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2013年4月25日

新 雅史「商店街はなぜ滅びるのか」

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)
新 雅史

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 以前、朝日新聞で商店街についての特集連載をしていたのだけれど、そのなかでこの筆者の新さんのコメントなどが紹介されており、気になって著作を手に取ってみた。

 一言でまとめると、タイトルの通り、商店街はどのように興り、どのように廃れていったのか、また商店街はそもそも今の時代に必要なのか、必要なのだったら、どうやったら良い形で商店街というものを維持できるのか、ということを探る内容。

 私自身は「都市デザイン」というものに以前から漠然とした興味があり、その延長線上でこの本も手に取ってみたのだけれど、読んでみたら、非常に「社労士」の仕事の範囲とリンクした部分が多く、とても興味深く読めた。

 この本は、副題にもあるように、「社会・政治・経済史」など、本当に幅広い知識を持った作者が、様々な角度から事象をとらえて書いているのだけれど、作者の知識と視野が広いので、偏った知識しかない私には、非常に「目からうろこ」の部分が多かった。

 まず初めに驚いたのは、1章の初めから出てくる「自営業の安定」という言葉。
「かつて存在していた日本社会の安定は、『日本型雇用慣行』(長期雇用、新卒一括採用、年功賃金など)に支えられた『雇用の安定』からのみ捉えられた。だが、こうした見方こそが大きな問題である。(略)戦後日本は、商店街の経営主をはじめとした、豊かな自営業によっても支えられていた。つまり、『自営業の安定』という、『雇用の安定』とは別の安定がしっかり存在していたのである」

 言われてみれば、もっともだけれど、若者の失業率が高いとか、若者の経済力が低下しているという話を聞いたとき、私は「非正規雇用」というものにだけ問題があるような気がしていたし、なぜ失業率が上がり、非正規雇用者の割合が増えるかは、機械化が進んだことや、海外の安い労働力の問題としか考えていなかった。
 でも、それだけではない、もっと根本的な原因があるのかもしれない。

 作者曰く、商店街というのは歴史が古いものだと考えられがちだけれど、実は、デパートというものに対抗するために零細小売店が集まったもので、歴史はそう古くないという。
 しかし、バブル期に地域にはスーパーが多く建つようになり、さらにバブルがはじけると買い手がつかなかった地域と地域の間にある大きな空き地にショッピングモールができ始め、商店街は衰退する。
 商店街がつぶれ、スーパーやショッピングモールにとってかわられることによって何が起こるか。
 雇用の面から考えると、「自営業者」が減り、アルバイト・パートという「非正規雇用者」が増える。

 また、1985年の年金改革で、社労士にはおなじみ「第3号被保険者」というものが生まれる。つまり、「サラリーマンや公務員の妻(年収130万円以下)は、年金保険料を払わなくても、将来、自営業者と同じだけの年金はもらえますよ」という制度。
 これによってますます社会は「サラリーマン+専業主婦」というものが理想的な家族の形という認識を強め、また、サラリーマンの妻が年収130万円以下の仕事を求めるため、スーパーやショッピングモールの時給はできるだけ低く抑えられていても、あまり不満は出てこない。そのうち、主婦ではない「フリーター」層の時給まで、そのレベルに抑えられることになる。そして「非正規雇用者」の経済状況はますます厳しくなる、というのが作者の見方だ。
 まさにそうだろう。でも言われてみてはじめて、色々な物事がリンクして動いていることに気づく。

 政府も非正規雇用の経験しかない若者を雇ったら企業に助成金を出す、という試みと同時に、若者の創業支援もしてはいるけれど、自分で起業したいと思う若者は年々減っているというデータもある。
 私自身も30歳くらいまでは、「自営業」という職業を正直身近に感じることはなかった気がする。でも、その選択肢の乏しさが、現代の問題なのではないかと筆者は言う。

 筆者自身は、商店街の酒屋の息子として育った、社会学者(学習院大学非常勤講師)なのだけれど、「商店街」というものを全面的に肯定しているわけではない。でも、3.11のあと、商店街には多くのボランティアが入り、4か月という短期間で復旧したが、少し離れた場所にあるイオンなどの入るショッピングセンターにはボランティアの姿はなく、復旧も遅れていた、という例を出し、やはり地域に根付いた店というものは必要なのではないかと説く。

 後半の「コンビニ」が商店街を内部から壊していくというくだりや、自分の「商店街の息子」時代を振り返る「あとがき」含め、非常に読みごたえのある本だった。
 かなりアカデミックな本なので、結構頭を使うのは確かだけれど、その分読み終わった時、ちょっと賢くなった気分になれる(笑)ので、お薦めです!
 特に社労士に読んでもらいたいな、と個人的には思います。

2013年4月 7日

高橋 歩「ISLAND STORY」

ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)ISLAND STORY(アイランド・ストーリー)
高橋 歩(たかはし あゆむ)

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 先週、ウインドサーフィンの人たちと千葉のバーで飲んでいたのだけれど、店のホームページを見たら、そのバーは、「高橋歩ら4人が学生時代に立ち上げたもの」という説明があった。

 高橋歩ってどっかで聞いたことあるような......と気になり、調べていたら、すごく変わった経歴の人!
 大学時代にバーを作っただけではなく、そのあと自伝を出版したいがために、自ら出版社も立ち上げた、とか。
 本を出したいから出版社を作るって、新しい発想!

 それ以外にも、沖縄に自給自足の村を作って、そこで色々なアクティビティーのできる宿泊施設を建てたり、バーでも出版社でも、宿でも、ある程度事業が軌道に乗ると、知り合いに売って手放し、家族と世界一周の旅に出かける......とか、通常の日本人の発想ではありえない人生を送っている人のよう。

 ただ、そういう相当変わった、エネルギッシュな人というのは、カリスマになる一方で、批判もされるというのが、世の常で、ネットで調べると、マイナスの情報も色々出てくる。
 たとえば沖縄の自給自足の村は、最初は池間島というところに作ろうとしたけれど、島民の反対で、引かざるを得なかったとか、ネットワークビジネス的なお金の稼ぎ方をしているらしい......とか。

 この本は、高橋さんが一回目の世界一周旅行から戻り、沖縄に住み始めたあと、まず読谷村でバーを開き、そのあと池間島のプロジェクトに失敗し、でも今帰仁村にビレッジを建設し、軌道に乗せるまでの自伝、というか、エッセイ(5年くらい前の本)。
 写真が多く、文字は少ないので、フォトブック的な印象。
 沖縄のきれいな海や、仲間とのわいわいがやがやな感じが伝わってくる写真が多い。
 そして文章は、非常に軽い。でも写真や、内容と合っていて、不快ではない軽さ。軽いというより、テンポがいい、と言った方がいいかな。

 でも、文字が少ないし、重みがないので、さらりと読めるのだけれど、読むと素直に元気になるというか、「あぁ、そんなふうに考えて、生きるっていう選択肢もあるんだな」と思えて、楽しい本だった。

 本の中には、池間島のプロジェクトの失敗も素直に書かれているのだけれど、それもちゃんと受け止めつつ、でも深刻になりすぎず、次に進む力にしている。
 高橋さんに会ったことはないから、本当にはどんな人なのかは分からないけれど、本を読む限りでは、きっと、まわりには色々、高橋さんを利用してお金を稼ごうとする人がいたり、色々な利害関係があるんだろうけれど、高橋さん自身は、とてもピュアで、無邪気な人なのかもしれないな、という印象があった。
 単純に、発想力が豊かで、行動力のある人の周りには、色々な人が集まってくるよね、と。

「生きるって、マジ、素晴らしい!」
 そう言えない日だってあると思うけれど、それでも、毎日、生きることは素晴らしいんだと言い聞かせながら、まっすぐ生きている感じが伝わってくる。

 いい土地や物件があったとき、断られても、「まぁ、でも、最初に断られるのは、基本でしょ!」と考え、そこから何度も何度もオーナーを訪問して、8回とか9回出向いて、関係性を築いて、「君たちになら貸そう」と言わせる。
 8回、9回も訪ねて、親しくなったら、それは上手くいく可能性も高いだろう。
 そう頭では分かっていても、普通の人は、1回断られたら止めてしまう。根性のある人でも、3回行ってダメならやめてしまうだろう。
 でも、そうじゃないんだ。やりたいことをやっている人っていうのは、運がいい人なんじゃなくて、こういうところで、さらりと努力しちゃえる人なんだな。

 高橋歩信者になって、「好きなことでメシを食う」なんてセミナーに行く気はないけれど......、この間の海士町の「若者 よそ者 ばか者」を例に出すまでもなく、こういう「ばか者」(常識を逸した大胆な行動をとれる人の意味)を受け入れるキャパを作ることが、地域の活性化にも必要なのかもしれないな、なんてことも考えさせられ、色々刺激になった。

 サイトに載っていたインタビューを読むだけで、高橋歩という人のエッセンスがとても伝わってくるので、気が向いたら、読んでみると、ちょっと人生の視野が広がるかも!
 http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2005/04/post-ba40.html

2013年4月 3日

「僕たちは島で、未来を見ることにした」

僕たちは島で、未来を見ることにした僕たちは島で、未来を見ることにした
株式会社 巡の環 (阿部裕志・代表取締役/信岡良亮・取締役)

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 日本の「島」が結構好きなのだけれど、行ったことのない島の中で最近、一番気になっているのが、島根県にある「海士町」。

 人口約約2400人のうち、300人ほどが「Iターン者」という、移住者、特に移住する若者が多い島ということで、最近、メディアにも取り上げられる機会が増えている。

 この本は、その海士町に移住し、新しく「巡の環」という会社を立ち上げた二人の書いたノンフィクションの本。
 町長をはじめ、"社外"の人のインタビューもところどころに散りばめられ、著者の二人がどんな思いで東京から海士町に移住を決意したのか、そしてどう島に溶け込んでいったのか、という"移住者側の視点"と、海士町側はどう移住者を受け入れ、見守ってきているのか、という"受け入れ側からの視点"の両方を理解できる本だった。

 海士町は、もともとは少子高齢化も進み、財政破たん目前だったけれど、町長が中心になって自主的な給与カットを行い、その余剰で産業を興こし、岩牡蠣で有名になったところから、島自体が注目されるようになったらしい。
 その後は、積極的に移住者を受け入れ、町全体で、新しいアイディアなどを受け入れるような土壌ができている、とのこと。地域活性に必要なのは、「よそ者・若者・ばか者」だという言葉が印象に残る。

 海士町はIターンやUターンの人を歓迎しているけれど、助成金などを出しているわけではないという。
「本気で向かってくる人には本気で応えようと思っているし、支援もしていきたい。でも、補助金がつくからやらないか、ということは絶対こっちからは言わない。絶対成功しないからだ。
 プロジェクトなりイベントなり、何かやりたいと本気で考えている人と言うのは、最終的には熱意だけで成功に導いていく。金ではない。そう信じているからこそ、何かやりたいという人には情報提供だけは惜しまず、本気の気持ちで応えようと思っている」
 町長の言葉は、深い。

 また、「巡の環」の信岡さんの言葉も心に残った。
 信岡さんいわく、島では「物々交換から始まる」らしい。余ったイカを誰かにあげる、するといつか余った野菜をもらうかもしれない、そんな社会。「うまく交換しにくいものにのみ、お金が使われているというのが、島の感覚なのだ」と信岡さんは書いている。
 でもそういう物々交換の社会では、たとえば「余ったイカを誰にあげよう」というとき、誰にあげるかというと、普段お世話になっている人など、「自分が好意を持っている人」になる。
 だから、そういう社会で生き延びるためには、「島にいてほしい人になる必要がある」と。
 そしてこれは、仕事についても同じだ、と続く。
「これらのお仕事(WEB制作の仕事)も、都会の仕事の始まり方とは全然違いました。
 僕は当初、お客さんにニーズがあって、その解決策を提供して対価をもらうのが仕事だと思っていたのです。しかしこの島では"あいつらは本気で頑張っているから、その特性を活かせる仕事はないか"と、お金が回るための落としどころを村の人が探してくれている。気づけば僕たちのことを、多くの人たちが見守っていてくれていたのです」

 もちろん、見守ってもらえるようになるために、「巡の環」の人たちは、色々な努力をしてきたのだと思うし、そういう人との密な関係は、得意な人と、不得意な人に別れると思うけれど、そういう社会の存在は、興味深く思えた。

 高齢化・過疎化の進む地域にどう若者の力を入れていくか。「ここには何もないから、大人になったら都会に行きなさい」と言うのではなく、「都会で何か身に着けて、ここに戻ってきなさい」と言える場所にどうしたらしていかれるか。
 海士町の試みが、多くの地方地域に刺激を与えるようになっていくといいなと思う。

 海士町は、「五感塾」というものを通して、大企業に教育研修の場も提供しているらしい。企業研修の視察ということで、行ってみたいな~。

 

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