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凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ 本当にいい ”タグの付いているブログ記事

2010年2月 7日

森絵都「風に舞いあがるビニールシート」


風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

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良かった。
すごく良かった!

この作品は直木賞を獲ったもので、一時期話題になっていたから気にはなっていたのだけれど、森さんは「児童文学作家」の印象が強く、前回読んだ「DIVE」は、なかなかおもしろく読めたのだけれど、子供向きで、マンガを読んでいるようなテイストだったので、正直、今回の作品もそんなに期待していなかった。

でも、こんなにタッチからテイストからすべてを変えられるのだなと驚くくらい、「児童文学」の色はまったくなく、非常に上質な、大人向けの、深みのある作品集だった。

この本は6つの短編作品で構成されていて、6つの作品にはなんのつながりもない。
この6つにしても、それぞれ違う作家が書いたオムニバスと言われても納得してしまいそうなくらい、全然視点も書き方も違う。

ただ、帯に書かれているように「大切な何かのために懸命に生きる人たちの物語」という共通のテーマにだけ貫かれている。

最後の「風に舞いあがるビニールシート」は、難民を支援する国際機関を舞台にした話だし、6つのなかには決して明るくはないテーマも含まれている。
すべてが思うようにいくわけではないし、むしろ、思うようにいかないことのほうが多い。
普通の大人の人生がそうであるように。
ただ、そういう上手くいかないことの多いなかで、それでも必死に何かを守ろうとしたり、何かを得ようとしたりして、みんな、頑張っている。
その一生懸命さや、まっすぐであるがゆえの不器用さなどが、非常に良かった。
ひとつひとつの話を読みながら、自分の人生にも上手くいかないことは色々あるけれど、もっとできることを頑張っていこう、と明るい気持ちになれた。

先が気になったり、読んでいて楽しいと思える作品はたくさんある。
でも、「もっと頑張ろう」とか「きっと生きていればいいことあるよね」とか、小説の世界を超えて、自分の抱える世界にまで影響を及ぼしてくるような作品には、久しぶりに出会った気がした。
そして、本来、小説を読む楽しみって、こういうものだったな、なんてことを思い出したりした。
(昔大好きだった、鷺沢萌さんの「海の鳥・空の魚」を思い出し、久しぶりに読みたくなった。あの本も、日常の中で一生懸命に生きる人たちを主人公にした、元気をくれる作品だった)

正直、1作目はよさがよく分からなかったけれど、最後の「風に舞いあがるビニールシート」と、『ジェネレーションX」が良かった。「風に舞いあがる......」は、良かったけれど、ここから読んだらダメだと思う。色々な人の懸命な人生を味わった最後に、この話を読むことに意味がある気がした。

本当、お勧めなので、是非、読んでください!

2007年11月21日

森沢明夫「ラストサムライ」


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森沢さんの作品のなかで私が一番好きなのは、やっぱり、これ!

武田幸三さんという、これまた格闘家の人生をつづったものなのですが、正直格闘技にはほとんど興味のない私でも、世界に引き込まれました。

森沢さんも
「彼(武田さん)に会ってから、自分が、がんばっている、というレベルなんて、がんばっている、とは言わないと思った」
と言われていましたが、壮絶な「闘い」を感じました。
相手に対してというより、常に自分と闘っている感じ。

人生に「熱さ」を取り戻したい方は是非是非、読んでください!

これまた、武田さんもすごいのですが、でもそのすごさを伝える森沢さんもやっぱりすごいのです!
特に、時系列......出来事の並べ方がとても練られています!


私は、自分で小説を書くときは、「自分の想像力こそが命」と思っていましたが、色々な人にあって、色々なことを聞いて、それを自分の世界に取り入れていくことが、本当に広がりと深みのある良質な作品を生むのかもしれない、などと、森沢さんの作品を読むと思いますね。

色々な意味で、小さくまとまらないようにしよう、と思います。この頃。

2006年7月17日

「ゆれる」


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昨日は「ゆれる」という映画を見てきました。オダギリジョー主演。西川美和監督。
......と、見に行くまで知らなかったのだけれど、映画が始まる前に監督の名前を見て、あれ、なんか知っている気がする、この人と思った。
帰ってネットで調べたら、同じ早稲田一文で一歳年上とのこと。う~ん、多分、なにかのクラスで一緒だった。名前をちゃんと覚えていると言うことは、語学のクラスかなぁ。記憶が曖昧だけれど、いやぁ、クラスメートの映画を何も知らずに見ることになるとはびっくりだ。
既に知り合いで有名になった人は各方面?にいるので、多分、他の人より驚きは少ない方だろうけれど......。
あ~、私もデビューするぞ!と、また変に刺激されました(笑)

で、映画は、純粋に良かった。
エンターテイメント的な要素もあって飽きさせないのだけれど、純文学的な(映画で文学って言うのも変だけれど)世界観があって好みだ。ああいう、台詞が少なくて、沈黙やその場に流れる時間の感覚で何かを伝えてくる表現は好きだなぁ。
物やちょっとした映像で心理描写をしたり、登場人物が多くを語らなくても、その分、複雑なものが伝わってきてしまうような作品、いい。緻密に組み立てられている、でも、頭だけではなく感覚も大切にして作っている感じがする。
オダギリジョーも良かった。上手いっていうのもあるのだろうけれど、役とキャラクターがぴったり合っている気がした。だから、本当に上手かったのは兄役の香川照之の方だなという気はする。背中だけであれだけ伝えられる役者ってすごい!
ただ木村祐一なども悪くはなかったけれど、どうもバラエティによく出てくる人とかお笑い芸人などが役者をするのが私は好きではないな。どんなに上手く演じても、その人自身のキャラが強すぎると、物語が壊れる気がする。
......多分、MIⅢとか好きな人にはいまいち良さの分からない作品だろうけれど、ストーリーのおもしろさだけではない何かを求めている人には、かなりおすすめの映画。
人のマイナスの部分って見なくてもいいのだけれど、私は多分結構そういうものに敏感なんだと思う。だから、それぞれの人間の行動の理由がすごくよく分かる。でも、見たくないものをつきつけられたというのではなくて、そういう部分もあるけれど、でも、だからこそ人間なんだよねっていう、どこか認めてあげられる部分もあって、その微かな肯定感とのバランスが良かった。
......大学時代の友達というのは今はいなくなってしまっているのだけれど、もっと色々な人と話して、色々刺激を与えあえていたらもっと良かったのかもなぁ、なんてちょっと思ってしまった。相手が有名になったから言うっていうのではなくて、こういう感覚の人となら、話の合う部分もあっただろうになぁ、という惜しむような感じ。
ただまぁ、後悔するっていうより、これからはもっと出会いを大切にしていこうと改めて思った、ということかな。
案外人間って見えている部分だけでできているのではなくて、もっとみんなずっと奥が深いからね。

 

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