めていい。
先が気になる小説が手元にあるときは幸せだ。

そして、こういう、人物を細かく丁寧に書き出した、ストーリーより人物に重きを置いた小説を読むと、しばらくその登場人物たちのことが、読み終えたあとも気になり続けてしまう。

2009年12月19日

東野圭吾「さまよう刃」


さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)

角川グループパブリッシング 2008-05-24
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東野さんの作品は、外れがないし、作品数も多いし、ということで、しばしば読んでしまう。

「さまよう刃」は以前から気になっていたのだけれど、何度も手にとっては、本屋の棚に戻していたため、「これ、読んだっけ、読んでないんだっけ」と分からなくなり、しばらく放ってあった。

ただこれも映画化されたということで、気になったので買ってみた。
読んでいなかったようで、良かった(笑)

これは、かわいい高校生の愛娘を強姦されて殺された父親が、未成年の犯人ひとりを自らの手で殺し、もうひとりの犯人をも殺すべく、逃走しつつ犯人を捜すという話。

犯人を追う父親の気持ちが非常によく分かり、痛いけれど、でも、良い作品だった。

東野さんのこういう作品は、一ミリでもずれたら完成しない工芸作品のような感じだと思う。

逃走している父親がホテルではなくペンションに泊まるという設定と、最後のちょっとしたひねりには少し不満も覚えたけれど、それ以外は本当に完璧に組み立てられている。

なぜ父親が犯人が誰でどこに住んでいるのかをつきとめられたのか、警察はその謎になかなか迫れないけれど、この部分こそが要で、この設定を作り出したところが、まず、すごいな、と思った。

あとは、この、ちょっとうんざりするような世界を、緻密に書き出していく集中力と、努力と、筆力には、本当に敬意を払いたくなる。

2009年10月24日

東野圭吾「宿命」


宿命 (講談社文庫)宿命 (講談社文庫)

講談社 1993-07
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結構初期の頃の作品だと思うけれど、はじめからこの人は本当に上手かったのだな、と改めて感じさせられる作品だった。

非常に楽しんで読めた。

小学校の頃から"ライバル"だったふたり。そのうち一人は警察官になり、もう一人はある事件の関係者になる。警察官になった主人公は、元ライバルを疑い、追い詰めていくが、結末では思いがけない二人の"宿命"が明かされる。

文庫本のラストで東野さんのインタビューでのコメントが紹介されていた。

「初期作品のような、殺人事件があって、トリックがあって、犯人はこの人、というような意外性だけの作品では物足りなくなってきました。これならいくつ書いても同じだと思うんですね。まだ試行錯誤の段階ですが、ミステリーではないといわれてもいいから、そいういう作品は避けて通りたいと思っています」

この言葉は、重い。

少し前に東野さんの「探偵の掟」を紹介したけれど、東野さんが、はじめはトリックを命にした「本格推理」を書いていたけれど、次第に「もっと広い意味でのミステリー」を模索し始めたことが、よく分かる。

でも、ピカソやダリは、奇想天外な絵を描きながらも、その基本には誰にも負けないほどの基礎的なデッサン力があった。

ミステリー作家にも、「本格推理」を書く力というのが"基礎力"として必要なのかもしれない、などということも思った。

でも、東野さんの作品を読むと、ミステリーというジャンルの幅広さとか可能性を感じられるのはいいな。
私も書くとしたらあくまで"広義のミステリー"を書きたい。

誰が殺したのか考えるのでも、人を殺して自分が疑われないためのトリックを必死に考える、というのではなく、もっと、「なぜこんなことが起こったのか?」「事件を起こした本人は、どんな気持ちで、どんな必要性にかられてそんな行動に走ったのか?」などを追っていく"ミステリー"がいい。

しかもできれば、その行為に走ったのは、利己的な理由ではなく、"誰かのためだった"という、心温まるラストにつなげられたらいい。

今はそんなことを思いながら、ミステリーを分析しつつ読み、自分の小説の可能性を広げるべく、"広義のミステリー"を書いています。

2009年9月13日

東野圭吾「名探偵の掟」


名探偵の掟 (講談社文庫)名探偵の掟 (講談社文庫)

講談社 1999-07
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 東野さんは時々こういう笑える短編集を出す。
 これは、今までの「探偵もの」の小説の「ありえなさ」を皮肉たっぷりに描き、コメディーにした作品。
 普通に笑って読むのもいいけれど、推理小説を書きたいと思っている人なら、「なるほど、今まで、こういうタイプの推理小説が書かれてきたんだ」と、探偵ものの「文学史」を辿る勉強ができる。
 まぁ、これくらい読んで、自分で分析した上で、推理小説を書けよ、ってことかもしれないけれど。

 ただ、最近DSのソフト「逆転裁判」などをして、結構楽しんでいるのだけれど、小説でやったら「え、今更、ダイイングメッセージ?」とか、「え、今更、歌になぞらえて殺人?」とか絶対思われるようなことでも、ゲームや漫画では、まだ辛うじて許されるんだなぁ、なんて、思う。

 人を驚かせたり、予想外の結末を用意したりするために、今まで考えられてきた「パターン」は、やっぱり「理解」はしておくべきだろうな。こういうのを「温故知新」というのか。
 きちんと今まで辿ってきた道を理解しつつ、そこを超えた部分で勝負しなくては、という感じか。

 東野さんは、この「名探偵の掟」で「読者は結局、自分で推理なんかしないで、ただ先を読んで、作者が種明かししてくれるのを待っているだけだ」とか、書き手だけではなく、読み手の批判などもしている。
 でも、あとがきを読むと、東野さんはそういう問題提起を、ただの問題提起だけでは終わらせず、他の作品に生かしているらしい。たとえば、上記の批判に対しては、最後まで読んでも、読者自身がきちんとトリックを暴き、証拠を集めて理解しない限り、最後まで犯人がわからない小説を書く、などという方法で。

 この作品自体は、コメディータッチだけれど、これを読むことで、今まで以上に、東野さんの推理小説というものに対する情熱だとか、勉強量だとか、誠実さだとかを感じた。

 本当、勉強になったな。

2009年3月 2日

東野圭吾「鳥人計画 」

東野さんの「鳥人計画」を読んだ。

鳥人計画 (角川文庫)鳥人計画 (角川文庫)
東野 圭吾

角川書店 2003-08
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東野さんの作品は、5,6作は読んでいると思うけれど、それでは1割にもならない。
本当、すごい勢いで書いている人だと思う。

そうやってたくさん書いているからなのか、東野さんの作品は、幅が広い。
いや、幅が広いから、これだけたくさん書けるのか......?

ただ、この作品はちょっと、自分が期待していた東野作品ではなかったな。
なんていうか、「いわゆる、昔からあるミステリー作品」という感じ。
もちろんそのなかにも、緻密な描写あり、ミスリードあり......なんだけど......う~ん。
途中で、「あれ、似た名前のほかの人の作品を買っちゃったのかな?」と不安になるくらいだった。

私の持っている東野作品、というのが偏ったイメージなのかもしれないけれど......
「白夜行」や「幻夜」のあの世界観があってこそ、一流の作家、という気がする。

ただ、これを読んだことによって、自分が「読書」であるとか、好きな作家に求めているものが、また見えてきて、良かった。

やはり決して、トリックであるとか、どんでん返し、ではないな。自分が小説に求めているのは。
それは、「あればあったでいい」という、添え物なんだな。
大事なのはあくまでオリジナルで、心地よい世界観。

......なんて、人のこと言っているまえに、自分の作品も書かないとね。
もう3月。
本命の締め切りも迫ってきているので、そちらの直しも頑張りつつ。

2007年1月22日

東野圭吾「白夜行」

白夜行白夜行
東野 圭吾

集英社 2002-05
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このあいだも書きましたが、かなり長時間かかった「白夜行」をようやく読み終えました。
やはり長いだけあって、力作!という感じ。やっぱり長編、特にミステリーを書ける人は頭がいい。自分にはこういう頭の良さはないな、と半分あきらめのように思う。うらやましい。でも、こういうのは才能というだけではなくて、やはり努力の結晶みたいなものなのだろうな。才能がなければできないけれど、才能があっても相当それを磨かないとできない。
内容は決して明るく楽しいものではなく、逆に、人はここまで冷酷に生きられるのか、と感じさせるものになっている。様々な視点人物から事件を語りながらも、主人公2人が決して視点人物にならないところにまた、その人間離れした冷たさを感じさせる要因がある。というか、東野さんはそこをねらってきちんと書いているはずで、それが上手いなぁ、と思う。こういう視点の置き方は勉強したい。
それから、同じ人物を書いても、視点人物が違うと、違う人物のように見えてきてしまう。そのぶれも上手く使っている。視点の移動は長編でないとなかなか厳しいから、100枚程度のものしか書かない私にはあまり使えない技ではあるけれど、誰を視点人物にして、どういう角度で物事を見せるか、そこにはいつも細心の注意を払うべきだと思った。
ほのぼのとした小説とか、人の善良さを見て生きたい人には勧められない本だけれど、ミステリー、エンターテイメントとして、「先が気になる」読書をできる良書だと思うので、私はお勧めします!

2006年11月19日

東野圭吾「手紙」


手紙手紙
東野 圭吾

文藝春秋 2006-10
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映画は今、公開されているのかな。
映画を見ても良かったのだけれど、東野さんの本は好きなので、本の方を選んでみた。山田くんと玉山くんもいいんだけどね。
ストーリーは、弟の学費を手に入れるために思い詰めた兄が強盗に入り、誤ってその家のおばあさんを殺してしまい、そのために弟は社会から差別を受け、苦しむという話。
刑務所に入った兄からは、一ヶ月に一回しか出せないという手紙が、毎月届く。その手紙と、手紙に象徴される兄との関係の扱い方に迷い、苦しみ続ける弟が主人公。
ものすごく分かりやすく、残酷な差別やいやがらせをされるさけでもなく、ただ人に距離を置かれ、常に特別扱いされてしまう主人公の生活の描写は、まったくドラマチックではなく、とてもリアルな重さで迫ってきて、だから読むのが少し苦しくもなったけれど、それが東野さんの力量なのだろうなという気がして。
数ヶ月前に感想を書いた「時生」も良かったけれど、あれはデビューしてすぐくらいの作品だったから、それから何年も経って書いたはずのこの作品は、ますますこなれ、完成されていた。
とても難しくデリケートな問題で、結局答えなどないのだとは思うし、作者もそう認めてはいるのだけれど、「答えはない」というところに安易に逃げたりはせず、作者の考えがきちんと明示されているように読み取れるところが良かった。
救われない話ではあるけれど、最後は少しだけ温かさも感じられた。
これくらいの作品が書ける力が欲しいなぁ~。

2006年9月 8日

東野圭吾「時生」


時生時生
東野 圭吾

講談社 2005-08-12
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2ヶ月ほど前に買ったと書いた小説。
ようやく今日、読み終わりました。一冊の本にこんなに時間がかかるのは随分久しぶり。いまだに少し、小説を読んでいると、もっと実用書を読んだり、勉強をしたりした方がいいのでは、なんて気持ちになってしまうし。でも、こうやってのんびり小説を読んだりできるのは、「自由」ってことなのかもなぁ。

東野さんの作品は、「容疑者Xの献身」に続き2冊目。作品全体の出来としては、「容疑者Xの献身」の方が完成度が高かった気がする。トリックや謎に最後にかなり驚くことができたし、「プロ」としての安定した筆力を感じた。
それに比べると「時生」の方は、ミステリーとしてはお粗末な部分も多かった気が。脇役のキャラがどこか他の作品から持ってきたような、ステレオタイプなものだったり、会話や立ち回りもところどころ陳腐に思えた。でも、もしかしたらそれは全部作者の計算なのかもしれない、とも思った。どこか作り物めいた世界を意図的に作っているのかもしれない。

そして、ミステリー以外の、テーマとか主要な人物の心の動き、人と人との関係という部分では、「時生」はとても良かった。「容疑者X」も感動する話だったけれど、それ以上に、かなり心に迫ってくるものがあった。テーマが、普遍的なものだからかもしれない。親子の関係、人を許すということ、自分の人生に自分で責任を持つということ......大事なテーマが説教くさくなりすぎることなく、さわやかな「トキオ」青年の口から語られるのが良かった。
この小説のなかの関係は、現実にはありえないものだけれど、現実でも、子供が親に支えられ、親から色々教わるのと同時に、親が子供に支えられ、子供に教えられることは必ずあるのだろうという気がした。東野さんが最後に一番言いたかったことがそういうことだったのかは分からないけれど。

とにかく、ちょっと悲しくはあるのだけれど、心が温かくなり、子供を持つのもいいな、と思わせてくれる作品だった。
そして、私が良いと思ったのはそういうテーマの部分だったけれど、それだからこそ、大切なテーマや大切なシーンを書くために、ミステリーなりエンターテイメント的な要素を入れることも大切なのかな、ということも考えさせられた。

2006年2月17日

東野圭吾 「容疑者Xの献身」


容疑者Xの献身 (文春文庫)容疑者Xの献身 (文春文庫)

文藝春秋 2008-08-05
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 東野さんの名前はもちろんずっと前から知っていたけれど、ちゃんと読むのは初めてだった。
 いやぁ、この人も職人的なエンタメ作家だなぁ、と思った。感覚ではなく、頭脳で書いている感じがする。どうしたら人の心をひっぱって最後まで読ませるか、その「技術」をとてもよく分かっている人だ、というのが感想。

 私は実はあまり本にのめりこまないタイプなのだけれど、久しぶりに睡眠時間を削ってラスト、読み切った、という感じだった。
 上手いなぁ。先が気になる!
 そして、ラスト十分の一くらいでようやく、「も、もしかしたら......」という予感を抱き始め、ラストの十分の一で、その予感が本当だったということと、なぜそうしたのか、細かい部分はどうやってクリアしていったのか、それぞれの事柄にはどんな意味があったのかが分かってくる。
 私はそこまでミステリーに詳しくはないので、これが本当に新しいものなのかは分からないけれど、少なくとも私の中では新しく、とても衝撃的だった。なるほど、すごい!と思った。「気づかなかったよ」だけではなく、「なるほど」としっかり納得させるのは、ミステリーでは特に大事だと思う。

 と、もう、エンタメの点では完璧に近い評価!

 ただ、「文学」という面から見ると、どうなのだろう。それはよく分からない。
 最近小説を習っている先生が言うには、「一気に読めました、というのは褒め言葉のようであって、決して褒め言葉ではない」とのこと。そんな一気に読めるようなものは、心に残らないし、ストーリーのおもしろさだけで先を読ませているのだから、もう一度手にとって読んでみようとは思わないから、というのが理由。
 東野さんの作品は、たとえばシドニーシェルダンのような本と比べたら(中学か高校の頃は結構はまって夜遅くまで読んでいたなぁ)、結構しっかりした作品だと思う。でも、もう一度読みたいか、いつでも自分の本棚に入れておきたいか、と言われると、う~ん、となってしまう。
 読み直したくなるのは、決して読みやすくはない三島由紀夫とか、分かったようで全部が分かったわけではない小川洋子さんの作品とか、そういうものの方。
 そういうわかりにくい「純文学」は、エンタメに比べてお金にならないとは思うけれど、やっぱり私は「職人」に徹して文章を書くことはできないだろうな......。これから考え方は変わるかもしれないけれど、今はそう思う。別にエンタメの要素を完全に排除するとかそんな極端なことではなくてね。

 今回の作品も、トリックというか、謎の答えはとてもよく考えられたすごいものだった。でも、これは帯にも書いてあるけれど、人はこれほどまでに人を深く愛せるのかというのがテーマになっている。でもその愛は、この話では脇役になってしまっていないか、主役がそのトリックの奇抜さになってしまっているのではないか、という気はした。なんとなくラストの物語の決着の付け方が、こういうのもありだなと思う一方で、少し受け入れられなかったというのもあり......。
 全然比べるものではないけれど、たとえば一年後、この本と「ミュンヘン」とどちらが心に残っているかと聞かれたら、「ミュンヘン」の方が心に残っているのではないかと思う。......そういうところで、自分はまだ、作品を書く上で何を一番重要視したいのかが分かっていないのかもしれない。だから迷うのかもしれない。......なんてことを思った。

 と、いつものごとく脱線しまくったけれど......
 この本は、本当におもしろいし、良くできた本だと思います。お勧めです!

 

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