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凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ 本当に上手い ”タグの付いているブログ記事

2009年4月 8日

山田宗樹「嫌われ松子の一生」

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)
山田 宗樹

幻冬舎 2004-08
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映画の予告を見たくらいの情報しかもっていなかったので、周りから疎まれている変わった性格の人が、コミカルに描かれている作品なのだと思っていたが、読んでみたら、全然違った。

一人の女性の一生にまっすぐ、まじめに向き合って書かれた、結構重たい話だった。

でも、シリアスなのに重くなりすぎず、どんどん先にひっぱっていく力は、さすがとしか言いようがない。
久しぶりに、すごくいい本を読んだな、という満足感を得られた。

タイトルこそ「嫌われ松子」だけれど、読んでいると、「松子」に感情移入してしまう。
本当に「ついていない」としか言いようがない人生なのだけれど、それでも、いっときいっとき真剣に生きている松子を、つい応援する気持ちになっていた。

文庫のあとがきでは、松子だけが悪いわけではないけれど、もっと松子が未来のビジョンをしっかり持って生きていれば、こんな結末にはならなかっただろう。でも、誰にでも、こういう転落がありうるということだ、というようなことが書かれていたけれど、作者が伝えたかったテーマは、そんなことじゃないんじゃないかな......と、私は思った。

決して「成功」ではなかった人生だけれど、それでも、そのときそのとき一生懸命に生きて、誰かの心に何か残せばいいんじゃないか、と、私は読んだ。

この、「共感させる力」と、「物語を引っ張っていく力」には、すごく学ぶものがある気がした。
この作品自体はそう「ミステリー」という感じではないけれど、作者が推理小説でデビューしたということを知り、深く納得。

大学卒業くらいから時系列にそって進む松子の視点でのストーリーと、なぜ松子が殺されたのか、松子が死んだと知ったところから辿っていく「甥」の視点でのストーリーの絡ませ方が、本当に上手い。
こういう、視点や時間の流れを計算して、組み込めるようにならないといけないな、と思う。

この人のほかの作品も読んでみたい。

2007年1月22日

東野圭吾「白夜行」

白夜行白夜行
東野 圭吾

集英社 2002-05
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このあいだも書きましたが、かなり長時間かかった「白夜行」をようやく読み終えました。
やはり長いだけあって、力作!という感じ。やっぱり長編、特にミステリーを書ける人は頭がいい。自分にはこういう頭の良さはないな、と半分あきらめのように思う。うらやましい。でも、こういうのは才能というだけではなくて、やはり努力の結晶みたいなものなのだろうな。才能がなければできないけれど、才能があっても相当それを磨かないとできない。
内容は決して明るく楽しいものではなく、逆に、人はここまで冷酷に生きられるのか、と感じさせるものになっている。様々な視点人物から事件を語りながらも、主人公2人が決して視点人物にならないところにまた、その人間離れした冷たさを感じさせる要因がある。というか、東野さんはそこをねらってきちんと書いているはずで、それが上手いなぁ、と思う。こういう視点の置き方は勉強したい。
それから、同じ人物を書いても、視点人物が違うと、違う人物のように見えてきてしまう。そのぶれも上手く使っている。視点の移動は長編でないとなかなか厳しいから、100枚程度のものしか書かない私にはあまり使えない技ではあるけれど、誰を視点人物にして、どういう角度で物事を見せるか、そこにはいつも細心の注意を払うべきだと思った。
ほのぼのとした小説とか、人の善良さを見て生きたい人には勧められない本だけれど、ミステリー、エンターテイメントとして、「先が気になる」読書をできる良書だと思うので、私はお勧めします!

2006年11月19日

東野圭吾「手紙」


手紙手紙
東野 圭吾

文藝春秋 2006-10
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映画は今、公開されているのかな。
映画を見ても良かったのだけれど、東野さんの本は好きなので、本の方を選んでみた。山田くんと玉山くんもいいんだけどね。
ストーリーは、弟の学費を手に入れるために思い詰めた兄が強盗に入り、誤ってその家のおばあさんを殺してしまい、そのために弟は社会から差別を受け、苦しむという話。
刑務所に入った兄からは、一ヶ月に一回しか出せないという手紙が、毎月届く。その手紙と、手紙に象徴される兄との関係の扱い方に迷い、苦しみ続ける弟が主人公。
ものすごく分かりやすく、残酷な差別やいやがらせをされるさけでもなく、ただ人に距離を置かれ、常に特別扱いされてしまう主人公の生活の描写は、まったくドラマチックではなく、とてもリアルな重さで迫ってきて、だから読むのが少し苦しくもなったけれど、それが東野さんの力量なのだろうなという気がして。
数ヶ月前に感想を書いた「時生」も良かったけれど、あれはデビューしてすぐくらいの作品だったから、それから何年も経って書いたはずのこの作品は、ますますこなれ、完成されていた。
とても難しくデリケートな問題で、結局答えなどないのだとは思うし、作者もそう認めてはいるのだけれど、「答えはない」というところに安易に逃げたりはせず、作者の考えがきちんと明示されているように読み取れるところが良かった。
救われない話ではあるけれど、最後は少しだけ温かさも感じられた。
これくらいの作品が書ける力が欲しいなぁ~。

2006年2月17日

東野圭吾 「容疑者Xの献身」


容疑者Xの献身 (文春文庫)容疑者Xの献身 (文春文庫)

文藝春秋 2008-08-05
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 東野さんの名前はもちろんずっと前から知っていたけれど、ちゃんと読むのは初めてだった。
 いやぁ、この人も職人的なエンタメ作家だなぁ、と思った。感覚ではなく、頭脳で書いている感じがする。どうしたら人の心をひっぱって最後まで読ませるか、その「技術」をとてもよく分かっている人だ、というのが感想。

 私は実はあまり本にのめりこまないタイプなのだけれど、久しぶりに睡眠時間を削ってラスト、読み切った、という感じだった。
 上手いなぁ。先が気になる!
 そして、ラスト十分の一くらいでようやく、「も、もしかしたら......」という予感を抱き始め、ラストの十分の一で、その予感が本当だったということと、なぜそうしたのか、細かい部分はどうやってクリアしていったのか、それぞれの事柄にはどんな意味があったのかが分かってくる。
 私はそこまでミステリーに詳しくはないので、これが本当に新しいものなのかは分からないけれど、少なくとも私の中では新しく、とても衝撃的だった。なるほど、すごい!と思った。「気づかなかったよ」だけではなく、「なるほど」としっかり納得させるのは、ミステリーでは特に大事だと思う。

 と、もう、エンタメの点では完璧に近い評価!

 ただ、「文学」という面から見ると、どうなのだろう。それはよく分からない。
 最近小説を習っている先生が言うには、「一気に読めました、というのは褒め言葉のようであって、決して褒め言葉ではない」とのこと。そんな一気に読めるようなものは、心に残らないし、ストーリーのおもしろさだけで先を読ませているのだから、もう一度手にとって読んでみようとは思わないから、というのが理由。
 東野さんの作品は、たとえばシドニーシェルダンのような本と比べたら(中学か高校の頃は結構はまって夜遅くまで読んでいたなぁ)、結構しっかりした作品だと思う。でも、もう一度読みたいか、いつでも自分の本棚に入れておきたいか、と言われると、う~ん、となってしまう。
 読み直したくなるのは、決して読みやすくはない三島由紀夫とか、分かったようで全部が分かったわけではない小川洋子さんの作品とか、そういうものの方。
 そういうわかりにくい「純文学」は、エンタメに比べてお金にならないとは思うけれど、やっぱり私は「職人」に徹して文章を書くことはできないだろうな......。これから考え方は変わるかもしれないけれど、今はそう思う。別にエンタメの要素を完全に排除するとかそんな極端なことではなくてね。

 今回の作品も、トリックというか、謎の答えはとてもよく考えられたすごいものだった。でも、これは帯にも書いてあるけれど、人はこれほどまでに人を深く愛せるのかというのがテーマになっている。でもその愛は、この話では脇役になってしまっていないか、主役がそのトリックの奇抜さになってしまっているのではないか、という気はした。なんとなくラストの物語の決着の付け方が、こういうのもありだなと思う一方で、少し受け入れられなかったというのもあり......。
 全然比べるものではないけれど、たとえば一年後、この本と「ミュンヘン」とどちらが心に残っているかと聞かれたら、「ミュンヘン」の方が心に残っているのではないかと思う。......そういうところで、自分はまだ、作品を書く上で何を一番重要視したいのかが分かっていないのかもしれない。だから迷うのかもしれない。......なんてことを思った。

 と、いつものごとく脱線しまくったけれど......
 この本は、本当におもしろいし、良くできた本だと思います。お勧めです!

 

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