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2013年3月 8日

下川 裕治「「生きづらい日本人」を捨てる」

「生きづらい日本人」を捨てる (光文社新書)「生きづらい日本人」を捨てる (光文社新書)
下川 裕治

光文社 2012-12-14
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 朝日新聞に広告が載っていたんだったか、タイトルが気になって手に取ってみた。
 別に私は日本を出たいとは思わないけど......。

 この本は、旅行作家の筆者が、沖縄・カンボジア・タイ・中国・ラオス・ベトナムで出会った9人について書いたエッセイ集(紀行文?)。
 沖縄は日本じゃない? という突っ込みは入れたくなるが、9つの文章を読み終えると、確かに他の国で生きている8人の人生と、沖縄に渡った人の人生は、ちょっと似ているようにも映る。

 ただタイトルからは、積極的に日本を出て、海外で暮らすことを選んだ人たちの力強い生活をイメージしたけれど、実際の中身は結構違っていた。自らその国で暮らすことを選び取った人もいるけれど、日本にいられなくなった、日本に仕事がなかった、一度留学するために日本を出たらもう居場所が日本になくなっていた、というような消極的な理由の方が目立った。
 それはちょっと残念でもあったかな。

 でもテレビなどでは、海外に渡って成功を収めた人の話などが特集されたりするけれど、実際には海外に出たからって急に物事がうまく進み始めるなんてことは稀なわけで、そういう意味では、非常に等身大のストーリーだったかもしれない。
 ここで紹介される9人は、日本に居場所がなくなったという消極的な理由から始まっても、それぞれ、その地で暮らしていく覚悟は日々固め、その国の人々、暮らしに徐々に馴染んでいっているようにも見える。

 沖縄以外に出てくる5つの国はどこも日本と比べれば後進国なのだけれど、生活の質の差、仕事に対する姿勢の差、金銭的な裕福度の差とお金に対する意識の差、などが非常に明快に書かれていて、それは興味深かった。
 ベトナムでは、「日本人は金持ち」というイメージが強く、現地の人と結婚することになったら、相手の親族がやたらと借金の申し出をしてくるとか、逆にラオスではまだ貨幣経済というものが根付いていないため、お金を稼ぐために働くという意識が希薄で、人を雇っても平気でやめて実家に帰ってしまったり、お金を払うと言っても車に乗せてくれる人がいないとか......。国民の意識とか、国の発展というのは、順を追って起こっていくものなんだな。

 1章に出てくる沖縄に移住した人は、もともと大阪で大きなスナックとラウンジを経営していたけれど、バブルがはじけたあとに倒産させてしまった、という経歴の人。大阪では一日に多いときでは100万円を稼いでいたような店を経営していたけれど、沖縄では一日1万円売り上げがあればどうにか生きていかれるから、それで充分、というスタンスで店を開いている。「金がないってことが、こんなにも楽だったっていうこと......沖縄で味わいました。すごく体が軽いんですよ」......その人が言うと、深い。
 日本を離れ、他のアジアの国に住む人たちも、「(この国は)なんか楽」とよく言っていた。将来のことに目をつむって、キリギリスのように生きるのもどうかと思うけれど、将来を心配しすぎて、そこに縛られすぎてしまうくらいなら、その日その日を一生懸命、でも軽やかに生きられれば、その方がいいのかもしれない。

 自分の人生とは交わりそうもない人たちの人生をこういうノンフィクションの作品で読むのは楽しい。複数の価値観の物差しを持っていたい。

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自己肯定感を高め、自分の心を満たし、しあわせに生き、しあわせな人間関係を構築し、しあわせに働くためのヒント集です。

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