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2006年2月12日

角田光代 「対岸の彼女」 


対岸の彼女 (文春文庫)対岸の彼女 (文春文庫)

文藝春秋 2007-10
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 直木賞をとった角田さんの作品。
「結婚して子供もいる女性と、シングルで起業家の女性、同世代の二人の生き方を書く作品」ということは知っていたけれど、その説明から想像する内容とは違った、少し新しい視点を感じさせる小説で良かった。
 二人の視点で交互に語ってはいるのだけれど、子供のいる女性の視点では現在のことを、もう一人の女性の方は中学・高校時代のことを語る。今はまったく違う生活を送っている、まったく違うように見える性格の二人にも、似たような中学・高校生時代がある。そこから少しずつ道が分かれていく。でも、表面的には違う生活を送っているような二人も、心の中には重なる部分もある。......当たり前といえば当たり前。だって同世代の女性なのだから。
 でも普段、自分と違う生活をしている人は、自分とは全然違う、分かり合えない人間のように感じられてしまうこともある。
 ただ本当はそうじゃない。違う問題でも、実は似たような次元で悩んで、生きているんじゃないかと、この作品は言っているような気がした。どんな生き方を選んでも、それは選択の問題じゃなくて、その選択をどう生きるかの問題なのだ、と。
 みんな必死に頑張りながらも、なんだか頑張り足りないような気がして、自分より他の人の方がずっとすごいように感じられて、もがいている。きっと。そういうもがきをよくとらえた作品だったように思う。
 結局人間、どんな選択をしても、後悔するんだろうな。本当に文句なく「成功者」と言える人なんて、この世の中には本当にわずかしかいないのだから。
 でも今の自分も、今自分の側にいる、決して完璧ではない人間も今よりほんの少し好きになれたとき、世の中はもっと生きやすく、明るいものになるのかもしれない。
 そういう「今」から抜け出す光のようなものも最後感じられたのは良かった。

 ただ、構成などの面から言えば、シングルの方の女性の今の視点がほとんどなく、最後だけ出てくるようなものなので、そこがちょっとバランス悪く感じられてしまった。最後、無理矢理ハッピーエンドにしようとしたところも感じられたし。でも、これくらい分かりやすく感情を書き、わかりやすくハッピーにしなければ、読者は満足しないのかもしれないな、などということも思った。
 そのあたりのバランスは難しい。感性や価値観の問題でもあるし、世の中の需要の問題でもあるのだろう。

 ということで、悪くはない作品だったけれど、角田さんの作品の中では、私は「空中庭園」などの方が好きかな。「対岸の彼女」はちょっと重く暗い部分が多くて少し息苦しさも感じてしまったので。
 ま、これは好み。柳美里の作品を好んで読む人もいれば、私のように受けつけない人もいる、という程度のね。

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