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2005年7月24日

「下妻物語―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件 (完)」嶽本 野ばら


下妻物語・完―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件下妻物語・完―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件

小学館 2005-07
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二週間前、また渋谷リブロまでサイン会に行ってしまいました。そして野ばらさんは、やはり素敵でした☆
 が、この本は......ちょっと残念。いや、ちょっとじゃないかも......。「下妻物語」自体がとても良かっただけに、ただそこで作ったキャラクターを自分でパロディーにしてしまったのだろうか、という気がした。

 でもそれはこの小説が中途半端に「殺人事件」だったため、それなりの展開やストーリーの起伏を期待してしまったのが間違いだったというだけかもしれない。もしかしたらこういう本の楽しみ方を知っている人もいて、私には読みこなせていないというだけかも。実際、ネットで調べてみると、好意的な意見が多いし。(でも野ばらさんにはコアファンが多いから、何を書いても許される空気もあるのかな?)
 野ばらさんの筆力は、シリアスなところに上手く笑いを取り入れたり、盛り上がっているところをわざと台無しにしてみたりするところにもあると思うのだけれど、今回はちょっとそれもやりすぎな感じがした。あと、初めの方は「下妻物語」の説明のためのあらすじになってしまっているように思えたのも、読みづらく感じた要素かも。続き物とか連載って難しいとは思うけれど、「以前の話を知りたかったら前の作品を読め!」ってくらいの強さがあってもいいのではないかと私は思ってしまった。
 ラストもちょっと強引な気はしたけれど、ただ、桃子とイチゴの友情というか、愛情はひしひしと感じられたので、そこだけは良かったかな。女には描けない、女同士の素敵な関係がそこにはある、って感じ。こんな親友がいたらいいよなと思う。
 まとめは......文学として読むと、どうして「エミリー」ほどのものを書ける人がこんなものを書くのだ?!というもどかしさがあるのだけれど、コミック感覚で読めば、おもしろいことはおもしろく、エンタメとしては価値有りです、というところでしょうか。
 今回の感想は自分でもちょっと自信なさげ......(笑)

2005年7月22日

恩田陸「ネバーランド」

「夜のピクニック」が本屋大賞になり、今話題の恩田さんの本を初めて読んでみた。
恩田さんを紹介する文章にはいつも「幅広いジャンルを......」と書かれているから、多分恩田さんという作家を理解するには何冊も本を読まないと分からないのだろうけれど、まぁ、まずは第一歩。

これは、寮に冬休みも残った3人+1人の男子高校生の物語。それぞれが家に帰れない家庭の事情を抱えていて、それをちょっとしたきっかけで話し始める、という内容。
その語る内容自体は重いけれど、本自体のテイストはそれなりに爽やかで、「青春小説」という感じがする。
この一冊を読んで恩田さんに持ったイメージを一言でいうなら、「読者を楽しませる力をもった作家」というふうになるだろうか。
正直少し話が作り物っぽすぎて(いかにも女性が想像した理想の男の子像なのよね......。だから少女マンガかなにかを読んでいる気分になる)、文学というには薄い感じがするのだけれど、こういうのがエンターテイメントなのかもしれないな、と学ぶところも多かった。

それから「あとがき」がちょっとおもしろかった。
「(寮生活を送っていた男性に話を聞いたが)あまりにも美しくない実体に、参考にはしないことにした」
「書く前に4人の少年達の性格づけをしていたつもりだったのに、4人を完全に把握できたなと思ったのは四日目を書いているときだった」
「この小説は、私にとって個人的に重要な小説だと思っている。私が将来、もう少し成長した時に書きたい小説の原型になりそうな予感がする。この小説を直している時、もしかすると小説を書くことは面白いのかもしれない、と初めてほんの一瞬ちらっと感じた」
普通あとがきには書かないよなぁと感じられる正直な思いを書いているのを読んだとき、なんとなくこの作家は信頼できる人かもしれない、なんて思ったりした。
確かに4人少年はそれぞれいいものを持っていそうなのに、キャラが結構かぶっていて、それぞれを把握しづらい。全員あなたの好みなんでしょ?!と言いたくなるくらい......。でも、それを作者にはっきり言われちゃうとね......。
このあとがきを読んで「そんな中途半端な形のものを世に出してプロとしてどうなんだ」と思う人もいるかもしれないけれど、私は逆にあっぱれだなと、許せてしまった(笑)

とりあえず恩田さん、ちょっと気になったので、また読んでみたいなと思う。
デビュー作も読みたいけれど、ホラーは苦手なので、微妙だなぁ。

2005年7月21日

「モディリアーニ」


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ピカソと同時代の画家・モディリアーニの生涯を描いた映画。
 現実的には、私は芸術家タイプの男が嫌いなのだけれど、フィクションの世界では美術系の男の人に惹かれる。実在の画家をモデルにした映画が上映されると大抵気になって見に行ってしまうし、小説仲間にはしばしば「また芸術系の男が出てきたよ」とあきれられるほど、自分でも好んで画家とか彫刻家とかを描いてしまう。もしかしたら私は前世、モディリアーニのような画家に惚れ込んで振り回され、死んだ女なのかもしれない(笑) だから深層心理では惹かれているけれど、現実問題としては生活力のない男には惹かれない、みたいな......。
 って、何を語っているんだ、私(笑)

 映画は良かった。大きな夢がありながらも、それを叶えるための努力を積み重ねることが嫌いなこういうタイプ、芸術家には多いのかもしれないな、と思った。彼ほど才能がなくても商売が上手で成功する人もいれば、彼のように生活は破綻していても、見る人には分かる確かな才能があって、一目置かれる人もいる、なんかよく分かった。
 実際のモディリアーニがどんな人なのか、私にはさっぱり分からないけれど、映画のなかではとても魅力的に描かれていた。あぁ、こういう人だったら、「どうしようもないな、こいつ」と思いながらも、振り回されてしまう女もいるだろう、と。この映画の魅力は、やはり一番、モディリアーニの魅力だろう。でもそれ以外にも、映像の美しさや、その時代の雰囲気を上手く伝えるセットや、飽きさせないストーリーや、色々なプラスの要素があった。
 モディリアーニとピカソは映画のなかではライバル同士であり、憎み合っているように見えるけれど、実は分かり合っている関係に描かれていて、それにも惹かれた。ちょっと素直に向き合えないけれど、実は強い友情で結ばれているのではないかという気がした。ピカソの嫌な奴だけれど、とても憎めない。このキャラクターの作り方にも才能を感じた。
 あと話の中心はやはりモディリアーニの妻、ジャンヌの存在だろう。ネタバレになるので書かないけれど、ラストを見ると、こういう生き方は端から見たら不幸に見えるけれど、本人にとっては案外幸せなのかもしれない、なんて思った。愛し方も、生き方も、人それぞれで構わないんじゃないかと、ふと思った。

 この映画は上映されている館が限られているのもあり、日比谷シャンテはぎりぎりに行くとチケットが売り切れているという状態だったけれど、観て損はないものだと思う。私はおすすめ!

2005年7月 7日

「豊饒の海-春の雪」


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新潮社 1977-07
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墓場まで一冊だけ本を持って行かれると言われたら何を選ぶと聞かれ、私の答えるのはこの本。
最近はちょっと純文学というものに愛想をつかし始め、エンタメもいいよなぁ、芥川賞なんて獲らなくても、多くの読者に愛される作家になりたい、なんて思ったり、言ったりしている私だけれど、やはり自分にとっての文学の原点は三島! そしてこの「豊饒の海」! ただ実は好きなのは第一巻の「春の雪」だけで、一巻だけは数回読んだけれど、二巻以降は一回しか読んだことがないし、内容は忘れているのだけど(笑)

で、なんで今日、この本を出してきたのかというと、またテレビで、「映画化」の話が出ていたから。
映画化は4月頃に決まっていたらしいけれど、役者が妻夫木君と竹内結子であること、音楽は宇多田ヒカルの新曲になるということを今回初めて知った(ちなみに監督は行定勲監督)。

役者は二人とも嫌いじゃないけれど、あまりにこの小説に対する想いが強くて、誰を選ばれても受け付けられない気がする......。特に宇多田ヒカルの横文字のタイトルの曲が主題歌だなんて......と、そこでまた反発。
いつ公開になるのかは知らないけれど、多分気になって見に行って、でも気に入らなくてぶつぶつ言うんだろうなぁ、私、と今から思っている(笑)
まぁせめて三島を読んだことのない人に、「原作を読んでみたい」思わわせるような美しい作品に仕上げてもらいたいな~。と、切に思う。
そしてこのブログをなんの縁でか見に来てしまったあなたには、是非、原作を読んでくれ~!と、とりあえず叫んでおきます(笑) 結局文学って映画ほどメジャーじゃないから、本が映画化されると、本自体より映画のイメージが世に広まっちゃうところがあると思うんだよね。......それを今からちょっと危惧しています。あの世界の美しさは、絶対、三島のあの文体によってしか生まれないのに!! と、久々に熱くなりました(苦笑)

2005年7月 6日

「ミステリーの書き方」アメリカ探偵作家クラブ著


ミステリーの書き方 (講談社文庫)ミステリーの書き方 (講談社文庫)
L. トリート

講談社 1998-07
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私はミステリーは書かないのだけれど、「先を読ませる」という点で一番勉強になるのはミステリーを読むことであり、ミステリーの構造を真似ることだと思っている。
ということで、この本は気になったので読んでみた。
第十章の「殺人その他の犯罪捜査」だけ、アメリカの警察の仕組みだとか指紋の取り方だとか、ミステリーにしか使わないよなぁ......という感じのものだったけれど、その他は、「結局読者を楽しませようという気持ちにおいては、ミステリーもその他のジャンルのものも大して変わらないよな」と思える内容になっていて、かなり刺激にも勉強にもなった。
HOWTOものを毛嫌いする人も多いとは思うけれど、こういう本は実用的な小手先の技術を身に付けるものではなく、書くということに対する姿勢を学ぶものだと割り切って読めばいいのではないかな。「ベストセラー小説の書き方」を読んだときも感じたけれど、やはり成功する人は努力している、そして、正しい努力の仕方を知っている......ということが分かる。

この本はアメリカで有名なミステリー作家に対するアンケートの結果をまとめた章と、各作家が三、四ページほどの長さずつで一つのテーマ(「ストーリー」「アウトライン」「プロット」「文体」「描写」など)を語る章で構成されている。
どちらもおもしろいけれど、「なぜ書くのか」「アイディアの見つけ方」「ミステリーの秘訣」について何十人もの作家の数行ずつのコメントを羅列している章が特におもしろいと思った。
「なぜ書くのか」には、同じ物書きとして頷けるところが多かったし、「ミステリーの秘訣」はミステリーに限らず、できるだけ苦しまずに書き続けるコツが、それぞれの作家の言葉で語られたりした。
私は最近、書くためにパソコンに向かうのが憂鬱に思えてしまうことがちょっと増えてきてしまったのだけれど(昔はただただ楽しかったのだけれど、良い物を書きたいという想いが強くなればなるほど、書くことに苦しむようになるのかもしれないと、この頃感じている)、それには「うまくいかないから書きやめるのではなく、次の数ページに何を書くのか分かっているから書きやめるのなら、再び机に向かう熱意もあろうというものである(ミリアム・リンチ)」「一つの章や節を終わりにしたところで、1日の仕事を終わらせてはならない。たとえわずかの一段落でも、ただちに次の部分を書き始めよ。そして文章の途中で書きやめるのである(エリザベス・オギルビー)」などのアドバイスが役立つ気がした。

他、それぞれのテーマを挙げる部分では、一番「削除」についてが心に残った。初心者は自分の書いた文章を勿体ないと思ってなかなか削れないけれど、削ることによって作品は見違えるほど良くなるということを覚えておかなくてはいけない、というような内容。耳が痛いです......。
それから気になった文章を抜くと......
「なによりも先ず、読者に登場人物の身の上を心配させなければならない」
「見せよ。語るな。見せるとはアクションのことであり、ものごとのかかわり合いのことである。語るとはアクションの準備または説明であり、本来、不必要なものなのである」
「(作品は手直しされて初めて完成するという話で)『完』(と小説を書き終えてタイプすること)とはスタートに過ぎないからである。このことを信じることができない、或いは信じようとしない作家は、残念ながら可能性は全くない作家であり、いずれ消え去る運命にあるのである」
「一冊の本を途中まで読んだら、私は自分なりに謎を解く。もしそれが間違っていれば、私は新しい解決法と、おそらく新しい犯人を知ることになる。これが新しいストーリーを作るに当たってプロット展開に利用できるのだ」
なるほど、ですね。
以前、日本の作家が、小説の帯や売り文句からどんな話なのか想像すると大抵、そのものとは全く違う小説ができあがるから、それが自分のオリジナルの作品になると言っていたけれど、それと似ているかもしれない。

と、長くなったけれど、色々な「なるほどなぁ~」が詰まっていてとっても密度の濃い本でした。ミステリーを書く気はなくても、文章を書く人なら読んで損はないです!

2005年7月 3日

大島真寿美 「香港の甘い豆腐」


香港の甘い豆腐香港の甘い豆腐

理論社 2004-10
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大島さんの本、3冊目。今回は「チョコリエッタ」「水の繭」と比べ、もっと軽やかで明るく、爽やかで良かった。なんとなく全体的に分かりやすくまとまっていて、すんなり入ってくる感じ。
前回読んだ2作は、後半部分「え? え? これでいいの?」という感じがしたのだけれど、今回は安心して読めた。
香港のアジアらしい活気とか、人と人との密な関わりとか伝わってきたし、あぁこういう人間関係のなかにいるって幸せかもしれないなと、素直に思えたり。
やっぱり人はハッピーな話を必要としているのだろうな。

正直大島さんの作品は、ちょっと「ばななもどき」という感じで、ばななさんっぽいのだけれど、ばななさんの作品にはある、独特のパワーがあと一歩足りない......という感じを受けてしまう。
ただ、やはりところどころ、はっとする「洞察」がある。感性とか観察力とか描写力ではなく、洞察。
今回いいなと思ったのは、父親と二人で向き合って改めて話すことになったシーンの言葉とか、あと、日本人は親切なことをするにも相手の心を考えすぎて上手く行動できなくなってしまうことが多いけれど、香港の人はとにかく思いついたらそれを口にしたり行動してしまうと話しているところ。優しいがために臆病になってしまっている主人公の心とか伝わってきて良かった。

大島さんの書く小説の主人公は、繊細で内向的な人が多いから、なかなか自分からは行動を起こせない。でも周りのエネルギーのある人にまきこまれているうちに、少しずつ物語も動き、主人公の心も動く......というパターンが多いと思う。
「チェコリエッタ」ではその役割をする映画サークルの先輩の存在がどうも受け入れられず、作品全体も「?」になってしまったけれど、今回は香港の人たちがたくさん出てきて、そのパワーは漠然とだけれど分かって、読んでいる私もそこに上手くとりこまれた、という感じ。
私も小説を書いていて、「主人公が動かなすぎる」とよく言われるけれど、こうやって主人公を無理矢理であっても動かしてしまうパワーを書いたり、もっと行動する主人公を設定してもいいかもなぁ。などとちょっと勉強になった。

この本は、ちょっぴり疲れているときに軽く読むには最適の本、とだけ紹介しておきます!

 

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