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2005年11月19日

河崎愛美「あなたへ」


あなたへあなたへ

小学館 2005-04
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 15歳で小学館文庫小説賞を獲り、一時期騒がれていた子の作品を読んでみた。
 最近、そういう若い子の作品を読む機会が多いけれど(やっぱり話題になるから気になって手に取っちゃうのかな)、「???」と思っても、それは世代が違って理解できないんだとか、色々冷静に考えて、できるだけいいところを探すように努力している。
 でも、さすがにこれは、誉める気になれなかった。どこがいいのかさっぱり分からない。

 なんていうんだろう......一方的すぎて引く。まぁ、私はそもそも、恋愛における勘違いみたいなものに冷たい。そんな、世の中、あんたを中心に回っているわけじゃないのよ......と、つっこみをいれてあげたくなる。
 まぁ、この作者は子どもだということで、まだ救いがあるのだけれど、一方的に人を想って、運命の人だと何の根拠もなく突っ走り、運命の人だったわりに、親しくなるわけでもなく死んでしまうのは......どうなんでしょう。
 ダメだ......本当に、私にはこの良さが分からない。

 文体とか書き方は、確かに若い子らしい、透明感があって、それはいいかなという気はする。ただその分、浅いし、こういう作品においては描写が命の気がするけれど、感情ばかり追うあまり、シーンの描写の比率が下がっているようにも感じられる。相手の男の人の人格もまったく見えてこない。
 あと一番理解できないのは、取材で堂々と「ポルノグラフィティが好きで、影響を受けました」と言っていたけれど、その歌詞をそのまま使っていたりすること。私もポルノは好きで、一時期ベストアルバムを流し続けていたので、結構歌詞も覚えているのだけれど、それがまったく同じ形で出てくると、なんかそこで引いてしまう。作り物くささを感じて。たまたま選考委員や下読みの人がポルノをあまり知らなかったのだろうな......。受賞は最終的には「運」ということか......。

ただ、まぁ、本当に、この作品を認める人もいるのだろうから、最終的には私の「個人的な意見」です。

2005年11月10日

青山七恵「窓の灯」


窓の灯 (河出文庫 あ 17-1)窓の灯 (河出文庫 あ 17-1)

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今年の文藝賞受賞作品の片方を読んだ(最少年齢で受賞、というのではない方。それでも、20代前半だけれど)。
「すばる」や「新潮」やいくつかの受賞作を立ち読みして、一番惹かれたのがこの作品。
内容や登場人物など以前に、ぎゅっと読者を引っ張る力が文章(文体?)に感じられて、思わず衝動買いしてしまった。こういう力は、やっぱり純文学では大切。二年ほど前、「すばる」を獲った栗田有起さんの作品も、ちょっと読んで気に入ってしまったのだけれど、純文学系の作品の場合は、そういうことがある。ストーリーとか終わり方とか関係なく、ただ「なんかいい」と、初めや途中の文章をちょっとだけ読んで「力」を感じる。

まぁ、この作品は「ストーリーとは関係なくいい」というのの最たるもので(?)、後半~ラストはよくわからず、ぼやけたままだった気もする。特に何が起こるわけでもなく、淡々としている。終わり方も分かるようで、でも曖昧。難解っていうわけでもなく、曖昧。
でも、そういう淡々としたものの方が、文体とか、ちょっとした目の付けどころとか、表現の良さというのは目立ってくるのだろう。純文学とはいえ、ストーリーや設定が破綻していてはいけないのだけれど、そこで変に気負わず、なんてことないことを、できるだけ「個性」で書いていけたらいいな、と、これを読んで、久しぶりに思った。最近は、もっと「エンタメ」的な要素のあるものを書きたいとか思い始めていたのだけれど。
選評では、「書き続けていかれる力のある人」だと評価する人がいる一方、「これは女性側がのぞき見をするところが新しい」などと設定を誉めている人もいた。でも、これは別に女性がのぞき見をするからいいっていうのとは全く違う次元の話の気がするけどな......。「何を書くか」ではなくて「どう書くか」で勝っている作品。ただやっぱり、どんな作品でも、ストーリーや設定でしか評価をしない読者というのはいるのだろうし、自分は表現で勝負すると思っていても、譲歩できるところまでは譲歩して、色々工夫を凝らすといいのだろうか。でもそうすると、中途半端になっちゃいそうだしな......などと、またいつもと同じところを思考が循環してしまうのでした。

2005年11月 9日

「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」

 六本木ヒルズで催されている「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」に行ってきました。「レスター手稿 日本初公開」ということだったので。平日の昼間でも混んでいましたが、なかなか興味深い展示でした。

 レスター手稿の内容は、天文学、流体力学、地球物理などを中心とした幅広い分野で、地球と月と太陽の位置関係についてだとか、水紋の広がり方、水流に障害物のあるときの水の流れ方、効果的な治水の方法などが細かい鏡面文字と緻密なイラストでぎっしり書き込まれていました。
 レスター手稿自体は、見てもさっぱり読めないのだけれど(あれは、何語なんだろう......(^^;))、ダ・ヴィンチの思考の流れなどを、スライドや実験装置などで説明するような展示方法で、興味が持てました。
 ただ、分かりやすく説明されていても、それでも「どういう意味??」と頭が「?」でいっぱいになってしまうような、難解な部分もたくさんあった......かな。
 私がばりばりの文系人間で、理系の話にはついていけなかった、というだけかもしれないけれど、それでもやっぱり、ダ・ヴィンチがすごい「天才」だったということだと思う。だってそれから500年以上も経ち、学校で当たり前のように地球は丸くて、太陽のまわりを回っていると習ったような人間に、「え~、そうだったんだ」とか「それはどういうことなの?」とか思わせてしまうのだもの。すごいとしかいいようがない。

 と、まぁ、何を見ても、「天才だったんだねぇ」というところで完結してしまいそうになってしまったけれど、ただこの展示から学んだのは、どんな物でもよく見れば、表面的な意味以上の深い意味や、もっと広い範囲で応用のきく法則を伝えてくれるのだ、ということ。そして、そうやって物を見られたら、どんなときにも決して退屈を感じることなどないのだろう、ということ。身近にある物を、ぱっと見て分かった気になったらいけないな。そう、ダ・ヴィンチが繰り返し繰り返し書いていた水の流れのスケッチなどを見ながら思った。
 あと、もう一つ思ったのは、様々なことを広く知っていくと、それはいつかお互いにつながり合い、「広い知識」はいずれ「深い知識」になるのだろう、ということ。ダ・ヴィンチは、人の美しい巻き毛を描きながら、海にできる激しい渦のことを考えていた、などというスライドを見て、そんなことを考えさせられた。

 本当、凡人には「はぁ」とか「へぇ」とかいうような感想しかもてないほど、なんだかすごい世界なのだけれど、それでも、上手く整理できない、「刺激」といったものは確実に感じられると思う。
 13日までで終わってしまうので、時間はもう限られているけれど、夜の10時までやっているようなので、時間と興味のある人は是非行ってみて下さい。

 

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