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2009年3月13日

「薬指の標本」DVD

小川洋子さんの同名の小説を映画化した「薬指の標本」を見た。
この映画、邦画ではなく、フランス映画!
でも、日本とも海外ともどこともとれない場所が舞台の小川作品だから、まったく違和感はない。
......いや、むしろ、フランス映画であって良かった、と思う。

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小川さんは、「博士の愛した数式」で本屋大賞を獲り、映画化もされたので、それが「代表作」のように思われているけれど、以前からの小川ファンとしては、それは違うだろう、という気がする。「博士の愛した数式」は、小川さんにしては「珍しい」タイプの作品だ。
もちろん、「博士の愛した数式」も、すばらしいのだけれど、多分、根っからの小川ファンは、「薬指の標本」のほうを好んで読み、「やっぱ、こういうテイストよね」と、この映画に満足すると思う。

一般の人には、純文学=私小説のように捕らえられがちで、自分の悩みを滔々と語るのが小説だみたいに思われている気もするけれど、私が思う、小説らしい小説は、やっぱりこういう、小川作品だな、と、映画を見て、改めて思った。
どんな作品だ、と聞かれても困るけれど、描写ありきで、ストーリーはただそのシーンを生かすための小道具でしかない、みたいな「芸術作品」かな。
この映画も、非常に「純文学」っぽい。

分からない人にはわからないだろうけれど、分かる人は、はまる。
だからこそ、アマゾンでも星5つなんだろう。
多分、星1つしかつけないであろうような人は、そもそもこのDVDを手に取ろうともしないはず。

やっぱり、文学は、美の追求だ。文学も「芸術」だ。
などと、忘れていた「原点」に久しぶりに回帰した感じ。

ストーリーを軽視するわけではないけれど、ストーリーは自分にとって、メインではない。
ストーリーによって描かれる世界や、人の心理こそが「主役」。
先を読ませる牽引力は大切だけれど、ストーリーを前面には押し出さない。
日常をつかのま忘れさせる美を表現できてこそ、文学。

エンタメを目指しつつも、なにかすごい違和感をときどき感じ、行き詰っていたけれど、なんか、この作品を見て、ふっと、「無理はやめよう」と思った。
私はやっぱり、こういう世界が好きだ!

小川さんの原作。

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2006年5月24日

「ANGEL-A」


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リュック・ベッソンの6年ぶりの新作。ベッソンは10作しか映画を作らないという話でこれがラストという話もあるけれど、宮崎駿みたいにまた作るんじゃないかなぁ、という気もする。

というか、作って欲しい!!

と、思わせてくれる映画だった。
やっぱり才能のある人は違うなぁ。

テーマはもしかしたらけっこうありふれたものかもしれない。
ひとりの女性と出会い、愛すこと、愛されることを知ることによって、自分自身の人生や心の持ち方が変わってくる......そんな話。

でも、白黒の画面はとても美しかったし、主人公アンジェラも絶妙の美女だったし、言葉や台詞の一つ一つが印象的だった。
特に作っている側は泣かせようという意図で作ってはいないのだろうというところで、思わずうるっと来てしまうような映画だった。

「人に愛されようと思ったらまずは自分が自分を好きになること」とは最近よく聞く言葉だけれど、この映画では、「人は人から愛されなければ、自分のことは愛せない」と言い切る。
でも、幸せに生きるためには自分を愛することが一番大切、と伝えている。
そういう意味では、スピリチュアルなメッセージたっぷりの映画という感じがした。
上のメッセージの他にも、結局今を楽しまないと、いつ楽しめるの、というような台詞も至るところで繰り返される。
これは最近自分がよく考えていることだからかもしれないけれど、心に残ったな。

うるさくならない程度にきちんとテーマを伝えている。そして、ストーリーもしっかりしているけれど、作りすぎた感じもなく、芸術性も高い。
あ~、才能だ。
と、本当、とても良い映画でした!

今日はレディースデイなのに観客が少なかった。「ダ・ヴィンチコード」に客を取られた感じだった。
でも!
どちらか見るなら、「アンジェラ」です!!

2006年1月11日

オラファー・エリアソン「影の光」

久しぶりに美術館に行きました。
品川の原美術館で3月15日まで開催しているインスタレーション。

大袈裟な言葉に聞こえるかもしれませんが、いやぁ、本当、久しぶりに本当の「美」に出会った感じがしました。
言葉を超越しています。
見ているととても穏やかな気持ちになった。お寺の境内にじっと座っているときの気持ちに似ている。静かに自分の内側を見つめられる空間があった。そして目の前に繰り広げられる光景(というか、光と影の揺らめき)は、美しい数式のように完成された、完璧な軌道を描いたり、この世のものとは思えない不思議な世界を感じさせたりしてくれた。
ここに今生きているということを忘れてしまいそうなほど、非日常の空間があった。

別に今、死にたいと思っているわけではないけれど、自分が死ぬときはこれくらい穏やかな気持ちで、まず生にも死にも属さない場所でしばらくじっと留まり、そしてあの世に逝くのだろうなぁなどということを感じたりした。
本当、良かったです。

ただ、一体、その展示って、どんなものなの?と聞かれると説明できない......。
ので、写真で作品を見られるサイトにリンク。
http://www.enjoytokyo.jp/OD004Detail.html?EVENT_ID=27273
原美術館の公式サイトの方がきれいですが、フラッシュを使っているので、目的にたどり着くまでがちょっと面倒です。
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
でも良ければ、ここのサイトの「EXHIBITION」を観てください。

リング状のプリズムを使って、光を虹色にし、その動きを見せるというような展示と、霧に光を当て幻のような柔らかい虹を見せるという展示が綺麗だった。
でも考えてみれば、それはただ普段身近にある光を分解して見せているに過ぎない。非日常に感じられるけれど、光も様々な色も日常にあふれかえっている。溢れすぎていて気づかない。
色だけではなくて、世の中には当たり前すぎて目を向けないために「非日常」になってしまっているものが、今はとても多いのかもしれない。例えば体の器官の働きとか、物質は原子とか分子でできているということとか、地球は回っているとか、光や音は波であるとか、実感としてとらえられない「事実」は多い。
別にそんなことをいちいち考えていたら日常に差し障るから、考える必要はないと思うのだけれど、でも、今回、この不思議な展示を見ながら、実感できないそういう非日常に感じられる様々な「事実」を知識として持ててているのはいいことかもしれないな、なんていうことを思った。
現実世界で行き詰まったとき、白い光の中には本当は七色(本当はもっとたくさん?)の色が隠れているんだとか、物質は全部ただの分子と原子なんだとか、そういう、普段とは全然違う視点をふっと持てるようになれば、気休めであってもちょっと楽になる気がするから。

って......何がいいたいかよく分からなくなってしまったけれど、とにかく、本当に良かったです! 静かに美しいものと向き合いたい方、もしお近くに住んでいたら、是非、行ってみて下さい。

2005年12月14日

「大停電の夜に」


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久しぶりに映画を見に行ってきた。
「闇」の表現がきれいだという話で、キャンドルに彩られたシーンをテレビで見てその美しさが印象に残っていたから。
実際、映像の美しさという点では満足できる映画だった。
役者もなかなかいいし、細部の見せ方が良かった。演出の上手さかな。
東京が「大停電」になったらそれはもう大変な「天災」って感じだけれど、そこに重点をおかず、暗闇の中でむきあう一人一人の人間に視点を置いているのが良かった。

テレビも明るすぎる電灯もないところで、静かに大切な人と向き合う時間を持ちたい、そう思えた。キャンドルの光のもと、などというロマンチックなものではなくても、ただテレビとパソコンのない部屋で向き合うことさえできたら、いつもと違う相手のことが見える気がするのにな。でも、それさえ普段は難しい。......それは自分自身の反省も踏まえての言葉だけれどね。

映像の美しさとイブの雰囲気を味わうというのが目的ならこの映画はおすすめ。
ただストーリーや大きな流れでは、なんじゃこれ、と感じさせるところも......。
色々な人の話がからみあって一つの世界を作り上げているというのはいいのだけれど、変に関係のない人たちを最後のほうで出会わせたり、ご都合主義なところがたくさんあるし、主要な人物の心の動きや行動に納得いかないところが多かった。
あ~もったいない! という感じ。

せっかく細部と映像がいいのに、ストーリーだけ取り出したら、三流のお笑いだよ。三谷幸喜のドラマや芝居がおおごけしたというような印象。
結局、愛とは積み重ねた時間だということなのだろうか。うなづけるところもあるけれど、それだけでまとめられないような内容だった気も。

私の隣は20代半ばくらいのカップルだったけれど、男のほうはあくびをしたり、退屈そうだった。そして終わったあと、「これなら遊んでいたほうが良かったね」と言っていた。
カップルで見ることを薦めているような映画だけれど、実際は男には退屈なのかもしれない。

ただ私は、納得できない気持ちを残しながらも、最後はなんとなくあたたかい気分になれたし、とにかくきれいな映像を見れて満足でした。
久しぶりにお台場の映画館で見たのだけれど、帰り道、ゆりかもめから夜景がきれいだったしね。
映画とは関係ないけど......(笑)

2005年10月30日

「春の雪」


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公開二日後に見に行くなんて滅多にないのだけれど(大抵は、空いてから行こう......と思ってしまう)、今回は相当気になっていたので、いってきました。なぜ気になっていたのかというと、以前からこのサイトに来てくれている人はご存じの通り、三島由紀夫「豊饒の海(一) 春の海」こそ、私の一番愛する小説だから! 別に妻夫木くんのファンだから、などではありません(笑)

ということで、多分、見に行っても不満を感じるだけだろうな、なんて思っていたのだけれど、予想に反して良かった!
あぁ、ここまできちんと映画化できるんだ、というくらい、要所をきちんと押さえ、かつ無駄のない形に仕上がっていた。もちろん、映画では三島の文体の美しさなどは表現できないけれど、その代わりに、映像でしか見せられないようなまた別の美しさを描き出していて、それが成功していた。

正直、三島の文体は、文学に慣れ親しんでいない人には読みづらいものだから、三島の世界の美しさを知る第一歩としては、この映画は薦められると思う。
文体、風景描写などの美しさは、小説と映画ではやはり違うけれど(でも、かなり忠実に再現されていたな。特に初めの松枝家の庭などはイメージ通りで嬉しかった)、ああいう恋愛、ああいう人生の貫きかたを三島は「美」としたのだということが伝われば、結構いいのではないだろうか。
短くまとめると、この映画を作った人は(監督なのか、映像担当者なのか、脚本家なのか分からないけれど)、本当にこの作品が好きで、だから映画にしたんだな、ということが伝わってきて、だから良かった。安易な気持ち(話題作りみたいな)ではなくて、もっと心をあの作品に「捕らえられている」んだなという気がした。
まぁ、一つ気に入らないのは、主題歌かな。宇多田ヒカルを嫌いなわけじゃないけれど、もうちょっと和のテイストのものにして欲しかった。横文字で歌われると、気分がそがれた。......って年寄りっぽい感想だろうか......。

ただ最近、「春の雪」を読み返していなかったのだけれど、久しぶりに松枝清顕の生き方に触れて、自分の心が以前より大人になっているのだということを感じたりした。
以前はもっと、こういうひねくれた恋愛しかできない清顕に自分を重ねているところがあったけれど、今は、「そういうのは若さだよ」なんて思ったりする。もちろん、反対されればされるだけ、障害があればあるだけ恋心は燃え上がるというのは、心理学的な真実だとは思うけれどね。
ま、清顕は20歳前後だから、30にしてそこを超えられるっていうのは遅いのかもしれないけれど......、でも「春の雪」を卒業すると、四部作の他の作品も好きになれるのかな。
今回の映画でも本多は良いキャラクターだった。役者もぼくとつとしていて良かった。ただ、「また会う。滝の下で」って言われても、二作目以降を読まないと、意味が分からないのではないかな......これはこれでいいのだろうか。「奔馬」も映画にしようともくろんでいるのだろうか。など、色々考えてしまった(笑)
いつも読み返すのは「春の雪」だけだったのだけれど、「奔馬」も久しぶりに読んでみたくなった。

妻夫木くん、竹内結子は、まぁそんなに悪くない。でも、もっと合う人もいたかも......くらい。妻夫木君はそれでもなかなか好演していたけれど、竹内結子は、無難に演じたというだけの気がした。もっとはっと心に響いてくるなにかがあればもっと「聡子」になったかも。......言いたいこと言ってるけど(^^;)

でも、是非、この映画は見に行ってください。特に、三島由紀夫を読んだことのないひとには見てもらいたいな。

原作も本当に傑作です!

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