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凪~小説・写真サイト~ 小説・映画などのレビューで“ さわやか ”タグの付いているブログ記事

2009年10月24日

東野圭吾「宿命」


宿命 (講談社文庫)宿命 (講談社文庫)

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結構初期の頃の作品だと思うけれど、はじめからこの人は本当に上手かったのだな、と改めて感じさせられる作品だった。

非常に楽しんで読めた。

小学校の頃から"ライバル"だったふたり。そのうち一人は警察官になり、もう一人はある事件の関係者になる。警察官になった主人公は、元ライバルを疑い、追い詰めていくが、結末では思いがけない二人の"宿命"が明かされる。

文庫本のラストで東野さんのインタビューでのコメントが紹介されていた。

「初期作品のような、殺人事件があって、トリックがあって、犯人はこの人、というような意外性だけの作品では物足りなくなってきました。これならいくつ書いても同じだと思うんですね。まだ試行錯誤の段階ですが、ミステリーではないといわれてもいいから、そいういう作品は避けて通りたいと思っています」

この言葉は、重い。

少し前に東野さんの「探偵の掟」を紹介したけれど、東野さんが、はじめはトリックを命にした「本格推理」を書いていたけれど、次第に「もっと広い意味でのミステリー」を模索し始めたことが、よく分かる。

でも、ピカソやダリは、奇想天外な絵を描きながらも、その基本には誰にも負けないほどの基礎的なデッサン力があった。

ミステリー作家にも、「本格推理」を書く力というのが"基礎力"として必要なのかもしれない、などということも思った。

でも、東野さんの作品を読むと、ミステリーというジャンルの幅広さとか可能性を感じられるのはいいな。
私も書くとしたらあくまで"広義のミステリー"を書きたい。

誰が殺したのか考えるのでも、人を殺して自分が疑われないためのトリックを必死に考える、というのではなく、もっと、「なぜこんなことが起こったのか?」「事件を起こした本人は、どんな気持ちで、どんな必要性にかられてそんな行動に走ったのか?」などを追っていく"ミステリー"がいい。

しかもできれば、その行為に走ったのは、利己的な理由ではなく、"誰かのためだった"という、心温まるラストにつなげられたらいい。

今はそんなことを思いながら、ミステリーを分析しつつ読み、自分の小説の可能性を広げるべく、"広義のミステリー"を書いています。

2008年5月 7日

森絵都「DIVE」


DIVE!!〈上〉 (角川文庫)DIVE!!〈上〉 (角川文庫)

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森絵都さんは一昨年直木賞を獲って話題になった人ですが、児童文学出身だけあって、爽やかで毒のない作品を書かれる方だなと思います。
この「DIVE」も、小学生に国語を教えていたときに教材になっていたので、一部分だけ読んで気になっていたのですが、今回映画化されるということで、本屋でも目立つ位置に飾られるようになり、思わず買ってしまいました。
ひねくれた大人が読むと、そんなに上手いこといく? と思ってしまうところもありますが、なかなか上手いことばかりいかない世の中に生きていると、こういうストレートで純粋な物語というのも、オアシス的存在になり、いい感じです。
一言でいうと、プールの「飛び込み」の種目でトップを目指し切磋琢磨する少年たちの物語。
ただ、伊坂さんの本を読んでいても思うのだけれど、結局、引きつけられてしまう小説というのは、味のあるキャラクターが何人かいるんだよなぁ。
「DIVE」も、主要な男の子が3人で繰り広げる物語ですが、それぞれに個性豊かで、応援したくなります。
これをジャニーズかなにかの美男子が演じたら、それはもう、感情移入もするってもんです(笑)

2006年12月20日

恩田陸「夜のピクニック」


夜のピクニック夜のピクニック
恩田 陸

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恩田さんの作品は正直あまり好みではないのだけれど、マイミクさんに「現実の力を感じる」と勧められ、読んでみた(もちろん、実話ではないけれど、この行事自体が実際にあるということ)。
確かに以前読んだ「ネバーランド」より作品の中に入り込めた。多分私が恩田さんの作品を苦手なのは、漫画っぽい(と言ったら、漫画に失礼かもしれないけれど)作られた感じが全体に漂っているからだと思うけれど、それが「夜のピクニック」という行事の「リアリティ」によって薄められているのは確かだった。
ところどころに、「こんな人いる?」という「作りました」という感じのキャラクターも出てきたりはするのだけれど、主要な男子2人、女子2人には好感を持てた。ただひたすら歩くというのは、そんな大きく景色が変わることもないだろうし、朝・昼・夜の違いとか、体の疲れ具合くらいしか書くことがなさそうなのに、それでもこれだけの長さを書き切れてしまうというのはやっぱり力なのだろう。
正直、もっとそぎ落とせる部分はたくさんあるのでは、とも思ったけれど、この「ただひたすら歩く」というこの行事の雰囲気を出すにはこういう描き方はありだとも思う。
もし恩田さんがそういうすべてのことを計算してやっているのだったら、それはすごい。
私の小説仲間にはこういう作品を好きな人はあまりいなさそうだけれど、若い子とか、軽く読めてさわやかな気持ちになれる本が読みたい、という人にはお勧め。
小説の内容に直接は関係ないけれど、表紙の絵は好きだな。こういうシルエットの絵がたまにページの片隅に載っているのも良かった。

2006年10月26日

「涙そうそう」


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なかなか良かった。ただまぁ、広い意味での娯楽映画で、芸術作品という感じではないなぁ。沖縄の風景は生きていたけれどね。
妻夫木君はいつも通り、安心してみられる演技だった。そして妹役の長澤まさみが想像していたより良かった。結構好きかも。妻夫木君は、微妙に高校生くらいのまだかわいかった頃の弟に似ている。そんなこんなで、私もしばらく会っていない、兄弟のことなど思い出したりしました(笑)
ストーリーは基本的に淡々と進んでいき、その日常の中で兄弟それぞれが何を思い、どう考え、どんな選択をしていくのかがしっかりと書かれていて、好感が持てた。波瀾万丈なストーリーがなくても飽きずに見せられる映画なり本なりはいい。もっと、「非日常」的な出来事を思い切って削っていってしまっても良かったかも、というくらい、描写や細部にきちんとリアリティがあった。
見ていない人には伝わらないと思うけれど、祭りのところで二人が言い合うシーンが泣けた。二人ともの気持ちが伝わってきた。自分のことを考えての言い争いではなくて、相手を思うがための言い争いって美しい。
ラストは全然知らず、予想せずに見ていたので、かなり唐突な展開に驚いてしまったけれど、「涙そうそう」の曲を考えれば、当然の結末ではあるのかな。でももうちょっと、最後の方を丁寧に描いてほしかったなというのが正直な感想。ちょっとあっけなさすぎて、感情がさめてしまった。
でも、全体的に良くできた作品だと思う。人を大切に思う気持ちって何だろう、というようなことを考えたい、純粋な心(時期、気分)の人におすすめです。

 

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