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2008年12月16日

伊坂幸太郎「終末のフール」


終末のフール終末のフール

集英社 2006-03
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伊坂さんの『終末のフール』は短編集。短編だけれど、完全に 途切れてはいず、つながってもいる。
伊坂さんらしい作品だな、と思った。

あと3年で惑星が衝突し、人類が滅びるという設定で繰り広げ られる作品集。
ひねくれている私としては、重いテーマには、これくらい 斜に構えた角度から作品を書いてもらいたい......かもしれない。

ただ、短編のなかの一つ「鉄鋼のウール」は、すごい、ばしばし 正面から伝わってきた。
その作品の舞台は、キックボクシングのジム。あと3年で世界が 終わるというとき、今更キックボクシングをしている人など いないのではないかと主人公は思うが、キックボクシングの王者 は、その日も練習をしている。

ネタバレになってしまうけれど、その王者が以前インタビューに こたえた記事が出てきた、というその記事の内容がいい。

まだ惑星が衝突するなどということが発覚する前、もしあと少し で地球が滅びてしまうということが分かったら、どうしますか という問いに、その人は、今と同じ得意技の練習をする、と答え る。そして、「あと何年も生きられないのにですか?」とあきれた ように言う相手に、こう言い返す。

「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生きかたなんですか?」

......すごく胸に響く言葉だった。

この章だけは、実際にモデルになった人がいて、その人との 出会いに刺激された書いたものらしいけれど、やっぱり、 他の章と温度が違った。

2008年12月15日

本多孝好「チェーン・ポイズン」


チェーン・ポイズンチェーン・ポイズン

講談社 2008-10-30
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本多さんはミステリー作家だけれど、あまりミステリーらしい ミステリーは書かない人。
今回は、ちょっとした「どんでん返し」があって、ミステリー っぽくもあるけれど、最近、ミステリーを読みすぎなのか、 はじめの数十ページで、この「どんでん返し」は予想できて しまった......。


本多さんは、そういう構成的なものがすごいわけでもないし、 乃南さんや雫井さんのように心理描写、キャラクターの描写が すごく上手いわけでもないと思う。
でも、思わず読んでしまう。
読ませてしまう。
それって何の力だろう......?

私は純粋に、本多さんの作品は読んでいて心地いい。
それは「文体」なんだろうか? 「描写」なのだろうか?
「世界観」なんだろうか?

今回は「生きる」ということについて、真正面から捉えた 意欲作だった。
出てくる人物の一生懸命さは良かった。
もしかしたら、本多さんの魅力は、登場人物を通じて垣間 見える作者の人生に対する温かい視線なのだろうか。

 

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