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2006年2月27日

「県庁の星」


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桂望実

東宝 2006-10-27
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最近けっこうミーハーな映画を見ているなぁ。
 感想は、まぁ無難におもしろい、って感じかな。テーマはとてもよく分かるし、そこそこ楽しめる。ただエンターテイメントにするには、あそこまで分かりやすくしないといけないんだろうか......という感じがした。
 初めの方はいいんだけれど、一つのことをきっかけに、物事がどんどん良い方向に進み、ハッピーエンドに向けて加速する。そういう分かりやすいハッピーエンドは見ていて気持ちよくはあるし、休日の娯楽としてはこれくらいがちょうどいいって感じもあるのだけれど......でももうちょっと気恥ずかしくならないようにできないものなのかなぁ、とひねくれて考えてしまった。
 ただそれ以外の細かい設定などには、あぁありそう、というふうに思わせるリアリティはあった。公務員は楽でいいよなぁ、税金使ってさ~、とかよく言われるけれど、言われる公務員も大変なんだろうなぁ、と同情してしまった。知り合いの公務員を見ていても大変そうだっていうのもあるんだけれど。
 スーパーも、実際のスーパーが閉店してからそこを借りて撮影したということで、スーパーの冷蔵庫は閉店後はあんなふうにビニールのシートをかけるんだぁ、ということなど、細部に感心した(感心したというより、トリビア的、「へぇ」って感じかな)。
 ってことで、一人でじっくり腰を据えて見るものでもない気はするけれど、予定のない休日、仲の良い友人や家族や恋人とポップコーンでもばりばり食べながら?見るにはちょうどいいかも。おもしろくはあるよ。

2006年2月22日

小林正人さんの展示

たまたま足を運んだギャラリーでそこの絵や作品を気に入るということは時々あるけれど、こんな風にずっと名前を覚えていて、展示があると知ってわざわざまた出向いてしまうという情熱は私には珍しい。
まぁ、それくらい、前回の小林さんの絵との出会いは衝撃的だった。こんなに人の作品が自分の内部に染みてくることがあるのだ、という気づき。
そのころ(一昨年の9月)、小説もちょっと行き詰まって何を書いたらいいか分からなくなっていたし、他にも色々悩むこともあり、けっこう消耗していたのだけれど、小林さんの絵に出会い、小林さんの文章を読み、あぁ、小説を書きたいと思った。
小林さん自身やその作品がそのままモデルになっているというわけではないけれど、そこで得た気持ちや感覚、エネルギーによって生まれた作品が一つある。それが昨日ちょうど、ある賞の一次選考を通ったと知った。

今回の展示は小さい作品が多かった。でも、天使を感じさせる優しく繊細な線が印象的だった。

ただ!!
今回も前回もSHUGOARTSというギャラリーでの展示だったのだけれど、なぜあそこの人たちはあんなに無神経で、無愛想なんだろう。それはもう、悲しくなるほど。
前回行ったときから移転していたのだけれど、サイトの地図はいい加減だし、前回も今回も迷った......。今回の場所は、運送会社の倉庫を通って、いかにも搬入用というエレベーターに乗って行くようなところ。まぁそれはいいんだけれど、わかりにくい場所にあるんだったら、もっと分かりやすく場所を説明してくれよと思うし、どうにかこうにか五階にたどり着いても、ギャラリーは扉が閉まっている。しかもどう開けたらいいのか分からない凝った作り。とりあえずライトはついているのだから、入ってもいいのだろうかと、びくびくしながら入ると、無表情のお姉さんが座っている。目があったので、入ってもいいのでしょうかと聞こうとするが、なぜかつんっとそっぽを向かれる。なんなんだ~、と思いながらも、止められないのだから見てもいいということだろうと、こっちも開き直ることにする。
すると、絵を見ている五分くらいのあいだになぜかどんどん受付にギャラリーの関係者らしき人が集まってきて、五人ぐらいでにぎやかに話し始める。壁や天井はコンクリートだから、それがまぁよく響き渡る。ゆっくり絵を見る環境じゃないって......。
前回も受付の人が超無愛想だったし、途中で裏方っぽい格好をした男の人が入ってきて、二人でべらべら話し始めた。
いったい......。
色々なギャラリーに行ったことがあるが、こんなに嫌な思いをしたのは初めてだった。
入場料を払ってもいいから、もっといい環境で見たい!!


と、とっても消化不良だったので、そのまま歩いて現代美術館に行く。そこの常設店に小林さんの作品が一つあるという情報だったので。
一階に「一室」と言っていいような独立した空間があり、そこに一つ、大きめの作品が飾られていた。
本当、良かった。小林さんの作品は、この黄色とオレンジの色合いがいい。そこにあるのは色の微妙な変化と、ぼんやりとした輪郭だけで、だから何の絵とは上手く説明できない。ただその分、直に感覚とか感情がわき起こってくる感じがする。
変な説明だけれど、小林さんの作品を見ているときの感情は、切ない恋心に近い。すごい憧れの人を前にして、もどかしいほど言葉が出てこない。でも、自分の方を向いてくれなくてもいいから、ただそばにいたい、と思ってしまうような感じ。

とりあえず、現代美術館に企画展を見に行くことがあったら、是非常設展の一階、展示室2にある、オレンジ色の絵を見てください!!とだけ声高に叫んでおきます(笑)

2006年2月20日

三崎亜記 「バスジャック」


バスジャックバスジャック

集英社 2005-11-26
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「となり町戦争」でデビューした三崎さんの二作目の本。短編集だし、それぞれ長さもまちまち、世界観もバラバラで、一冊で一つの話になっている「となり町戦争」に比べると、少し読むのに苦戦した。
 視点などはおもしろいし、テーマも感じられる。ユニークな作家だと思う。ただまだ発展途上という感じがしなくもない。型にはまってしまってもつまらないけれど、もう少し三崎さんのワールドというものが固まってきたら、もっと読みやすく、おもしろくなってくるのでは、と勝手に思った。

 短い話は、星新一を思わせる作品だった。意味が分からないまま話が進み、ところどころでくすっと笑え、そして最後に不気味な印象だけ残る。一番初めの「二回扉をつけてください」などはそんな感じだった。
 一番心に残ったのは「動物園」かな。これは「中編」くらいの長さはあるから、途中少しだれてしまったところもあったけれど、動物のイメージとか、主人公の心とか、きちんとつかまえることができた気がした。
 この本は、発表された順に並んでいるようだし、最後の二作がその「動物園」と、似たように情緒的な「送りの夏」なので、作者はこういう方向に進んでいるのかもしれない。だったらまた次の作品も読んでみたいな、と思えた。
 この人は、発想はエンターテイメントだけれど、書き方は純文学に近いものがあるような気がする。そのバランスの取り方も、今後見守っていきたい要素。
 ......と、なんか偉そうに書いちゃった(笑)

2006年2月17日

東野圭吾 「容疑者Xの献身」


容疑者Xの献身 (文春文庫)容疑者Xの献身 (文春文庫)

文藝春秋 2008-08-05
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 東野さんの名前はもちろんずっと前から知っていたけれど、ちゃんと読むのは初めてだった。
 いやぁ、この人も職人的なエンタメ作家だなぁ、と思った。感覚ではなく、頭脳で書いている感じがする。どうしたら人の心をひっぱって最後まで読ませるか、その「技術」をとてもよく分かっている人だ、というのが感想。

 私は実はあまり本にのめりこまないタイプなのだけれど、久しぶりに睡眠時間を削ってラスト、読み切った、という感じだった。
 上手いなぁ。先が気になる!
 そして、ラスト十分の一くらいでようやく、「も、もしかしたら......」という予感を抱き始め、ラストの十分の一で、その予感が本当だったということと、なぜそうしたのか、細かい部分はどうやってクリアしていったのか、それぞれの事柄にはどんな意味があったのかが分かってくる。
 私はそこまでミステリーに詳しくはないので、これが本当に新しいものなのかは分からないけれど、少なくとも私の中では新しく、とても衝撃的だった。なるほど、すごい!と思った。「気づかなかったよ」だけではなく、「なるほど」としっかり納得させるのは、ミステリーでは特に大事だと思う。

 と、もう、エンタメの点では完璧に近い評価!

 ただ、「文学」という面から見ると、どうなのだろう。それはよく分からない。
 最近小説を習っている先生が言うには、「一気に読めました、というのは褒め言葉のようであって、決して褒め言葉ではない」とのこと。そんな一気に読めるようなものは、心に残らないし、ストーリーのおもしろさだけで先を読ませているのだから、もう一度手にとって読んでみようとは思わないから、というのが理由。
 東野さんの作品は、たとえばシドニーシェルダンのような本と比べたら(中学か高校の頃は結構はまって夜遅くまで読んでいたなぁ)、結構しっかりした作品だと思う。でも、もう一度読みたいか、いつでも自分の本棚に入れておきたいか、と言われると、う~ん、となってしまう。
 読み直したくなるのは、決して読みやすくはない三島由紀夫とか、分かったようで全部が分かったわけではない小川洋子さんの作品とか、そういうものの方。
 そういうわかりにくい「純文学」は、エンタメに比べてお金にならないとは思うけれど、やっぱり私は「職人」に徹して文章を書くことはできないだろうな......。これから考え方は変わるかもしれないけれど、今はそう思う。別にエンタメの要素を完全に排除するとかそんな極端なことではなくてね。

 今回の作品も、トリックというか、謎の答えはとてもよく考えられたすごいものだった。でも、これは帯にも書いてあるけれど、人はこれほどまでに人を深く愛せるのかというのがテーマになっている。でもその愛は、この話では脇役になってしまっていないか、主役がそのトリックの奇抜さになってしまっているのではないか、という気はした。なんとなくラストの物語の決着の付け方が、こういうのもありだなと思う一方で、少し受け入れられなかったというのもあり......。
 全然比べるものではないけれど、たとえば一年後、この本と「ミュンヘン」とどちらが心に残っているかと聞かれたら、「ミュンヘン」の方が心に残っているのではないかと思う。......そういうところで、自分はまだ、作品を書く上で何を一番重要視したいのかが分かっていないのかもしれない。だから迷うのかもしれない。......なんてことを思った。

 と、いつものごとく脱線しまくったけれど......
 この本は、本当におもしろいし、良くできた本だと思います。お勧めです!

2006年2月16日

「ミュンヘン」


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1972年、ミュンヘンオリンピックで11人の選手が殺された。パレスチナのテロ組織の犯行だった。それに怒ったイスラエル政府は極秘に人を集め、そのテロ行為に関わった11人を殺すよう指示する。
主人公とその仲間五名は、ヨーロッパ中に散らばったその11人を探し求め、次々に殺害していく。


という、映画。

いやぁ......暗い。暗い。暗い。
そして長い。
3時間、あの世界はつらい......。人はどんどん血を流して倒れるし、爆弾で吹き飛ばされるし......。そして主人公は苦悩し続ける。
正直、見ていて疲労困憊した。

ただ、それが一番の印象なのだけれど、でも、いい映画ではあった。なんていうのだろう、「良質な作品」という感じ。
見ているあいだは、息苦しく、つらくても、心の中に消えない何かをしっかり刻みつけられる作品だと思う。死の表現にしても、単純ではない。派手なアクション映画とはまるで違う、リアルな肌触りと心の動きがある。......まぁ、だからこそ見ていてつらいというのもあるのだけれど。


何かを表現して人に伝えるというのはどういうことなのか、考えさせられた。
もっと見るものを飽きさせないようにする工夫はいくらでもできただろうと思う。同じ内容をもっとエンターテイメント性を持たせて描くこともできるはず。
でも中途半端にそういう方向に走らず、徹底的にこういう世界で描ききったというところに、この作品に価値はある気がした。
なんというのだろう、下手に人にこびない分、しっかり伝えられるものがある、という感じ。
あぁ、表現って小手先の技術ではないな、という気がした。とても。

そういう意味ではとても勉強になり、良かった。

あと内容に関して言えば、「あきらめること」も時には大切なのかもしれないということを感じた。前の書き込みとはまったく違う内容だけれど......。
宗教のせいといえばそれで片づけられてしまうけれど、結局イスラエルとパレスチナが一つの地理的にはさして豊かでもない地を求め、争ってしまうのは、その地こそが故郷だ、とりかえせねば、という長い年月をかけた「教育」の成果なのだろう。
外から見ると、その場所さえあきらめたらもっと他の幸せが手にはいるだろうに......と思ってしまうけれど、本人達は、それが手に入らなければ、生きていることになんの意味もないというくらい思い詰めてしまっている。
それが、言葉は悪いかもしれないけれど、かわいそうに思えた。

一人のイスラエル人が言う。故郷(home)は絶対に必要なのだと。
それと意図的にリンクされた言葉なのかは分からないけれど、最後の方で、一人の男が主人公に言う。美しいキッチンのショールームの前で。この任務を果たして、大金を手に入れられたら、こういう大きなキッチンも手にはいるよ。家(home?)を手に入れるにはお金がかかるのさ、と。
でもようやく家にたどり着いた男に妻が言う。ただ、この家のキッチンは少し広すぎるわ、と。

まぁ、そういう「純文学」的な作品だった。
つらいことはつらいけれど、見て損はないような気もする。という微妙な勧め方しかできないけれど、気力のあるときに是非、どうぞ(笑)

2006年2月12日

角田光代 「対岸の彼女」 


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 直木賞をとった角田さんの作品。
「結婚して子供もいる女性と、シングルで起業家の女性、同世代の二人の生き方を書く作品」ということは知っていたけれど、その説明から想像する内容とは違った、少し新しい視点を感じさせる小説で良かった。
 二人の視点で交互に語ってはいるのだけれど、子供のいる女性の視点では現在のことを、もう一人の女性の方は中学・高校時代のことを語る。今はまったく違う生活を送っている、まったく違うように見える性格の二人にも、似たような中学・高校生時代がある。そこから少しずつ道が分かれていく。でも、表面的には違う生活を送っているような二人も、心の中には重なる部分もある。......当たり前といえば当たり前。だって同世代の女性なのだから。
 でも普段、自分と違う生活をしている人は、自分とは全然違う、分かり合えない人間のように感じられてしまうこともある。
 ただ本当はそうじゃない。違う問題でも、実は似たような次元で悩んで、生きているんじゃないかと、この作品は言っているような気がした。どんな生き方を選んでも、それは選択の問題じゃなくて、その選択をどう生きるかの問題なのだ、と。
 みんな必死に頑張りながらも、なんだか頑張り足りないような気がして、自分より他の人の方がずっとすごいように感じられて、もがいている。きっと。そういうもがきをよくとらえた作品だったように思う。
 結局人間、どんな選択をしても、後悔するんだろうな。本当に文句なく「成功者」と言える人なんて、この世の中には本当にわずかしかいないのだから。
 でも今の自分も、今自分の側にいる、決して完璧ではない人間も今よりほんの少し好きになれたとき、世の中はもっと生きやすく、明るいものになるのかもしれない。
 そういう「今」から抜け出す光のようなものも最後感じられたのは良かった。

 ただ、構成などの面から言えば、シングルの方の女性の今の視点がほとんどなく、最後だけ出てくるようなものなので、そこがちょっとバランス悪く感じられてしまった。最後、無理矢理ハッピーエンドにしようとしたところも感じられたし。でも、これくらい分かりやすく感情を書き、わかりやすくハッピーにしなければ、読者は満足しないのかもしれないな、などということも思った。
 そのあたりのバランスは難しい。感性や価値観の問題でもあるし、世の中の需要の問題でもあるのだろう。

 ということで、悪くはない作品だったけれど、角田さんの作品の中では、私は「空中庭園」などの方が好きかな。「対岸の彼女」はちょっと重く暗い部分が多くて少し息苦しさも感じてしまったので。
 ま、これは好み。柳美里の作品を好んで読む人もいれば、私のように受けつけない人もいる、という程度のね。

 

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