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2010年2月13日

東野圭吾「殺人の門」


殺人の門 (角川文庫)殺人の門 (角川文庫)

角川書店 2006-06
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決して前向きな明るい話ではなく、どちらかというと、暗い気持ちになってしまうような話なのだけれど、それでも、ぐいぐい先へ先へひっぱっていく物語の力に導かれ、非常に楽しく読めた本だった。

テーマは、「人はどんなとき、人を殺すのか」。
主人公は子供の頃からそんな「人を殺す心理」に興味を持つ。
彼が、唯一継続して殺意を感じるのは、小学校時代からの「友達」だった。
この小説のストーリーの核は、結局主人公はその「友達」を殺すのか。

でもこの「友達」、相当な曲者。
非常に小賢しい。
ただ、非常にむかつく奴で、主人公の人生はそいつの存在のせいで、何度も狂わせられるので、読者もその「友達」に殺意に近いものを感じたりするのだけれど、それでもどこか憎みきれない、少し複雑なキャラクターが、非常に巧みに描かれている。

細かい部分まで気を遣って、精密に組み立てられている作品だった。

私は、基本的には、もっと人の善意を信じられるような作品のほうが好きだけれど、こういう作品は、はらはらしながら楽しんで読めていい。
先が気になる小説が手元にあるときは幸せだ。

そして、こういう、人物を細かく丁寧に書き出した、ストーリーより人物に重きを置いた小説を読むと、しばらくその登場人物たちのことが、読み終えたあとも気になり続けてしまう。

2010年2月 7日

森絵都「風に舞いあがるビニールシート」


風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

文藝春秋 2009-04-10
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良かった。
すごく良かった!

この作品は直木賞を獲ったもので、一時期話題になっていたから気にはなっていたのだけれど、森さんは「児童文学作家」の印象が強く、前回読んだ「DIVE」は、なかなかおもしろく読めたのだけれど、子供向きで、マンガを読んでいるようなテイストだったので、正直、今回の作品もそんなに期待していなかった。

でも、こんなにタッチからテイストからすべてを変えられるのだなと驚くくらい、「児童文学」の色はまったくなく、非常に上質な、大人向けの、深みのある作品集だった。

この本は6つの短編作品で構成されていて、6つの作品にはなんのつながりもない。
この6つにしても、それぞれ違う作家が書いたオムニバスと言われても納得してしまいそうなくらい、全然視点も書き方も違う。

ただ、帯に書かれているように「大切な何かのために懸命に生きる人たちの物語」という共通のテーマにだけ貫かれている。

最後の「風に舞いあがるビニールシート」は、難民を支援する国際機関を舞台にした話だし、6つのなかには決して明るくはないテーマも含まれている。
すべてが思うようにいくわけではないし、むしろ、思うようにいかないことのほうが多い。
普通の大人の人生がそうであるように。
ただ、そういう上手くいかないことの多いなかで、それでも必死に何かを守ろうとしたり、何かを得ようとしたりして、みんな、頑張っている。
その一生懸命さや、まっすぐであるがゆえの不器用さなどが、非常に良かった。
ひとつひとつの話を読みながら、自分の人生にも上手くいかないことは色々あるけれど、もっとできることを頑張っていこう、と明るい気持ちになれた。

先が気になったり、読んでいて楽しいと思える作品はたくさんある。
でも、「もっと頑張ろう」とか「きっと生きていればいいことあるよね」とか、小説の世界を超えて、自分の抱える世界にまで影響を及ぼしてくるような作品には、久しぶりに出会った気がした。
そして、本来、小説を読む楽しみって、こういうものだったな、なんてことを思い出したりした。
(昔大好きだった、鷺沢萌さんの「海の鳥・空の魚」を思い出し、久しぶりに読みたくなった。あの本も、日常の中で一生懸命に生きる人たちを主人公にした、元気をくれる作品だった)

正直、1作目はよさがよく分からなかったけれど、最後の「風に舞いあがるビニールシート」と、『ジェネレーションX」が良かった。「風に舞いあがる......」は、良かったけれど、ここから読んだらダメだと思う。色々な人の懸命な人生を味わった最後に、この話を読むことに意味がある気がした。

本当、お勧めなので、是非、読んでください!

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」


ゴールデンスランバーゴールデンスランバー

新潮社 2007-11-29
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本屋大賞受賞作「ゴールデンスランバー」をようやく読んだ。
こういう重たい単行本はなかなか持ち歩く気にならないので、家でちょっとずつ読むことになり、その結果、なかなか読み終わらないのでだけれど、非常に伊坂さんらしい、楽しい本だった。

ストーリーは、「首相暗殺犯に気づいたら仕立て上げられ、必死に逃げる」と、簡単に説明するとそれだけだけれど、「魔王」などから続く、政治的な力に対する想いがテーマになっている。
ただ、真正面からそれを受け止めて書くと非常に暗く重い作品になってしまいそうだけれど、伊坂さんの作品ではそうはならない。
どんな危機的な状況であろうと、冗談を言ったり、思わず笑ったりする余裕が伊坂さんの作品の登場人物には常にある。それがいいのだろうな。

逃げるさなかに起こる一つ一つの出来事が、すべて「ちょっとありえない」感じなのが、「ただ逃げるだけの作品を決し飽きない起伏のある作品に仕上げている。
伊坂さんの作品の魅力は、ストーリーよりも、キャラクターと一つ一つの小さな設定を考える発想力なんだな、ということを改めて感じた作品だった。

伊坂さんの小説は、半分くらいが既に映画化されているけれど、この『ゴールデンスランバー』も近々映画化されるらしい。テレビのCMも良く見るから、配給会社もかなり力を入れているな。

伊坂さんの作品を原作とした映画に堺さんが出るのは、『ラッシュライフ』につぎ、2回目。
堺さんのちょっと飄々とした雰囲気が、確かに伊坂さんのワールドにマッチしそうな気がする。

 

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