凪~小説・写真サイト~                    
  作品   レビュー   写真   日記   プロフィール
                     


凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ 感動 ”タグの付いているブログ記事

2009年6月 8日

「重力ピエロ」

重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2006-06
売り上げランキング : 88
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


伊坂さんの「重力ピエロ」が映画になり公開されているので、見に行ってきた。
映画を見るのは久しぶり。

映画化されて良い小説というのは、長編ではなくて短編だ、というのが私の持論。
今までに見てよかったのは「幻の光」(原作:宮本輝)と「ジョセと虎と魚たち」(原作:田辺聖子)くらいなので......。
短編小説の場合は、それだけを映像化しても足りないから、あとは監督の想像力で「膨らませる」作業になる。でも、長編の場合は、ほとんど「削る」作業だから。

でも、この映画は見て損はしなかった。
確かに「長編小説」を映画化したため、そぎ落とされた部分もあるけれど、その取捨選択が非常にいい。
さらに、小説にはなかった映像だからこそ効いてくるシーンの挿入もしっかりされていたし、ちょっとした間のとりかた、映像の空気感で、伊坂さんの描き出したかったであろう世界が、きちんと表現されている気がした。

小説では謎解きのほうに重きが置かれていた気がするが、映画では、謎解きの部分は最低限に抑え、あくまで「兄と弟と、家族の話」に焦点を絞っていた。
だから、繊細な映像とテーマが、すっと心に入ってきた感じ。

「兄」と「弟」を演じる役者も良かった。

ただ「映像にするのが不可能だと言われていた作品を映画化」みたいなキャッチフレーズをどこかで見た気がするけれど、伊坂さんの作品はそんな「映像化」が難しいように、私には思えないな。特に「重力ピエロ」は、今までなんて映画になっていなかったの、ってくらいに思う。「オーデュボンの祈り」を映画化する人がいたら、驚くけどね。

それにしても、この映画でも効果的に使われていたが、「はるが二階から落ちてきた」という冒頭の文章は、十年後には、「トンネルをぬけるとそこは雪国だった」くらい有名になって、教科書に載らないだろうか、などと思ったりする。

監督もすごいけれど、やっぱり伊坂さんはすごい!

「ラッシュライフ」もそろそろ公開されるけれど、どんなふうになっているのかな。

2008年11月20日

田村裕「ホームレス中学生」

「ホームレス中学生」を読んだ。

ホームレス中学生ホームレス中学生

ワニブックス 2007-08-31
売り上げランキング : 14966
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


予想以上に良かった。

プロでなくても誰でも1冊は傑作を書けるとはよく言うけれど、 まさにそんな1冊。
こなれた文章でないからこそ、伝わってくるものがあり、 純粋に楽しめた。

幸せって、どんな物をもっているか、ではなく、 単純に、幸せを感じられる心を持っているかどうかで決まるんだな。

ご飯は、おかずの添え物、効率よくおなかを満たしてくれるものと しか思っていなかった自分に気づく。
この本を読んでから、しっかりご飯を噛んで食べ、ご飯自体が甘い ってことをはじめて知ったりする。

自分は感謝すべきものにちゃんと感謝して生きているだろうか。
きちんと味わうべきものを、味わって生きているだろうか。

あとがきの
「僕はお湯に感動できる幸せのハードルの低い人生を愛しています」
という言葉が、心に残った。

「いい人」とか「清貧さ」とかを無理に作ることなく、お腹がすい たら人並みに不機嫌になったり、人にキレたりもしながら、でも、 基本的に、人に感謝を忘れず、たとえ平均以下の暮らしでも、そんなふうに卑屈になることなく、0ではないことに感謝して生きる......
そんな、ありのままの、等身大の姿に、いろいろ感じることができた。

こういう本こそ、小学生の夏休みの課題図書とかにいいんじゃないかと 思う。
いろいろ大切な心の力ってあるけれど、そのなかでも、感謝する心を 育てるって、子供時代は大切だろうな。
なんてことをいろいろ、思いました。

お母さんへの想いの部分とか、周りの人の温かさに触れるところとか、 結構泣けます。

有名人の書いた本でしょ、どうせ、と思わずに、是非! お勧め。

2007年8月16日

「フリーダム・ライターズ」

昨日はお休みだったので、映画を見てきました。
「フリーダム・ライター」というアメリカ映画。

フリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]フリーダム・ライターズ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2008-08-22
売り上げランキング : 4567
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


様々な人種の、不良っぽい生徒が集まるクラスを担当することになった女性教師が、彼らの人生を大きく変えていくというストーリー。
「フリーダム・ライターズ」というタイトルは「フリーダム・ライダー」という人種差別と戦った市民権運動の名前をもじったものなのだけれど、彼らは、差別や偏見、今おかれている自分の状況から自分を変えるために、立ち上がっていく。
そこで核をなすのが、「書く」という行為。
書くことを通して、彼らは自分を見つめ、そして自分のことを世に訴える。
アメリカ映画的なできすぎた感もちょっとはあったけれど、でも、やっぱり、こういう話は好き。
「教育」と「書く」という行為の可能性について、改めて深く感じられた良い映画でした。

2006年12月21日

「硫黄島からの手紙」

気になってはいたけれど、見にはいかないつもりだった映画ですが、知り合いが褒めていたので、気になって行ってしまいました。

硫黄島からの手紙 [DVD]硫黄島からの手紙 [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-08-05
売り上げランキング : 3126
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

感想は、
見て良かった!!

2時間半くらいあるちょっと長めの映画だったけれど、途中で飽きることもなく、とてもよく構成の立てられている作品だと感じた。
主人公は栗林中将という実在した人物で、彼はもうアメリカに戦争では勝てないと分かりながらも、「自決」という方法をとらず、とらせず、1日でも長く硫黄島で抗戦することが、日本や本土にいる家族を守ることになると信じて戦い続ける。栗林中将の役は渡辺謙。
渡辺謙も良かったし、この栗林中将という人自身も、とても立派で温かい人だったんだろうな、と感じられた。テレビでは実際に栗林中将の書いた手紙というのも紹介されていたし(映画の中でもいくつか出てくる)、本当に、こんな感じの人だったのだろうな。
人間、追いつめられたときに真価が問われる、ということを改めて思った。
私も、もっと、かっこよく、正しく生きたいなぁと思わせられた。

ただ、事前の情報では、「栗林中将の話」というふうにしか思っていなかったけれど、中将と同じかそれ以上多く、西郷という一兵士の視点から戦争が描かれている。その西郷がまた良かった。演じているのは嵐の二宮くん。でも彼は「青の炎」のときも思ったけれど、ジャニーズでバラエティーなどをさせているのがもったいないくらい、いい役者だと思う。キムタクや草なぎくんなんて目じゃないくらい!(草なぎくんも、上手いとは思うけれど)
でも役者がいいというだけではなくて、こういう思想、立場の人間を配置し、その視線で映画を撮っていったというところに、この映画の成功があったような気がする。
こういう人物を上手く配置できるようになれば、私の小説ももっと上手くいくんだろうけどなぁ......。

本当、見て損はないと思う。いろいろな意味で、日本的だなぁと思った。ただ、それを作ったのがクリント・イーストウッドだというのが、また、すごい。
映画の作り方とかよくは知らないのだけれど、「監督」の仕事ってどこまでやることなのだろう。アメリカ人が日本の役者を使って、日本語で映画を撮るということ自体、すごいことに思えるのだけれど、実際はどうやって回っているのだろう。気になる。
でも、こういう映画をアメリカ側が作ってくれたということに、日本人は感謝するべきだろうと思った。

2006年9月25日

「その日のまえに」重松清


その日のまえにその日のまえに
重松 清

文藝春秋 2005-08-05
売り上げランキング : 6557
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

久しぶりに重松清を読んだ。最近1週間に1冊読めるくらいのペースになってきて、なかなかいい感じ。ま、それだけ暇にしているということか......(^^;)

重松さんは、やっぱり上手い。短編をこれだけ正確にまとめあげる力を持つ作家って、あんまりいないのではないかという気がする。
この本には、人の「死」をテーマにする7つの短編が入っている。初めの方はそれぞれバラバラの完結した作品なのだけれど、最後の3つは「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」と同じ登場人物たちの続き物で、さらにそこには前半の4つの作品に出てきた他の登場人物たちがちょっと現れたりする。......という作りになっている。
はじめの2つは「死」といっても、ちょっと距離のある死を扱っていて、そこまで感情に訴えてくる感じではなく、ただ「緻密に計算されて組み立てられているなぁ」といううまさを感じる。でも、あとの方になるにつれて、どんどん「身近な人の死」になってきて、電車の中などでは目が潤んで読めない感じだった。

一番好きなのは表題作の「その日のまえに」。
「その日」「その日のあとで」もあってもいいのだけれど、「その日のまえ」で話を終わらせてしまっても完成度が高くて良かった気がする。
妻の死を宣告された夫婦が、結婚してすぐに住んでいた町を訪れ、その頃の貧しかったけれど実は幸せだった頃を振り返る、という話。
できすぎているとも思うのだけれど、重松さんの描き方は細部が上手くて、旨に迫ってくるんだよなぁ。
悲しい気持ちにはなるけれど、今自分のそばにあるささやかな幸せ、今自分の側にいる人の大切さを改めて考えることができるから、こういう作品はたまに読むのはいいな、と思う。
「当たり前」と思っていても、すべてのものには終わりはあるから、もっと一瞬一瞬を大切にしないといけない......という、まぁ、ありきたりなメッセージではあるのだけれど。

ただでも、重松さんの作品を読んでよく感じるのは、小説は技術だけじゃないんだな、ということ。
重松さんの作品はあまりにも緻密に組み立てられすぎてしまって、逆に感情移入を疎外している部分があるように時々思えてしまう。「上手い作家」とは想うけれど、「好きな作家」には入れない理由がそのあたりにある気がする。
そしてそういうところを突き詰めて考えていくと、そこまで上手いものは書けない自分の活路が見いだせそうな気がしたりはする(笑)

 

2006年9月 8日

東野圭吾「時生」


時生時生
東野 圭吾

講談社 2005-08-12
売り上げランキング : 25529
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2ヶ月ほど前に買ったと書いた小説。
ようやく今日、読み終わりました。一冊の本にこんなに時間がかかるのは随分久しぶり。いまだに少し、小説を読んでいると、もっと実用書を読んだり、勉強をしたりした方がいいのでは、なんて気持ちになってしまうし。でも、こうやってのんびり小説を読んだりできるのは、「自由」ってことなのかもなぁ。

東野さんの作品は、「容疑者Xの献身」に続き2冊目。作品全体の出来としては、「容疑者Xの献身」の方が完成度が高かった気がする。トリックや謎に最後にかなり驚くことができたし、「プロ」としての安定した筆力を感じた。
それに比べると「時生」の方は、ミステリーとしてはお粗末な部分も多かった気が。脇役のキャラがどこか他の作品から持ってきたような、ステレオタイプなものだったり、会話や立ち回りもところどころ陳腐に思えた。でも、もしかしたらそれは全部作者の計算なのかもしれない、とも思った。どこか作り物めいた世界を意図的に作っているのかもしれない。

そして、ミステリー以外の、テーマとか主要な人物の心の動き、人と人との関係という部分では、「時生」はとても良かった。「容疑者X」も感動する話だったけれど、それ以上に、かなり心に迫ってくるものがあった。テーマが、普遍的なものだからかもしれない。親子の関係、人を許すということ、自分の人生に自分で責任を持つということ......大事なテーマが説教くさくなりすぎることなく、さわやかな「トキオ」青年の口から語られるのが良かった。
この小説のなかの関係は、現実にはありえないものだけれど、現実でも、子供が親に支えられ、親から色々教わるのと同時に、親が子供に支えられ、子供に教えられることは必ずあるのだろうという気がした。東野さんが最後に一番言いたかったことがそういうことだったのかは分からないけれど。

とにかく、ちょっと悲しくはあるのだけれど、心が温かくなり、子供を持つのもいいな、と思わせてくれる作品だった。
そして、私が良いと思ったのはそういうテーマの部分だったけれど、それだからこそ、大切なテーマや大切なシーンを書くために、ミステリーなりエンターテイメント的な要素を入れることも大切なのかな、ということも考えさせられた。

2006年5月11日

「レント」


レント デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]レント デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2008-04-04
売り上げランキング : 1270
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

約1ヶ月ぶりに映画を見てきた。
そしてこの1ヶ月一冊も小説が読み切れていない。
やばいな(^^;)
でもさすがにテキストと過去問だけの生活では潤いがなさ過ぎて精神的に参ってきてしまったので、この頃は一日に1時間は執筆or小説読書の時間を作るようにしている。
それだけで気分が結構違う。
やっぱり私は小説が好きだ!と思う。
今は特に何の賞に出すとか決めていないけれど、100数十枚くらいを目指して書いている。ゆっくりのんびり、自分の書きたいものを書いていこうかな、と。でもそれが誰かの心に届き、その人の気持ちをちょっとでも軽くできたらいい。

「レント」はそんな感じの、どこか希望と温かさのある映画だった。
私はあまりミュージカルというものが得意ではないので、なんでここで歌うのだ?!とか思ってしまうところはやはりあったけれど、でも、これをシリアスに演じていたら、全然希望のない、つらい映画になってしまっていただろう。
内容はかなり希望がない感じなのに(主要な登場人物の半分ほどがHIVだなんて......)、音楽の力ってすごい、と心から思った。
あとは役者の存在感のパワー。
......と、小説ではどうにもならないところに魅力のあった映画でしたが、でも、何度も流れる音楽の歌詞は素直に心に響いてきた。
結局今しかない。後悔していたら大切な今を失ってしまう。
そんな感じの内容。
そうだなぁ、結局生きられるのは、過去でも未来でもなく、今現在。だったら今を最高に慈しみ、味わい尽くそうよ、って思った。
この映画のためばかりではなく、最近ちょっとそんなことを思う。

最近聞いて心に響いてきた言葉。

「あなたがくだらないと思っている今日は、
 昨日亡くなった人がなんとかして生きたかった
 なんとしてでも生きたかった
 今日なんです」

最近メルマガにもはまっている、「名言セラピー」の言葉。
なんかこの言葉とよく共鳴する映画でした。

2006年3月23日

「東京タワー」リリー・フランキー


東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

扶桑社 2005-06-28
売り上げランキング : 13293
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 予想以上に良かった。素晴らしい! この本がベストセラーになるなら、日本の出版業界はまだまだ大丈夫だという気がする。
 一言でいうと愛があふれていた。だから最後の方は、うるうるどころじゃなく、号泣した。途中までは電車の中などで読んでいたけれど、さすがに最後の方は家にこもって読んだ。
 これはただのリリーさんの母親の思い出ではなくて、こんなふうに生きた人がいるという確かな記録だと思った。大変なことはたくさんあっただろうし、リリーさんが、「子供の目から見ても小さな人生に見えた」と書いているように、すごいことを達成した人生ではなかったかもしれない。でも、子供のことだけ考えて生き、多くの人に慕われたというその人生は十分に語る価値のある、幸せなものだったのではないか、という気がした。

 ということで、文句なく良いものに対してそんなに多く語る言葉はない。ただ、まだ読んでいなかったら読んでみてください、というだけ。

 ただこの作品はやっぱりノンフィクションだから心に迫るのであって、これもきっと
誰でも人生に一作は名作を書くことができる」というその一冊ではあるのだろう、という気がする。こういうレベルの作品を何作も書くなんてできることじゃない。
 でも、内容=ソフト、文章の技術=ハードと2つのものから作品ができていると考えたとき、そのソフトは一生に一つというものだろうけれど、その良さが生きたのは、それまでに磨いてきたこの文章の力があったからこそだろうという気がした。さらりと読めるけれど、この文章のうまさはかなりすごいと思う。大部分はふざけたことをしているふざけた人間についておもしろおかしく書いているのだけれど、それがちゃんと読んでいてもおもしろいし、ところどころにはさまる洞察や描写はしっかりと心に刻まれる、存在感のある文章になっている。上手い文章って、決してまじめくさって文学的表現をちりばめたものではなくて、こういう文章のことだろうなという気がした。
 私はまだ「人生に一作は」の一作になりそうな経験を持っていない気がする。でも、作家がすべきことは、その「人生の一作」の鉱脈を捕まえたとき、それを最高の力で書ききれるように、それまで力を養っていくことなのかもしれない、と今回、思った。

 とにかくリリーさん、ありがとう。こんな作品を読ませてくれて、ありがとう。
 という気持ちだった。
 この本の中で、お母さんが入院したときに本を読んでいる場面がある。病気と治療の痛みと闘っているお母さんを支えた本は、柳美里の「命」とあいだみつおの本だった、と。あいだみつおは分かるけれど、柳美里は読んで元気になるのだ......とちょっとびっくり。でも、そういう状況の人にはそうなのかもしれない。
 その場面でリリーさんが書いている。自分にはそんなふうに今、母親を元気にできる本は書けていない。でも、そういう本を書いてくれた人に、ありがとうと言いたい、と。
 ものを書く人間にとって、そういう気持ちは大切なものなのだろうなと思い、印象に残った。

 

Top ・ Works ・ Photos ・ Diary ・ Profile