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2005年12月30日

嶽本野ばら 「シシリエンヌ」


シシリエンヌ (新潮文庫)シシリエンヌ (新潮文庫)

新潮社 2008-05-28
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12月25日、クリスマスに旦那さんをほっぽり出してサイン会に行ってきました。なんていうのか、ちょっとした仕草や対応、言葉から、気遣いのあるいい人だということがにじみ出てきている。サインしてくれるだけじゃなくて、一人ひとりと握手をして写真を撮ってくれたり、カメラがデジカメだと、一緒にモニターを覗きこんで、「これで大丈夫?」とかチェックしてくれる。うむ~、いい人だぁ。
 ただまわりに、感極まって泣いている人が何人かいたが、その気持ちはちょっと分からなかった。そんな有名人に恋いこがれられるほど私も若くないってことか......(^^;)

 と、野ばらさん本人のことは今でもとっても魅力的だと思うのだけれど、作品からはちょっと気持ちが遠ざかり気味かなぁ。今までの作品はエッセイ以外全部読んだけれど、やはり初期の作品のような浸れる世界が今は感じられない。
 今回は「挑戦」的な意味も含めて、かなり「官能小説」という感じの中身だったのだけれど、それが問題だということではなくて、以前あった、今にも切れそうな繊細さとか差し迫った痛みみたいなものが消えてきた。
 ある程度大人になってから小説を書き始めた人の中には、幸せになってしまうと書くべきことがなくなって書けなくなってしまう、と言う人がいるけれど、もしかしたら野ばらさんもそうなのかな。今の、ファンというたくさんの理解者がいる環境は、「幸せ」な状態で、だから、「自分のことを分かってくれるのはあなただけ」という、野ばらさんの世界をささえていた閉塞感みたいなものが、どこか作り物のようになってきてしまった。......そんな感じかと。

 まぁ、デビューもできていない「自称」作家が偉そうなこと言えたものじゃないのだけれど、でも、ファンとしては、もうちょっと書くペースを落として、初期の頃の質の作品がまた読んでみたいなぁ、と思ってしまうのです。「エミリー」を初めて読んだときの感動をもう一度!です。
 今回の作品は、やっぱり性的な描写は、男の視点だなぁ、と感じさせたし(まぁ、正常に男の人の感覚で良かった、という部分もありますが......)、ストーリーや設定が強引で、唐突で納得できなかったり、つっこみをいれたくなった。Hな描写も、服の説明も、もっとずっと削っていってしまったほうが、本当に書くべき核には近づけるのではないか。......と思うのだけれど、どうなんだろう。
 電話で、野ばらさん本人が「シシリエンヌ」について語っているのを聞けたらしいけれど、気づいたら28日までだった。あ~、聞きたかった。多分、もっと説明を加えてもらえないと、野ばらさんの意図はくみ取りきれない。
 最後、「貴方」のとった行動は、言葉で説明されて頭では分かっても、腑に落ちない。だから共感できず、消化不良な感じがする。もっと行間から、余白から伝わってくる想いとか悩みとか苦しみとか悲しみが欲しい。大学時代、三田誠広先生に「小説では、孤独という言葉を使ったら終わりです。孤独という言葉を使わずに、孤独だと伝えることが小説です」と言われたことなども、最後の方、思い出したりした。野ばらさんは太宰治の影響を受けている人だから、ストレートな感情の吐露もいいのかもしれないけれど、私には、「何か違う......」と感じられてしまいました。
 きっと個人的な好みなんだろうけれど......。あ"~。(笑)

2005年12月29日

「秘密。―私と私のあいだの十二話」

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 吉田修一さん、小川洋子さん、森絵都さん......など十二人の作家さんの短編集。<br /> しかもそれぞれの話がA-side、B-sideという感じの2つの視点で描かれている。つまりは12×2の24話も詰まった短編集ということになる。<br /> さらりとよめてお洒落。モノクロの写真もところどころ散りばめられているし、気軽に読むには最適。<br /> <font color="#339999">一人の視点で物語が始まり、その人の中でその話は終わるのだけれど、その続きやその同じ時間をもう一人の人物があとから語り始める。<br /> なるほど、このときのこの人の行動の背景にはこんなことがあったのか、と分かる。そんな仕組み。</font><br /> 忙しいと自分のことで精一杯になってしまうけれど、関わる相手にも同じくらいの重さの生活なり過去なり人生があって、出会いっていうのはそういう重さを持ったもの通しの接点なのだなということが伝わってくる。<br /> 短編だからさらりと読める。でも、いい作品はきちんと心によい余韻を残す。印象に残ったのは森絵都さん、伊坂幸太郎さん、吉田修一さんの作品。他に上手いなぁと思ったのは佐藤正午さん、堀江敏幸さんの作品かな。あざとく狙ったものより、さらりとした感じのものの方がやっぱりうまさは感じる。<br /> 正直、一編一編がもうちょっと長い方が世界を味わえたのでは、と思うけれど、色々な作家の人の持っている世界をちょっとずつ味わえるこういう本も、たまにはいいな、という感じでした。<br />

2005年12月28日

藤原正彦/小川洋子 「世にも美しい数学入門」


世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

筑摩書房 2005-04-06
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 結構時期を逸してしまった感じですが、ようやく読みました。読み始めたら1日で読めた。
 この本は、「博士の愛した数式」を書いた作家の小川洋子さんと、数学者の藤原正彦さんが対談したものをまとめた本。藤原さんが数学者や数学・自然の摂理の美しさについて語っている。
 数学って素敵だなぁ、というのが一番の感想。「博士の愛した数式」での数式や数の扱い方も素敵だったけれど、数学や数式自体がこんなに「美しい」ものだったとは。

 藤原さんはしきりに、神がこの世をつくったから、このように美しい数式になる法則が至るところにあるということを言っているが、そうかもしれない、と思わせられる。
 私は中学までは算数・数学が好きで、自分は絶対に理系に行くのだと思いながら、高校でだんだんと分からなくなってきてしまい挫折して文学部に行った経歴がある(小説を書いているというとばりばりの文系みたいに思われるけれど、国語の問題を解くよりは今でも算数を解いていた方が楽しい)。
 本を読んで、数学者というのはものすごく根気のいる仕事なんだなぁということは分かったけれど、素数の現れる法則を美しい方式として完成させるということに人生を捧げるっていうのも素敵だよなぁ~、なんて惹かれてしまう自分もいた。
 でも、「三角形の内角の和は180度」という公式をただ丸暗記して、感動もなく使っているようでは、ダメかな......。

 あとがきで藤原さんが書いていた言葉を引用。
--しかし、はたして人間は金もうけに成功し、健康で、安全で裕福な生活を送るだけで、「この世に生まれてきてよかった」と心から思えるだろうか。「生まれてきてよかった」と感じさせるものは美や感動をおいて他にないだろう。数学や文学や芸術はそれらを与えてくれるという点で、もっとも本質的に人類の役に立っている。--
 数学は物理と違ってすぐに役立たないところに価値があるとずっと言っておきながら、あとがきでこの言葉、なかなかいいです(笑)

 この本の中で出てきたもので一番感動した数式はこれ。
N=(2×3×5×7×11×13......P)+1 (Pは一番大きな素数)
という式を考えると、NはPより大きい素数であるから、素数の大きさは無限だということが証明できる、と。
うわ~、すごい!!
感動しません? どうですか?(誰に問いかけているか分からないけど(笑))

2005年12月27日

Hipolito Bernard「アメリ」


アメリアメリ
Hipolito Bernard

リトルモア 2001-10
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 これは映画を本にしたものなのかな。
 ずっと友達から借りていて、明日久しぶりにその友達に会えることになったので、あわてて読んでみました(笑)
 アメリの映画を大分忘れてしまっていたからか、新鮮な気持ちで読み直せた。最近通っている小説の講座の先生には、「映像化できることだけ書け」ということをしつこく言われている。彼女は頑固だったとか書く代わりに、頑固だと分かる具体的な行動を書くとか、僕は動揺したと書く代わりに、手に持っていたものを落としたところを書くとか(これはベタすぎていまいちですが......)。で、最近そういうことを結構考えて読んだり書いたりしているので、「アメリ」は、上手いなぁと感心してしまった。一つ一つのエピソードがどれも奇抜で、でもなんだか温かくて、心に迫ってくる。
 映画を見たときは、オドレイ・トトゥのかわいさとか、映像のきれいさとか、音楽の良さとかに浸ってしまい、テーマなどあまり考えずに、楽しんだ感じだったけれど、本で改めて読むと、あぁ、アメリっていうのは生い立ちのせいで上手く人と関わることができなかったけれど、そういう子がちょっとしたきっかけで人とつながることを覚え、変わっていく話なのだなぁ、ということが分かり、良かった。
 正直文章は、映像をそのまま文章に置き換えた、というような、「小説の良さ」はあまり感じられないものだったけれど、映像のリズムに流されないで作品全体をしっかり見つめるためには良かったな、と思う。
 映画もまた見たいな。

2005年12月14日

「大停電の夜に」


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角川エンタテインメント 2006-05-12
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久しぶりに映画を見に行ってきた。
「闇」の表現がきれいだという話で、キャンドルに彩られたシーンをテレビで見てその美しさが印象に残っていたから。
実際、映像の美しさという点では満足できる映画だった。
役者もなかなかいいし、細部の見せ方が良かった。演出の上手さかな。
東京が「大停電」になったらそれはもう大変な「天災」って感じだけれど、そこに重点をおかず、暗闇の中でむきあう一人一人の人間に視点を置いているのが良かった。

テレビも明るすぎる電灯もないところで、静かに大切な人と向き合う時間を持ちたい、そう思えた。キャンドルの光のもと、などというロマンチックなものではなくても、ただテレビとパソコンのない部屋で向き合うことさえできたら、いつもと違う相手のことが見える気がするのにな。でも、それさえ普段は難しい。......それは自分自身の反省も踏まえての言葉だけれどね。

映像の美しさとイブの雰囲気を味わうというのが目的ならこの映画はおすすめ。
ただストーリーや大きな流れでは、なんじゃこれ、と感じさせるところも......。
色々な人の話がからみあって一つの世界を作り上げているというのはいいのだけれど、変に関係のない人たちを最後のほうで出会わせたり、ご都合主義なところがたくさんあるし、主要な人物の心の動きや行動に納得いかないところが多かった。
あ~もったいない! という感じ。

せっかく細部と映像がいいのに、ストーリーだけ取り出したら、三流のお笑いだよ。三谷幸喜のドラマや芝居がおおごけしたというような印象。
結局、愛とは積み重ねた時間だということなのだろうか。うなづけるところもあるけれど、それだけでまとめられないような内容だった気も。

私の隣は20代半ばくらいのカップルだったけれど、男のほうはあくびをしたり、退屈そうだった。そして終わったあと、「これなら遊んでいたほうが良かったね」と言っていた。
カップルで見ることを薦めているような映画だけれど、実際は男には退屈なのかもしれない。

ただ私は、納得できない気持ちを残しながらも、最後はなんとなくあたたかい気分になれたし、とにかくきれいな映像を見れて満足でした。
久しぶりにお台場の映画館で見たのだけれど、帰り道、ゆりかもめから夜景がきれいだったしね。
映画とは関係ないけど......(笑)

 

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