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凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ 興味深い ”タグの付いているブログ記事

2009年10月23日

雫井脩介「虚貌」


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 犯人は誰か、とか、どういうトリックを使ったのか、というところに重きを置いて読むと「あれ?」という感じがしてしまうけれど、ミステリーだと思わず、エンターテイメントの要素もある純文学として読むと非常に上手く、深い作品だと思う。

 タイトルの通り「貌」って何かと突き詰めていった作品だと考えると、様々な視点からの考察があり非常に興味深い。

 やはり雫井さんは人の描写も上手いし、人の暗い面も含めて非常によく描き出していると思う。
 フィクションを支えるのは結局のところ、人物の"リアリティ"だということを感じる。雫井さんはそういった意味で、本当によく人を観察している。
 あぁ、こういう人、いそうだよね、とすべての人物に対して思える。

 ただ、最後はこれでいいのだろうか、という気もして、手放しで推せない気もするけれど、重みのある一冊を読んだという充実感はあった。

 改めて、ミステリーってなんだろう、と考えるうえでも、勉強になる作品だった。

2009年6月 7日

万城目 学「鴨川ホルモー」

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万城目 学

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気にはなっているけれど、あとひとつ、その本を手に取るきっかけがない、という本がある。
この本も、そのうちの一つだったのだけれど、会社の人に貸してもらったので、読んでみた。

なんだかすごいタイトルだし、表紙の絵もふざけているし、映画化もされたようだけれど、出回っているそのシーンも奇妙だし......きっと、コミカルではあるけれど、非常に難解な作品なんだろうと思っていたが、読んでみると違った。

「ホルモー」というのは、明らかに架空の「競技」で、その内容も、その競技に関わる人たちも、非常に奇妙なのだけれど、その競技以外は、本当にどこにでもいそうな大学生と、どこにでもありそうな大学生活が描かれていて、意外と普通に読めてしまう。

以前、「学校生活というのは、誰でも経験したことのあるものだから、小説で書いても、新しさを出すのが難しい。だから、学校を舞台にした作品はあまり書かないほうがいい」とアドバイスされたことがあるけれど、この小説の場合は、「ホルモー」があまりに特異だから、その舞台は、非常にありきたりな「大学生活」でなくてはいけなかったのだろう。

文庫のあとがきに「(この本を読んだけれど)鴨川ホルモーってどんな話だったっけ、と言う人はいない」と書かれていた。確かに、そうだろう。
「だって、ホルモーといったら、あの競技でしょ?」「だから、鴨川ホルモーと言ったら、そのホルモーをする学生たちの話に決まってるよね」
と、読んだ人の頭ではすぐにつながる。

でも、この「一度読んだら、タイトルを聞くだけで内容を思い出せる」ほど強烈な作品を作り出せる、というのは、作者の力だ。

「絶対、こんな競技、ないよね?」と思いながらも、自分の大学でも、誰かしらが細々とホルモーをしているのではないかと思えてしまう(まぁ、私の大学は、京都にはないので、その時点で、設定から外れていますが)。
万城目さんの魅力は「うそつき力」だという評論家がいたけれど、上手いネーミング。

うそつき力は、「奇抜なアイディアを思いつく力」と「奇抜なアイディアにリアリティを持たせる力」両方がないと成立しない。

この本を読んで、自分に足りないのは、常識的な世界を打ち壊す発想力だな、と痛感した。

読書好きにも、物書き好きにもお勧めの一冊。

2007年2月17日

「マリー・アントワネット」


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「マリー・アントワネット」は、あまり評判が良くないらしい。「見たよ」と言うと、いろんな人に、「でも、良くないんでしょ?」と返される。まだ私の感想、言ってないのに!
ということで、私自身は、結構いいと思う。
ただ、女性のための映画って感じかな。多くの男の人には多分良さは分からない。あと、映像の「芸術」を求めるより、ストーリーというか、キャラクターの作り方あたりに焦点を当てて見るべきかも。
私がこの映画をいいと思ったのは、「固定観念からこれくらい自由じゃないと」と、学ぶところがあったから。今まで抱いていた、「マリー・アントワネット」のイメージが、自分の中でかなり塗り替えられた。そして、あぁ、こういう状況だったら、確かにこういうふうに考え、こういうふうに行動するかも......いや、私だったらもっとダメになっていたかも、とか、自分のことに置き換えて、身に迫ったものとして感じられた。それがこの作品のうまさだと思った。
ただ、そんなふうに難しく考えなくても、ファッションはとてもおしゃれで豪華だし、おいしそうなスイーツだらけだし、乙女にはたまらない映像美かも。音楽もポップで、これもまた、既成概念を壊している。
リアリティを求める人にはかなり受け付けられない内容だろうけれど、史実に基づいていようが、芸術作品は作り手のもの、という独立した考え方ができればいいんじゃないかな。
というあたりが、私の正直な感想。

2006年10月29日

「DEATH NOTE -デスノート-」(前編)


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後編公開の前に、前編がテレビで放映されていた(このあいだの金曜日)。
劇場で見た知り合いが良いと言っていたので、気になっていたけれど、想像していた以上に奥が深く、ちょっとテーマは重たかったけれど、なかなか考えさせられる上質な作品だった。
簡単にあらすじを書くと、名前を書けばその人を殺せるというノートを手に入れた主人公が、「正義」のために犯罪者の名前を片っ端から記し、自分の行う「正義」に悦に入っているが、そのうち、彼自身が殺人犯として警察などに追われるようになる、というような話。

主人公の藤原竜也くんも、その主人公を追う側のL役の人も、見る人を納得させる雰囲気をかもしだしていて良かった。藤原くんはやはり舞台出身の人だからか、上手いなぁ。しかも見た目もいいし、なかなか(ただ、沖田総司のイメージが強いなぁ、私は)。

ストーリーの作り方も、構成の仕方も上手かった。映画の方を見たあと、最近深夜にやりはじめたというアニメの方をちょっとだけ見たのだけれど、情報の出し方が映画の方が上手いように感じた。見る人を「え、そうだったの」とか「それでどうなるんだ」と思わせる仕組みを上手く作っている。

でも、最近の漫画ってすごいなぁ。深いものは本当、エンタメ系の小説よりずっと重くて考えさせられる。
今回も、「正義」について考えさせられた。結局、「自分は正しい」と揺らがない人って怖いんだよな。
それはその人自身が、あるときポキリとおれてしまいそうな怖さでもあり、人を不必要に傷つけてそれに無自覚であるという怖さでもある。
特に教育など答えのでない世界にいて、文学という答えのないものに向き合っているとよく思う。ビジネスにおいては、「私に任せてください」と自信を持ってアピールすることが大事なのは分かるけれど、それでも、自分のやっていることにみじんの疑いのない人ほど、信じられない人はいないと思う。
揺らぎながら、時々は自信を喪失しながら、もっといい方法や考え方があるはずだと悩みながら、人は成長していく。
「これが答え」「これが正しい」と思ったところで、人の成長は止まる。
そんなことを思った。
(この映画だけの話ではなくて、身の回りでもいろいろ考えるところがあったのもあるけれど)

後編は劇場に見に行こうかな。
予告を見る限り、かなりまた展開するらしいし。

2005年12月29日

「秘密。―私と私のあいだの十二話」

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 吉田修一さん、小川洋子さん、森絵都さん......など十二人の作家さんの短編集。<br /> しかもそれぞれの話がA-side、B-sideという感じの2つの視点で描かれている。つまりは12×2の24話も詰まった短編集ということになる。<br /> さらりとよめてお洒落。モノクロの写真もところどころ散りばめられているし、気軽に読むには最適。<br /> <font color="#339999">一人の視点で物語が始まり、その人の中でその話は終わるのだけれど、その続きやその同じ時間をもう一人の人物があとから語り始める。<br /> なるほど、このときのこの人の行動の背景にはこんなことがあったのか、と分かる。そんな仕組み。</font><br /> 忙しいと自分のことで精一杯になってしまうけれど、関わる相手にも同じくらいの重さの生活なり過去なり人生があって、出会いっていうのはそういう重さを持ったもの通しの接点なのだなということが伝わってくる。<br /> 短編だからさらりと読める。でも、いい作品はきちんと心によい余韻を残す。印象に残ったのは森絵都さん、伊坂幸太郎さん、吉田修一さんの作品。他に上手いなぁと思ったのは佐藤正午さん、堀江敏幸さんの作品かな。あざとく狙ったものより、さらりとした感じのものの方がやっぱりうまさは感じる。<br /> 正直、一編一編がもうちょっと長い方が世界を味わえたのでは、と思うけれど、色々な作家の人の持っている世界をちょっとずつ味わえるこういう本も、たまにはいいな、という感じでした。<br />

2005年8月18日

白岩玄 「野ブタ。をプロデュース」


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このあいだ書いた「人のセックスを笑うな」と同時に文藝賞を受賞した小説。
「コミック世代」だ、「軽い」だ何だと言われながら、芥川賞の候補にまでなり、今度は亀梨和也(KAT-TUN)、山下智久(NEWS)主演でドラマ化されるらしい。なんか、おいしい道を突っ走っているなぁ。素敵!

(でも、「俺」が格好いいのは分かるけれど、格好いい主演二人って、俺ともう一人は誰なんだ?! 野ブタは主演じゃないのか?!)......と、私が熱くなっても読んでいない人には伝わらないか(^^;)

 私は結構この本は好き。自分が目指す方向とはかけ離れた方向に走っているから、闘争心も湧かず、素直に読者として誉められてしまうのかもしれないけれどね。
 確かに少年マンガらしい色は濃く出ているし、でもマンガになりきれていず、変に文学としてまとめようとしているところが、尻すぼみな印象になってしまったりもするのだけれど(でもこういうラストだから、芥川賞の候補にまでなれるのだろうけれどね。もっとただ突っ走った、おもしろいだけの作品だったら、純文学会からは無視されていただろう)、それでも、やっぱり「今」の感じをきちんと「等身大」で描き出している感じに好感が持てた。
 それになにより楽しく、スムーズに読み切ることができる。それは重要だ。笑いのツボは合っているような合っていないような感じで、時々、向こうの世界だけ熱い......と思うところもあったけれど、ところどころ電車の中でもにやついてしまうくらいおもしろかった。「コミック世代」なのはそうだろうけれど、コミックを読んで育ったすべての人が、同じだけの笑いや軽やかさのセンスを身につけられるわけではないのだから、コミックの真似であろうと、白岩さんはちゃんと「技」を身につけている人だと私は思う。

 今回の作品はストーリー的にも目の付け所が良かったというのはあるだろうけれど、「初めて書いた作品で勢いで賞を獲ってしまった」というような感じに話している専門学校生(白岩さん)をテレビで観たときとは違い、作品を読んだあとは、まだ3作は行けるな、という気がした。このちょっと独特な笑いと軽やかさはきちんとした「文体」になっている気がするから。

 多分、小説を書いている人や普段から読書をしている人にこの作品を読ませたら、大部分は「おもしろいけれどねぇ......」というくらいの感想だろうと思う。だからまぁ、敢えて「是非読んで」とは薦めないけれど、私はこの作品、結構好きでした。そして次回はコミックと文学の狭間で中途半端になることなく、独自の世界観をきっちりと築き、もっとインパクトに残る作品を書いてもらいたい!などとちょっと偉そうなことを言って、締めてみます(笑)

 

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