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2006年9月22日

横山秀夫「出口のない海」


出口のない海出口のない海
横山 秀夫

講談社 2006-07-12
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最近映画も公開になったようだけれど、私はとりあえず本で。
映画もちょっと気になるのだけれど、市川海老蔵はなんとなく見たくないのよねぇ......ってことで。

最近、戦争の話、特にこういう特攻系のものが増えている気がするのは気のせいだろうか。私は観なかったけれど、このあいだ、「僕たちの戦争」もドラマになっていたようし(現代のフリーターが突然戦時中の特攻隊と入れ替わってしまうみたいな話だと思う)、今月で終わるNHKの朝のドラマ「きらり」も戦時中の話だった。
きっと、「不況だ、高齢化だ、大変だ!とか言っているけれど、戦争中に比べたら、ずっと恵まれているんだから、感謝して生きなさい」というようなメッセージなのだろう(笑)

この本は、やはり時代背景が違うのもあり、今までの横山作品とは違ったものの印象を受けた。ただ、途中、先が気になって結構な勢いで読めたし、そういうエンターテイメント的な書き方は横山さんの力だなぁという気がする。
でも、そういうタッチで、この題材を書くのが良いのか悪いのかは、個人個人の受け止め方かもしれない。「戦争の重い話なのに、そこまで深刻になりすぎず、今の感覚を大切にして書かれていて、楽しんで読むことができた」と言うこともできるし、「せっかくこれだけの重い題材と向き合うことを選んだのだから、中途半端な向き合い方にはせずに、もっとテーマを掘り下げて欲しかった」とも言える。どちらも正直な感想。

私が残念だと思ったのは(他の人はそう感じないかもしれないけれど)、大事な場面で視点が他の人物に移り、上手く感情移入できなかったこと。たしかに最後に死ぬ人の一人称で小説を進めるのは難しいとは思うのだけれど、一つの場面で視点が他の人に移ると、読んでいて混乱するし、混乱すると気持ちが冷めてしまう気がする。もっと主人公の「並木」の目と心に集中させて欲しかったな、という気がする。
あと、脇に何人も魅力的な人物が登場するのだけれど、それが「何人も」であるために、焦点がぶれてしまった気もする。個人的な好みとしては、もう少し主要人物を絞って、主人公との対比などを出した方がおもしろかったかな、という気がした。

でも、最後のあたりで並木がなぜ回天に乗って死のうと思っているのかを語るその言葉と、ラストは、軽く読者の読みを裏切ってくれて良かったと思う。

戦時中でもみんながみんな「お国のために死ぬのは怖くない」などと思っていたわけではない、ということが、最近の戦争物にはよく書かれるようになってきたように思う。
でも、こういう時代、「国のために死のう」と思えた人間の方が楽に生きられただろうな、という気はする。そして、そういう思想は恐ろしいとは分かっていても、一つの絶対的な価値観がある世の中というのは、ある意味で生きやすくて羨ましいなどと不謹慎なことも思ってしまったりする。
それってただ私が「自由」をもてあまし気味だと言うことで、ものすごく贅沢な意見なのだけれどね。

ま、そんなことを色々考えられたと言うことは、良い作品だったということなのかもしれない。

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