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凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ 心あたたまる ”タグの付いているブログ記事

2011年11月 6日

さだまさし「アントキノイノチ」

アントキノイノチ (幻冬舎文庫)アントキノイノチ (幻冬舎文庫)
さだ まさし

幻冬舎 2011-08-04
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さだまさしの小説は好きで、今まで出たもの全て読んでいる。
これも、とっても良かった!
大好きな「精霊流し」「解夏」に並ぶ傑作。

高校時代の友人がきっかけで心の病にかかり、徐々に回復している若い男性の話。
父親の紹介で始めた、亡くなった人の遺物整理の仕事の様子と、高校時代の友人との出来事が交互に繰り返される構成。
「命」というものを多角的に浮かび上がらせるその構成や、登場人物の配置、ストーリーなど秀逸。
ただ、それ以上に素晴らしいと思うのは、「これを書いた作者というのは、本当に心がきれいな、あったかい人なんだなぁ」ということが端々から感じられること。
ちょっとした表現とか台詞とか、物事の設定とかそれに対する感想に、書く人の価値観とか心は、否応なく入り込むものだなぁ、とこの作品を読んでいて思った。
こういう心の美しさは、「フィクション」だといったって、決して飾れない。
だからこそ、物語の根幹ではない、ちょっとした枝葉末節の言葉遣いとか登場人物が抱く感想に、心が震える。
自分ももっと、文章力ではなくて、人間力みたいなものを磨かなくてはなぁ、と思わされた作品だった。
少し心に痛みを感じるところもあるけれど、全体的に透き通った感じの作品で、最後はきちんと報われる、安心して読める作品なので、是非、多くの人に読んでもらいたいと思う。

2009年4月24日

森沢明夫「津軽百年食堂」

津軽百年食堂津軽百年食堂
森沢 明夫

小学館 2009-02-28
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「海を抱いたビー玉」以来の、森沢さんの小説(エッセイなどは、この1年で数冊出されていたはずですが)。

「読んだあと、1週間は心がほかほかです」と帯に書いてありますが、本当、森沢さんの本は善意に満ちていて、安心して読めます。

私は、単行本は基本的に外に持ち歩かず、夜にちょっとずつ読むだけのため、1冊読み終わるのに、非常に時間が掛かるのですが、夜寝る前のゆったりとリラックスする時間に、ちょっとずつ読み進めるのに、とてもいい本でした。

「ちょっとずつ読もうと思ったけれど、一気に読んでしまった」と言っている人も多いけれど、私は、じっくり、ゆっくり派、ということで。

以前、「THE 純文学」という感じの小説を書く先生に、小説を見てもらっていたことがあるのですが、その先生は「『一気に読めました』というのが、今は、褒め言葉になっているけれど、『一気に読める』というのが決していいとは思えない」と言われていました。
なんとなく、そんな言葉を思い出したりして。

一気に読まなかったため、たくさん張り巡らされているらしい伏線は、いまいち読みきれませんでしたが、「現代」っぽくない、心に余裕のある時間の流れや、人への思いやりなどが、青森という場所と、満開の桜に綺麗に彩られ、せわしなく生きる現代人の私にも、すっと入ってきました。

もともと、森沢さんのことは、ひすいさんの「名言セラピー」を通して知ったのですが、この本の中にも名言セラピー的要素が満載で、そこもまた、ちょっと嬉しくなったり。
初めの100ページ読むだけで、5つくらい名言セラピー的エピソードが見つかったり。
名言セラピーファンには、そういう楽しみ方もあるかも。

森沢さんは、作品も素敵だけれど、それ以上に、人柄が素晴らしいんですよね。こんなタイプの作家もいるのだ、と驚くくらい。
結局、その小説を心地よく読めるかどうかって、技術うんぬんの前に、作家の持っている魂に左右されるんじゃないか、なんて思ったり。
書き手が普段から人や物事のいいところを見ているのか、悪いところを見ているのか、によって、絶対、作品は180度変わってしまうと思うから。

森沢さんの本は、なんかちょっと心が疲れたときなどにお勧めかな。
ポジティブシンキングを強制するのではないのだけれど、プラスの見方をできるように、いつのまにか心が自然と、無理なく、矯正されている、みたいな。

まだ、小説の中で一番美しい桜は、三島由紀夫の「春の雪」の描写だと私は思っているけれど、そういう、どこかゆがんでいて、痛みがあって、切なくて、苦しくて......そんななかだからこそ感じられる刹那的な美しさ、だけではなく、もっとあったかくて、安心できて、まっすぐで、純粋で......だからこその美しさ、も、いいね。
なんて思える自分は、ちょっと成長してきているのかも、などと、ほくそ笑んでみたりして(笑)

2009年1月 5日

小川糸「食堂かたつむり」

小川糸「食堂かたつむり」を読みました。

食堂かたつむり食堂かたつむり
小川 糸

ポプラ社 2008-01
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三省堂などで平積みになっていて気になっていたのですが、ようやく読めました。

恋人に家具からなにから一式持ち去られ、声まで出なくなった女性が、唯一の親族である母親を頼って実家に帰り、そこで食堂を開く、という話。
母親に対しては憎しみのような複雑な感情を持っているのだけれど、その関係がどうなっていくか、というところに主なストーリーの流れはある。

ともかく食材や、調理の方法が丁寧に描写されていて、好感が持てた。
食べるというのは、命あるものを殺して、それを自分のエネルギーに返るということでもあるけれど、その少し残酷にも思える部分からも目をそらさず書ききっているのがいい。

個人的な感想としては、よしもとばななさんの初期の頃の作品にちょっと似ているかな、という気もする。
全体としてはまじめなテーマを丁寧に書いていっている感じなのだけれど、型にはまり過ぎない、やわらかさや遊びの部分、きれいにまとめすぎていない自由さがあっていい。

中盤から急激にストーリーが展開し、「え? そうなるの?」と、ちょっと作り物めいたものを感じてしまったりもしたけれど、楽しく、心地よく読める作品だったので、それもありかな。

もっと体にいいものを考えて、料理をして、自分の体に取り込みたいなぁ、と思いました。
料理が好き、と言えるひとって、幸せだよな~、などと、ぼそっと呟いてみたりして。

フォントも大きく、すらすら読めるし、全体的にやわらかく、あったかい作品なので、仕事が忙しかった週の週末などに、コタツに入ってゆっくり読むのが最適!
(あ、夏に読んでもいいけどね(笑))

2008年7月24日

乃南アサ「しゃぼん玉」

しゃぼん玉 (新潮文庫)しゃぼん玉 (新潮文庫)

新潮社 2008-01-29
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久しぶりの乃南さんの作品を読んだ。

乃南さんもミステリー作家と分類されるけれど、 伊坂さんとはまた全く違い、もっと、人の心とかテーマにまっすぐ正面から向き合っている作家、という気がする。

今回の作品は特に、「思いがけない展開」になるわけではないけれど、それでも、最後まで読ませ
てしまう力がある。
そして、あぁ、分かるな、と思う。

無差別殺人などが多いこの時代へのメッセージなのだろう。
人の心をとかすのは、人との出会いでしかない、と。

とても温かい気持ちになれた。
心が疲れた人にもお薦め。


ただ、もうちょっと心が元気な人には、乃南さんの心理描写の傑作中の傑作、「風紋」と「晩鐘」を
読んでもらいたい!
犯罪被害者の家族のその後を追っていったもので、特に「ミステリー」的な要素はなく、ただ淡々と、
その登場人物のその後を描いているのだけれど、これが本当に上手い!
なんで人の気持ちをここまで想像して描けるのだろう、と感動する。
強くお薦め!

2007年8月 2日

市川 拓司「そのときは彼によろしく」

大分前に読み始めたのですが、バタバタしていてようやく読み終わりました。

そのときは彼によろしく (小学館文庫)そのときは彼によろしく (小学館文庫)

小学館 2007-04-06
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これは最近、映画化された作品ですね。
市川さんの作品は「いま会いに行きます」が一番有名だと思いますが、どの作品にも、柔らかい雰囲気があって好きですね。「恋愛写真」も良かったです(これも同名の映画がありますが、市川さんの作品が映画化されたのではなく、映画を見た市川さんが刺激を受けて小説を書いた、ということのようです。中身はもう、まったく別物。私は絶対小説の方がいいと思います!)
登場人物(特に主人公)はいつも、ちょっとさえない、不器用な男の人で、恋愛経験もあまりないのだけれど、その分、愛した一人の人をぼくとつに想い続ける。その純真さが、今の小説・映画のなかではすごい新鮮に思えたりする。
みんな、不器用だけれど、誠実にまっすぐ生きていて、ほっとする世界。
大きな成功をつかむこととか、要領よく生きることとか、そういうのもいいけれど、「幸せ」ってもっと、身近に、当たり前のもののような顔をしてあるものなんじゃないの?みたいな問いかけを感じる。
あと、始まりは普通の日常をつづったストーリーのように見えるけれど、いつも少しずつ「異世界」が入り込んできて、最後の方はファンタジーっぽくなるのも市川さんの作品の特徴かも。
でも、出てくる人物がみんな、ちょっと空想好きな雰囲気の、内的世界を持っているような人たちだというのと、市川さんの文体が不思議な印象を与える比喩などを多用した、ユーモアのある、いい意味で地に足が着いていないようなふんわりしたものなので、違和感なくその世界を受け入れることができる。

まぁ、好き嫌いは分かれる作家かもしれないけれど、私は好きだな。
なんとなく「成功するぞ!」「セレブになるぞ!」みたいな世界に疲れたら、手に取ってみてください(笑)

2005年10月 5日

「トゥルーへの手紙」(写真展)

 ブルース・ウェバーの写真展に行ってきました。
 写真展と映画と今、同時公開しているみたいです。「トゥルー」というのはブルースの愛犬。愛する犬や愛する人に対する想いのいっぱいつまった写真展でした。


 ブルース・ウェバーという人のことを私はよく知らなかったのですが(昨日の新聞でたまたま見て、とても興味を持ち、さっそく行ってしまった)、写真を見ると、なんとなくどこかで見たことがあるという気がする。
 カルバン・クラインのアンダー・ウェアの写真で一躍メジャーになった人みたいですね。
 詳しくはオフィシャルサイトを見てください!

 と、ここまでは前書きで、ここから感想を書きますが、とっても良かったです。写真だけ見てここまで温かい気持ちになれたのは、初めてか、久しぶりか、どちらか。
 今回の写真展では犬関係の写真が4分の1、その他は8割方、男性の写真でした。カルバン・クラインのアンダー・ウェアの写真というのも、裸に近い男性モデルのものがほとんどだったのだろう(詳しくは知らなくてすみません)。
 男の人の体格のたくましさを効果的に撮ったものもあれば、もっとただ単純に無邪気でかわいらしい姿を撮ったものまであって、前者は美しく、後者はほほえましく、良かった。会場を入ってすぐのところに、今は超メジャーになっている、ブラッド・ピットやレオナルド・デカプリオなどの若い頃の写真もある。それが言われて初めて、「あぁ、ハリウッド・スターだったのだ」と気づくような、良い意味で等身大の写真で好感が持てた。デカプリオなんて特に、バカで無邪気な少年という感じ。なんかとても愛のある写真だなぁと感じられてしまった。

 そんな感じに、人に対しても犬に対しても、飾らない関係性と愛が満ち溢れている。本当の表現者というのは愛を伝えられる人なんだなぁなんて、こういう写真展を見たり、良い本を読むと思う。 特にこの写真展の会場の奥には、小さめの写真がたくさん並べられ、それに自ら落書きしたり、シールを貼ったりした「作品」がある。一枚一枚とても良い写真なのに、気取らずにそれに落書きできるユーモアはすごい。
 プロだから当たり前なんだとは思うけれど、写真は本当に上手い。プリントの仕上げ方とかも。なんて言うのだろう、とても優しい仕上がりになっている。それはフィルムのためなのか、印画紙のためなのか、それとももっと違う要素によってなのか。黒と白がはっきり出ているのだけれど、コントラストがとても柔らかい。
 こういうすごい技術と、その技術におごらず、技術ではない内面のなにかを伝えようとしているブルース・ウェバーの姿勢に頭が下がる思いだった。でもきっと、本人はただ楽しんで写真を撮っているのだろうな。そんなことも伝わってきて、ますます温かい気持ちになった。
 会場は狭く、写真の数もそこまで多くない。20分あれば見終わってしまうくらいの内容で1000円は相場より高い気がする。でも心から、いいものを見られたなぁ~という気持ちになった。

 お近くの人は是非足を運んでみてください(表参道から徒歩1分)。10月30日まで。

2005年10月 4日

西加奈子「さくら」


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小学館 2007-12-04
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少し前に話題になった本。「さくら」というのは犬の名前だということだけ知っていたから、犬が中心になった話だと思ったけれど、それ以上に「家族」の話だった。
 兄と僕と妹、三人が子供の頃から成長していく過程が書かれている。......なんていうと、そんなに面白い本に思えないかもしれないけれど、この本は、かなり良い!
 家族の温かさとか、愛が伝わってくる。というより、しみ込んでくる。

 最近、こういう温かい愛の話(それも、恋愛小説というより、家族小説みたいの)に弱いなぁ。それだけ年取って来たってことか(^^;)

「さくら」もこのあいだ読んだ「今、会いにゆきます」と同じように、いや、それ以上に、長編のわりには大してドラマチックなことが起こるわけでもなく(まぁ、ないことはないけれど、もちろん)、全体的にゆったりと「日常」が描写されている小説だ。それでもこれだけ飽きさせずに読ませる、それが才能だよなと思う。以前は結構売れている小説を読んでは批判していたけれど、最近は素直に、いいものは売れているよなぁ、とか、やっぱり感性とか才能っていうものは存在するんだなと感じる。
 この「さくら」の作者も、相当才能のある人だ。ちょっとマンガっぽく大げさな感じに作られた「キャラクター」は感じてしまうけれど、でも、あぁ分かる分かるという範囲のことを書きながらも、しっかりと読者をひっぱっていく。視点と文章の書き方が上手いのかな。
 私はミステリーなどは書きたいと思わないけれど、こういう「さくら」とか「いま、会い」とか瀬尾まいこさんの作品とか、そのあたりのあたたかく愛に満ちたエンターテイメントを書けるようになりたいな、と切に思う。この頃。

 この小説は、前半はとても明るく、ただもう幸せというのはこういうものだということを照れずに書き表している感じ。後半はちょっとつらくなる部分もあるけれど、読後感も悪くない(まぁ、あまりストーリーが分かってしまうことは書きたくないので書かないけれど)。380ページある割に、結構すらすら読める。
 心温まるものを読みたいなと思っている、心がひねくれていない方にはおすすめの一作です。

2005年9月18日

市川拓司「いま、会いにゆきます」


いま、会いにゆきますいま、会いにゆきます

小学館 2003-03
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今更なんだけど、でも、すごく良かった!
 やはり市川さんは才能にあふれた人だなぁ。
 この本って、同時期にブレイクしたというだけで、「世界の中心で愛をさけぶ」と並び評されてしまうことが多い気がするけれど、ぜっったい違う。
 市川さんの方が何十倍も上の気がするなぁ。

 私は市川さんの本は「恋愛写真」に続いてまだ二作目だけれど、確かなワールドを持っていて、とても惹かれる。
 それはテーマやストーリー、発想だけではなくて、文体とか細かなジョークとか、細部に渡る。なにをとっても、市川ワールドとしか言えない。同じストーリーやテーマで作品を書いても、普通の人には絶対ここまで書きこなせない。そういう、ものすごい、羨ましいほどの力を感じる。


 この小説はまぁちまたでもよく言われていたように「愛」の話。ただもう、それに終始する。でも(また比べちゃうけど)、「セカチュウ」の「愛」とは次元が違う。「セカチュウ」の場合は、まぁこういう状況なら誰でもこれくらい激しく恋する気持ちになるよなぁ~って納得できちゃう感じなのだけれど、「いま、会い」の方は、ある意味で「すごいなぁ、こういうのこそが本当の愛っていうもんなんだなぁ~」と感心させられる感じ。
 こういうかなり頼りなくて、気の利いたところにも旅行にも一生つれていってくれないような男の人を愛しきり、その人を幸せにするために自分には何ができるのかを精一杯考える......澪さんはすごいな。でも、その愛をしっかりと受け止め、同じように彼女を幸せにできているか常に不安を感じながらも真っ直ぐで一生懸命な「たっくん」も素敵だ。
 別になんの説教臭いところもないのだけれど、自分自身のことを振り返って深く反省させられるような、本当に純な美しさに満ちたお話しでした。
 市川さん自身、妊娠して仕事を辞めて暇になった奥さん(小説などあまり読まない人らしい)にも楽しんで読めるようなものを書きたいと思って作品を書き始めたと、インタビューで言っていた。
 きっと本当にこの小説の登場人物のような愛に満ちた人なのかもしれないなぁ、なんて温かい思いになる。
 う~ん......私ももっと愛に満ちた人間になりたいですっ。

2005年9月11日

野中柊「ひな菊とペパーミント」


ひな菊とペパーミントひな菊とペパーミント

講談社 2005-06-21
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久しぶりに柊さんの小説を読んだ。私は柊さんの本の中では「テレフォン・セラピー」というエッセイが好きなのだけれど、そのエッセイの柔らかい空気をそのまま物語にしたみたいな、心地よく善意に満ちた話で良かった。
あまり作品と作家の人生を関係づけてみない方がいいのかもしれないけれど、「テレフォン・セラピー」の前に柊さんは離婚したところだったみたいで、エッセイの中には、世の中にはどうやっても上手くいかないこともあるけれど、それでもなるようになるのだから、力を抜いて頑張りすぎずに生きていこうというメッセージが詰まっていた。この小説も、そんな優しい雰囲気。
結構若い頃に書いたらしい「草原の輝き」という小説も好きなのだけれど、あの作品にはもっと研ぎ澄まされた感性があった分、読む側もちょっと痛かった。悪意があるというのではないのだけれど、人が人を傷つけてしまう不可抗力みたいな物を感じて。
それよりは今回の小説の方が安心して心地よく読めるかな。
離婚とか分かりやすい形ではなくても、誰でもきっと大人になる過程や、大人になってから、様々なつらいことを経験する。そのなかでたくましさと同時に得られる優しさみたいなものを、30~40歳くらいの女性の作家からよく感じる。
ばななさんとか、瀬尾まいこさんとかと、似た雰囲気。まぁちょっとおおざっぱすぎるまとめ方かもしれないけれど。
この小説の主人公は中学1年生なのだけれど、それくらいの子供の視点で温かい作品を書くには、作家は主人公の倍以上の年齢になっていないとダメなのかも知れない、そんなことをちょっと思った。
私も時々小説仲間に、20歳前後で書いた作品の痛いほどの世界観が良かったとか言われるけれど、そういうのって正直、今はもう書けない。でもあの頃には持てなかった何かを今は手にしているという気がする。
20代でデビューして今、30代、40代で活躍している作家の姿はそういう意味で、自分の指針になってくれそうな気がする。
と......自分のことに話がずれてしまったけれど、優しく柔らかい雰囲気で、軽く読めて心があたたかくなるおすすめの作品です! 是非!

2005年8月 4日

「皇帝ペンギン」


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ジェネオン エンタテインメント 2005-12-16
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気になっていた映画、見てきました。
夏に上映して正解。冬じゃ、凍え死にそうな気分になっちゃう......って感じの映画でした(笑)
とにかく白い氷と雪に覆われた世界と、数え切れないペンギンだけの出てくる映画。
でも退屈はしない。

ペンギンが人間と同じ思考を持っているはずはないのだけれど、一生懸命に歩いたり、寒さを乗り越えようとしているペンギンを励ます気持ちになったり、苦労して育てた子供を寒さや飢えでなくしたペンギンに悲しみを覚えたり、結構「ペンギン」とはいえども共感できるように作られていて、飽きなかった。
実は「ディープ・ブルー」のときは綺麗ですごいなぁと思いながらも3分の1くらいは眠りの世界にいたので、それと並び評される「皇帝ペンギン」もちょっと心配だったのだけれど、杞憂に終わりました。

この映画を見て、もちろん、生命の尊さや力強さは感じた。自然の美しさや厳しさも。ただ一番感じたのは、「ペンギンって大変なんだな~。ペンギンじゃなくて良かったな」という子供みたいな感想......(^^;)
あと次に感じたのは、「結局動物が生きるのは、子孫を残すというそれだけのためなんだな~」ということ。
卵をあたためるために、凍りつきそうになりながらも4ヶ月何も食べずに立ちつくしているオス。孵った雛に餌を与えるために、氷の道を20日間かけて歩いてもどるメス。もしペンギンに人間のような思考能力があったら、「俺って何のために生きているんだろう。こんな人生つまらない」と身を投げてしまいそうなのに、当たり前だけれどペンギンはそんなことはしない。......当たり前なんだけれど、なんかそれってすごいなと思い、自我のある人間が幸せなような、でも実は考えすぎるがためにとても不幸のような、複雑な気持ちを抱いた。

あと私が見たのは日本語吹き替え版だったのだけれど、お父さん→大沢たかお、お母さん→石田ひかり、子供→神木隆之介と、声がなかなか素敵だった。普段映画館で吹き替え版をみることは滅多にないけれど、どうせペンギンがしゃべっているわけじゃないので、「口の動きとあっていない」と思うでもないし、結構吹き替え版、良かったかも。
日本語で話されるとより一層ペンギンに親近感が湧く。神木くん、声だけでもかわいい~。

過酷な状況で命を奪われるシーンや、悲しい場面も結構あったけれど、それでも心は温まる映画だった。機会があったらもう一回見てもいいというくらい。基本的にペンギンが好きなので。どうやら私はペンギンに似ているらしいし......。
ということで、おすすめの映画です!

 

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