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2011年9月19日

池井戸 潤 「空飛ぶタイヤ」

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸 潤

講談社 2009-09-15
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「下町ロケット」で直木賞を取った池井戸さんですが、4年くらい前、「空飛ぶタイヤ」で直木賞の候補になりながらも、選外になっています。
でも、この「空飛ぶタイヤ」、非常に良かった!
きっちり作られているエンターテイメント小説でした。

ストーリーは簡単に言うと、中小企業(というより零細企業)の運送会社のトラックのタイヤが運行中に外れ、女性を死亡させる。
トラックはホープ自動車という大企業のもので、ホープ自動車の検査結果によると、「整備不良」が原因ということ。
責任は運送会社にあるということになり、運送会社の社長は、被害者から訴えられたり、大きな取引先を失ったり、ひどい目に遭う。
でも、社長は、自分の会社の「整備不良」だという結果を信じず、大手企業であるホープ自動車に真っ向から勝負を挑んでいく。
という話。

タイヤが外れて死亡事故が起こり、それが結局、自動車会社の問題だった、というのはまだ記憶に残っている実際の事件にもあった。
その自動車会社というのは、三菱自動車だったということも、多くの人が覚えていることだろうし、この作品にも、ホープ自動車のグループ会社の「東京ホープ銀行」なども登場し、明らかに「東京三菱銀行」なのではないかと思い、また、池井戸さんは、以前三菱銀行に勤めていた......という経歴もある。
が、この作品はあくまでフィクションらしい。

それでも、一人一人の人間の、組織で生き残るための狡猾な計算高さが、非常にリアルで、次第に追いつめられていく運送会社の社長を応援せずにはいられない気分になる。
よくエンターテイメントの書き方として、「主人公を徹底的に、これでもか、これでもかと痛めつけ、最後の救いを与える」という手法が語られるけれど、その基本に非常に忠実な、社長が徹底的にいじめられる話なのだけれど、その分、思いがけないところから救いの手をさしのべてくれる人の存在に、心から温かい気持ちになったり、ちょっとうるうるしてしまったり......非常に上手い、と感じさせる作品だった。

良質なエンターテイメント小説を求めている人にはお勧め。
人も組織も、非常にリアルに、立体的に描かれている。
企業小説を書くためには、やはり大企業に勤めた経験というのは大きいなぁ。

と、ちょっと自分に足りない部分を感じてしまったりもしたけれど、文庫本の最後の解説によると、池井戸さんも江戸川乱歩賞を獲る前年には最終選考落ちをしていて、それから翌年に受賞するまでに「化けた」らしいし、さらにそれから、試行錯誤を経て、自分の得意とするスタイルを確立していった、とある。
初めからこれだけ完成されたものではなかったのだな、と思うことで、ちょっと安心(笑)

文庫になるまで待とうかと思ったが、「下町ロケット」も読みたくなってきた。

 

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