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2009年12月19日

東野圭吾「さまよう刃」


さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)

角川グループパブリッシング 2008-05-24
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東野さんの作品は、外れがないし、作品数も多いし、ということで、しばしば読んでしまう。

「さまよう刃」は以前から気になっていたのだけれど、何度も手にとっては、本屋の棚に戻していたため、「これ、読んだっけ、読んでないんだっけ」と分からなくなり、しばらく放ってあった。

ただこれも映画化されたということで、気になったので買ってみた。
読んでいなかったようで、良かった(笑)

これは、かわいい高校生の愛娘を強姦されて殺された父親が、未成年の犯人ひとりを自らの手で殺し、もうひとりの犯人をも殺すべく、逃走しつつ犯人を捜すという話。

犯人を追う父親の気持ちが非常によく分かり、痛いけれど、でも、良い作品だった。

東野さんのこういう作品は、一ミリでもずれたら完成しない工芸作品のような感じだと思う。

逃走している父親がホテルではなくペンションに泊まるという設定と、最後のちょっとしたひねりには少し不満も覚えたけれど、それ以外は本当に完璧に組み立てられている。

なぜ父親が犯人が誰でどこに住んでいるのかをつきとめられたのか、警察はその謎になかなか迫れないけれど、この部分こそが要で、この設定を作り出したところが、まず、すごいな、と思った。

あとは、この、ちょっとうんざりするような世界を、緻密に書き出していく集中力と、努力と、筆力には、本当に敬意を払いたくなる。

吉田修一「悪人」


悪人(上) (朝日文庫)悪人(上) (朝日文庫)

朝日新聞出版 2009-11-06
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久しぶりに吉田修一を読んだ。

吉田さんは、上手く純文学とエンターテイメントを融合させている作家のひとりだと思う。

正直、芥川賞受賞作の「パーク・ライフ」を読んだときは、もう二度とこの人の本は読まないだろうな、と思ったけれど、他の本は、結構、エンターテイメントの要素もあり、おもしろく読める。特に「パレード」は、傑作。

この「悪人」は、来年映画化されるようで、文庫本が平積みされていたので、気になって買ってしまった。
大佛次郎賞、毎日出版文化賞をW受賞しているらしい。

これも非常に、純文学的にも読めるし、ミステリーにも読める作品だった。
始めに、女性が殺される。そして、犯人は誰か、ということが、色々な人や、色々な時間軸からの視点で綴られる文章によって、少しずつ分かってくる。
前半は、非常にミステリーの要素が強い。だから、先が気になって、どんどん読んでいける。
ただ、後半は、犯人の「逃避行」の物語になる。

吉田さんはやはりもともと純文学の作家だけあって、非常に描写力がある。町の様子を描くのにも、普通の作家とは違う感性を使っているように思える。だから、福岡・佐賀・長崎という場所と、それをつなぐ道とトンネルが、非常に鮮明に(行ったこともないのに)目の前に浮かぶ。

そういう描写力によって、物語は決してありきたりの陳腐な作品にはならないけれど、でも、正直私は、前半と後半の世界の変化にちょっとついていけず、バランスの悪さを感じてしまった。

買った文庫本には「映画化」という帯が巻かれ、「あの人に出会うまで、こんなに誰かを愛する力が自分にあるなんて思わなかった」という言葉が書かれている。
確かに後半のテーマはこういうことなのだろうけれど、はじめから本当にそれがテーマだったのだろうか、という疑問が残るというか......。
でもこれは、あくまで「映画」のテーマであって、小説のテーマではないということでいいのかな。
多分、吉田さんが一番描きたかったのは、人の多面性じゃないかな、という気がする。
相手によって、人はどんな人間にもなる、と。

アマゾンなどでは評価が高いようなので、私に読みきれていない部分があったのかもしれない。

湊かなえ「告白」


告白告白

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1年ほど前に話題になり、今もベストセラーであり続ける本「告白」を、遅ればせながら読んだ。

6つの短編から成っている本ですが、それぞれの短編はつながっていて、全部で一つの作品になっている。
ただ、1話目の「聖職者」が、「小説推理新人賞受賞作」ということなので、もともとは原稿用紙100枚弱の長さだった短編が完結した作品で、そこに、あと5話を付け加えていったということなのだろう。

1年ほど前から話題になっている本だから、ずっと気になってはいたのだけれど、読んでみたら、思っていたのとは大分違った。
ただ、非常にうまいし、新しいな、と思った。なるほど、こういう作品が、新人賞を獲るんだな、と納得できる感じ。でも、こういう作品が「売れる」というのは、ちょっと意外にも思えた。
なんというか、ちょっとマニアックで、コアなファンをつかみそうな感じの作品に思える。

1話目は、終了式の日、担任の先生が生徒に最後に話をする、というもの。「最後に話をするシーン」などではなく、「最後の話」そのものが作品になっている。
つまり、原稿用紙100枚近い長さが、すべて「独白」ということ。
私が不勉強なのかもしれないけれど、「独白」だけで完成する小説というのは初めて読み、すごいな、と思った。純文学ならまだ分かるけれど、「推理小説」の受賞作なのに、独白かぁ、と。
しかもアイディア以上に、それだけで読ませてしまう力量がすごい。
その「独白」のなかで、ある「事件」の話になり、その事件の犯人の話になり、その「犯人」がどうしてそういう行動に及んだかの経緯の話になり、そして、最後、衝撃の一言につながる。
「おぉ......そうくるか」という感じ。
ただ、決して後味はよくない。

2話以降は、多分1話が受賞したあと、付け足されていったものなのだろうけれど、読んでいくと、6話すべてでようやく完成する作品のようにも思える。
それも湊さんの「力」だろう。
1話ずつ、つながっているようで、前の話を潰していっているようでもある。
1話だけで世界が完結していると思うと、その作られた世界が、あとの話で崩されていく。
その感覚もまたおもしろい。

前にも書いたように、決して心地よい読後感ではないし、嫌な気分が残るのだけれど、またなにか思いついたときにこの人の本は手にとってしまうだろうな、と思う。

純粋に読者として読む場合は、好き嫌いが別れそうなので、「気になったら読んで」くらいだけれど、小説を書く人にはお勧めしたい本だ。

2009年12月 1日

2ヶ月ちょっとで3作

 9月の5連休から急にやる気になり始め、それから11月末までに、3つの小説を書いた。約50枚・80枚・90枚と。
 専業主婦時代よりもすごいペースかもしれない。
 我ながらよく頑張った。

 3つとも「広義のミステリー」を書いてみた。そして3作とも、ミステリーっぽい賞に出してみた。
 ミステリーらしきものはこれで5作書いたことになる。

 1作目だけ、エンターテイメント作家の人の添削を受けて書いたのだけれど、自分としては「殺人物」は書きたくなかったのに、気づいたら「殺人事件」にさせられていた(汗)

 2作目も途中までは添削を受けていたのだけれど、途中からどうも考え方が合わず、一人でやることにした。基本的に人の指導を受けるというのはいいと思うけれど、オリジナルの表現が大切な「芸術」の分野では、同じ人の指導を長期間受けてもいいことはないと、経験上、思うのもあり。

 ただ、今まではずっと「純文学」を目指してきて、「純文学」系の人の指導を中心に受けてきたので、「エンターテイメントしか添削しません」という今回の先生の指導は、色々刺激にもなったと思う。
 もともと芸の世界は「守破離」といわれるけれど、基本を学び、身につけたあと、それを否定し、師から離れる、というのも大切だろう。

 3作目からは、「短編」で、なおかつ「殺人が起こらない」ということを重視して書いた。
 殺人があると、それだけで「ミステリー」らしくなるのだけれど、殺人事件など事件が起こらないと、いったい何があれば「ミステリー」なのか、難しい。でも、だからこそ、幅が広がっておもしろい。
 今回、3作書いて3作とも投稿してみたのは、自分が書いているのは世の中で「ミステリー」として認められるものなのか知りたく思ったから、というのも理由。

 あと、ここ数年は、「書けばある程度のレベルのものは書けるけれど、全然うまくならず、同じところをぐるぐる回っている」という感覚があり、だからこそ、1年に1作くらいしか書いてこなかった。

 ただ、少し前に、急に自分に足りないものが何か分かってきて、「あぁ、なるほど、こういうところに気をつければ、もっと上手いものが書ける」と気づいた。
 それで、今は、書けば書くだけ絶対より良い作品が作れるという手ごたえがあるので、「大量生産」というか「大量行動」している。

 何に気づいたのか、というのは、十年近い自分の試行錯誤の結果、見えてきたものなので、ここに簡単に書くことはできないけれど......。

 ただ大きなきっかけになったのが、「小説はどんでん返しから作る」という言葉。
 これは、しばらくブログを放置しておくと勝手に入れられてしまう「小説の書き方DVD」の宣伝ページに書かれていた言葉なのだけれど(笑)
 でも、「あぁ、なるほどなぁ」と、なんか非常に腑に落ちた。

 意外とこれを意識すると、初めの方から効果的な伏線を張れたりもする。

 あと、ミステリーを書いていて思うのは、ミステリー小説を書くのって、虫食い算を作るのと似ているな、ということ。
 虫食い算というのは、簡単な例では5+□-6=3 だったら □はなんでしょう? みたいな問題。
 方程式っぽくもあるけれど、小学校3、4年生で習うもの。今は、紙を虫が食べていた、なんて経験をしている子供なんていないだろうけれど(私もそんな経験ないです!)。
 上の例は非常に簡単だけれど、難しいものは、かなりすごい。ここをクリックして、下のほうを見て!

 ここまでの問題になると、式を作るより、「どこをどう抜くか」に技術がいる。
 ミステリーも似ているのかな、って。
 たとえばAさんの視点で、10年前から時間軸に沿っていって書いたら、なにも不思議なことはないけれど、Bさんの視点で、2年前からの出来事を書くと、「どうして?」というなぞが生まれてくる、みたいな。

 ......ということで、なにを書きたいか分からなくなってきたけれど、今は、

 ・広義のミステリーを書く
 ・殺人事件は起こさない
 ・どんでん返しを大事にする
 ・「実は〇〇だった」という〇〇に、できるだけ「××の善意」という言葉が入るような、
  最後にちょっと感動できる小説にする

 このあたりを自分の約束事にして、小説を書いています。
 きっと来年当たり、今の頑張りが開花します! 乞うご期待!(笑)

 まだ今年はあと1ヶ月、まだまだ頑張ります!

 

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