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2014年2月 1日

百田尚樹「永遠の0」

永遠の0 (講談社文庫)永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹

講談社 2009-07-15
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★ベストセラーには訳がある★

 10日ほど前に本を読み終え、今日、映画を見てきました。
 どちらも、それぞれ良かった!
 原作も映画も両方いいというのは、なかなかないけれど、「永遠の0」の場合は、どちらもそれぞれの持ち味をしっかり生かし切れていた感じ。

◆まず本の方は......
 文庫本は600ページ近くあり、それなりに読むのにエネルギーと時間が必要。ただその分、非常に戦争の状況が綿密に書かれてあり、作品にどっしりとした世界観を与えている。
 この話は、主人公の「特攻で亡くなった祖父」=宮部久蔵のことを探るべく、多くの「戦友」に話を聞きに行くという形で構成されている。本のほうは、10人のインタビューの形になっていて、始めのほうは一つ一つの話がそれぞれに完結しているような印象になっている。ただ、様々な角度から語られる宮部久蔵の話を聞くうち、読者のなかにも宮部久蔵という人物が、非常に立体的な姿で見えてくる。それぞれの人のインタビューに心を打たれる場面があり、次第に宮部久蔵という人物の人柄に引力を感じられるようになっている。読者はそうやって、本の世界に引き込まれていく。
 そしてラスト。バラバラの断片に見えたいくつかのインタビューの内容が、思わぬところでつながっていることに気づかされる。主人公も読者も。そして、まさかの結末。涙止まらず!

◆それを踏まえて映画は......
 かなり原作の内容に忠実に作られている印象。600ページ弱の長い原作から、うまく本当に大事な部分を過不足なく抜き出して作られているように感じ、好感が持てた。
 また適宜CGなども使い、戦争の場面が迫力ある映像になっていたし、小説では出てこなかった地図などを所々で見せることにより、戦争の内容がより身近に感じられる部分もあった。必要でない人物を削り、その人の意味あるセリフだけを他の登場人物にうまく振り分けているのにも、構成力を感じる。
 本のほうはあくまで生きている間に出会った人々の言葉の中でだけで生きていた宮部久蔵が、映画では岡田准一という俳優の演技で具体化されている。岡田くんの演技も秀逸で、まるで違和感なく受け入れられた。
 そういう意味で、映画だけでも充分「永遠の0」の魅力は感じられる。ただやはり、あの分厚い本を読んでいると、それぞれのシーンや人の言葉の奥にもっと厚みや重みを感じられ、より楽しめるようにも思った。
 だから個人的には、本→映画の順番で良かったかな、と思う。映画でラストを知ってしまったあとに、あの長編を読むのは、ちょっとモチベーションが維持できないかも(私は)。


「永遠の0」について調べていたら、同じく「ゼロ戦」を題材にして映画を作った宮崎駿監督が「永遠の0」を酷評したとか、そんな記事も出てきた。やはりリアルに戦争を経験している世代と、そうでない世代では、どうやっても戦争というものに対する思考の溝は埋まらないのかもしれない。
 でも、映画の最後にも「戦争を知っている世代はあと10年もしたらほとんど死んでしまう」という言葉が出てきたけれど、今、改めて過去の戦争に目を向けること、実際に戦争を体験しているわけではない世代の人間でも、ひるまずに戦争に向き合って作品を作ることには意味があるように思った。
 私は個人的には、百田さんが安倍首相の靖国参拝に対して、良くやったくらいの意見表明をしていたことにちょっと違和感は覚えたけれど、「永遠の0」に込めた百田さんの想いはすっと受け止められた気がする。

 600ページの小説を読むのは......という人は、是非、公開中に映画を見てください! お薦め。(戦闘シーンの迫力などは、やはり映画館で味わってこそだと思うので)

 

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